世界で最も売れているソプラノ歌手 サラ・ブライトマンが、クリスマス・コンサートを日本で開催するため来日した。
サラ・ブライトマンは、イギリス出身のソプラノ歌手、女優。「オペラ座の怪人」他、数々の大ヒット・ミュージカルでの主役を経て、ソロ・アーティストとしてデビュー。1996年にはアンドレア・ボチェッリとのデュエットによる名曲「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」が世界中で大ヒットを記録した。
【動画】Andrea Bocelli, Sarah Brightman – Time To Say Goodbye (HD)
彼女は、クラシックとポップスを融合させた”クラシカル・クロスオーヴァー”を開拓し、その女王の座に。CD及びDVDの総セールスは3,000万枚を超え、全米ビルボードにおけるダンス・チャートとクラシック・チャートで同時に1位に輝いた唯一の歌手でもある。
そんなサラ・ブライトマンがクリスマス・ツアー「クリスマス・シンフォニー」の日本初公演のため来日を果たした。今回tvgrooveはサラに単独インタビューを実施。日本への深い愛、日本人アーティストYOSHIKIとの友情、最新アルバム「HYMN」、今回のツアーのコンセプトなどたっぷりと語ってもらった。
ついにハリウッド殿堂入り!セレモニーにはファンも招待
ーーハリウッドの殿堂入り「ウォーク・オブ・フェイム」にサラさんの星が設置されました。おめでとうございます!セレモニーはいかがでしたか?
とてもすばらしい出来事だったわ!イギリス人としてあのようなアメリカらしい栄誉(星)をもらったひとはそんなに多くないと思うけど、その一人になれて本当に光栄です。家族や友人も集まってくれてセレモニーの日はとても楽しい日でした。私の多くの家族や友人たちが集まってお祝いして、後世に残すことができるなんてね。
セレモニーでは多くのファンたちも招待したの!ファンによるコンテストもおこないました。当選したファンのみなさんを特別なテントに招いてセレモニーを鑑賞してもらったの。本当にすばらしい日でした。いわばその日は、ハリウッドでの“私の日”でしたね。
【動画】Sarah Brightman Live Walk of Fame Ceremony
日本での久しぶりのパフォーマンスは「幸せで光栄」
ーー久しぶりに日本に来日されていかがですか?
私にとって日本は大切な国で、長い間日本にきているから、私にとって今ではとても身近な存在となっています。日本で演奏できることは、ある種の安堵感もあります。他の国々と同じように日本もまだ完全にはパンデミック前のようには戻っていないけれど、私の音楽が好きで、またコンサートに来たいと思ってくれる人たちが、みんなでパフォーマンスを楽しめることはうれしいことですし、私にとってもとても楽しいことです。だから日本に戻ってこれて本当に幸せで光栄です。
ーーパンデミック時はどのように過ごされていたのでしょうか?
実際、興味深いものでした。国によってとても状況が異なっていましたからね。私は幸いバハマに入国することができて、そこからアメリカに入国する許可を得ることができました。それで普段と同じようにいろんなことをすることができました。私のパートナーもアメリカ人だったから、よかったわ。そしてまだロックダウンしていなかった時期にフランスにも行くことができました。ちょうど私のアルバムがヒットしていたから、たくさんテレビ出演もしました。フランスには小さな家もあるんです。
そして、今年の初めには日本にも来ることができました。パンデミック以降では比較的早い時期に来日したアーティストの一人だったと思います。テレビ番組にも出演して、YOSHIKIとも少し仕事をしました。
そして他の国が全部ロックダウンされてイギリスから出られなくなった時期には、歌のコーチと新しいレパートリーをたくさん学び、声のトレーニングをたくさんしました。だからロックダウンの時期でもパフォーマーとして最大限にその時間を活用したから、制限されてしまうことはありませんでした。
【動画】Sarah Brightman – ‘Fly to Paradise’ from Sarah Brightman HYMN IN CONCERT
大反響を受けて「クリスマス・シンフォニー」ツアーが実現
ーー今回、クリスマス・ツアー「クリスマス・シンフォニー」の日本初公演のため来日を果たしました。このツアーはいったいどのようなものか教えていただけますか?
ご存知のように、クリスマスは欧米ではとても伝統的な時期です。興味深いことに、この時期は世界中でも多くの宗教的な祝日がたくさんたくさんありますね。なので誰にとっても大切な時期です。パンデミックが始まった当初、私はストリーミング配信でショーをやりたいと思ったのがキッカケでした。それがたまたまクリスマスの季節だったので、初めてだけどクリスマスのショーをやってみようと思いました。そこからミュージシャンや合唱団など、いろいろな人たちを集めてショーを作りました。もちろん当時はいろいろな規制があって難しいことも多かったです。時間もたくさん費やしましたね。
そしてついに準備が整い、世界中の人に向けてストリーミングでライブ中継をしたところ、すばらしい反響をいただきました。そして1年後、じゃあアメリカでやってみようと思いました。やっと人々が劇場に戻り始めたタイミングだったのですが、そこでもすばらしい反響をもらえました。
【動画】Sarah Brightman: “I Believe in Father Christmas” from ‘Sarah Brightman: A Christmas Symphony’
日本ではキリスト教の伝統が広くあるわけではないけれど、誰もがクリスマスを知っていますよね。もしこのショーができたらとてもステキなことだと思いました。一年のうちでとてもステキな時期だから、それを日本に持ってこようと。こうしてクリスマス・ツアー「クリスマス・シンフォニー」が始まりました。
このツアーでは、私のたくさんのヒット曲をクリスマス風にアレンジしてみました。クリスマスを感じてもらうことができると思います。宗教的なクラシックな曲もあるし、聖歌隊の曲もたくさんあります。クリスマスの要素がいくつもあって楽しいものとなっているんです。古い曲から現代的な曲まで、私のヒット曲をたくさん披露しますし、ステージの見た目もとても美しいんですよ。クリスマスにふさわしい華やかなステージになっています。
【動画】Sarah Brightman: “A Christmas Symphony” Tour
YOSHIKIとの長年にわたる友情
ーーこのツアーでは、日本人アーティストのYOSHIKIさんが参加し、ピアノを披露しています。YOSHIKIさんと共にツアーを行ってみていかがですか?
じつはほんの数週間前、アメリカで開催した「ア・スターライト・シンフォニー・ツアー」という短いツアーにも彼が参加してくれたんです。ラスベガスやメキシコに行きました。彼はおもしろい人で一緒にいて楽しいです。もう何年ものつきあいになります。もちろん、彼は私の日本でのコンサートに参加してくれるんですよ。とてもステキなことですね。
この投稿をInstagramで見る
ーーYOSHIKIさんは、2018年にリリースした最新アルバム「HYMN」の「ミラクル」にも参加されています。この楽曲でのYOSHIKIさんとの共演はいかがでしたか?
彼がこの曲を書いてくれました。とても楽しかったです。でも実際、最初は私にとって難しい曲でもありました。曲に現代的な要素が含まれていて、クラシック歌手にとってはかなりチャレンジングな曲なんです。でも一度、自分の意識と声をそこに適応させたら大丈夫になりました。そして、声の響きに、より現代的なひねりを加えることができました。この曲は本当に興味深い曲で、世界中でよく歌っています。
【動画】Sarah Brightman – Miracle (Sarah’s Version) ft. Yoshiki
自身がその時に感じる想いがアルバムのコンセプトになる
ーー最新アルバム「HYMN」はサラさんにとって5年ぶりとなるアルバムですね。このアルバムのコンセプトを教えてください。
このアルバムは、宇宙飛行計画(注釈:国際宇宙ステーションでコンサートの開催が予定されるもその後中止になった)から生まれたものなんです。宇宙飛行計画に携わることはあまりにも異質なことで、孤独を感じていました。そこで多くの合唱団を使い、他の人たちと協力するような作品を作ろうと思いました。たくさんの歌い手、異なるたくさんのシンガーを集めました。というのも賛美歌(HYMN)というのは、人々が集まってよろこびや敬虔(けいけん)など何かを伝えたいときに集まるものだから。それがこのアルバムのコンセプトなんです。私はアルバムのテーマをそのとき自分がどう感じているかで決めることが多いの。今回のアルバムにはそういった精神が反映されていると思います。
【動画】Sarah Brightman – ‘HYMN,’ from Sarah Brightman HYMN IN CONCERT
名曲「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」の再録音は不安だった!?
ーー「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」のセルフカバーもすばらしかったです。年月が経って再びセルフカバーをしてみていかがでしたか?
最初は不安でした。というのも、とてもよくできている曲をあまりいじりたくはないですからね。でも今回、この曲はピアノだけではじまり、あとからオーケストラが入ってくる構成にしたのですが、すごくエモーショナルな仕上がりになりました。とても親密な曲になったんです。もともと「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」はとても壮大な曲なんですが、ピアノと一緒に演奏することで、より感情的な曲にできました。だからうまくいったと思います。
【音源】「Time To Say Goodbye」(アルバム「HYMN」より)
美声を保つヒケツを伝授
ーーサラさんといえば、3オクターブの圧巻の歌声で有名ですが、長年その美しい歌声を維持し続けるヒケツを教えていただけますか?
私はトレーニングが大事だと思います。アスリートと同じように、私は常に自分の声のトレーニングをしているんです。でもハードなことをしているわけではなく、美しさと質を維持するためのものなんです。3オクターブの音域だろうが、1オクターブだろうが、それは関係ないの。声帯の違いからくる音質やソウルを理解し、それをつねに別の耳で確認しながら作業することが、つねに前進するためのヒケツね。声帯はとても若い状態を保つことができるけど、その若さを維持するにも、声帯は常に変化している。人間はつねに肉体的に変化しているものだから、声帯も調整しなければならないんです。
ーー私はサラさんのクラシックとポップスを融合した独自のスタイルがとても好きなんですが、日本では若い世代でクラシックを聴く人口が少なくなってきています。若い世代にクラシックの魅力を伝えていくにはどうしたらいいと思いますか?
クラシック音楽は基礎となるもので、そしてつねに思い出されるもの。なぜなら、クラシック音楽、とくにオペラは歴史や、地理的な要素などたくさんのものが含まれているんです。多くの人々は、ハイライトや、歌、記憶に残っている部分を求めている。ヘンデルやモーツァルト、さらにその前の中世の作品に至るまで、オペラの曲は現代にも残っていて、人々はそれを楽しみ、またそれを元に作曲しています。
現代の曲の多くもその流れを継承しています。ビートルズが最初にそれをおこない、そしてそこから発展してきているんです。彼らが形成したものはとても重要で、様々な形で時の試練を乗り越えてきたということなんです。だから若い世代の人々は、自分では気づいていないかもしれないけど、元を辿れば、古いクラシック音楽を聴いていると思うの。それは私たちの音楽の中に自然に存在しているものだからです。
もちろんそれは変わっていくかもしれない。でも伝統的なものはこれからもずっと続いていくでしょう。なぜならそれはステキな物語で、人々は衣装を楽しみ、オペラハウスに足を運ぶから。音楽の基本というのは一般的にクラシック音楽までさかのぼることができて、これからもずっとそこにあり続けます。
日本への深い愛
ーーサラさんと日本は、長年すばらしい絆を築いていると思います。2009年に放映されたNHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』の主題歌「Stand Alone」(久石譲作曲)も歌い、『となりのトトロ』の「風の通り道」を日本語で披露。1991年と2018年に紅白歌合戦に出演。2016年には日本限定のアルバム「Gala – The Collection」をリリースしています。サラさんにとって日本はどのような思い入れがありますか?
日本にはすぐに親しみを感じました。日本のすべてにね。私が初めて滞在したのは京都だったと思いますが、香り、食べ物、もうすべてがずっと前から知っているような感じがしました。日本に対してはいつもこの特別なつながりを持っていて、それはとても感情的なつながりでもあるんです。日本でパフォーマンスをするようになると、お客さんがやってきてくれるようになりました。私がやっていることはとても西洋的ではありますが、みなさん、とても楽しんでくれるんです。
また、私が日本で好きな部分は、細部へのこだわりです。私はそういったこだわりこそが何かを美しくしたり、おもしろいものを創造する源だと思います。私はそんなこだわりがある日本が大好きです。シンプルな中にある複雑さ、複雑な中にあるシンプルさというものかしら。
【音源】「Stand Alone」 (Vocalise)
【音源】「Kaze No Torimichi」
【音源】2002年、テレビ朝日サッカー日本代表テーマ曲として、2006年にトヨタ自動「MARK-X」CM曲として使用された楽曲「A Question Of Honor」 (Radio Edit)
ーーまたサラさんは、日本のお隣の国韓国で、12月3日にソウル・カンソ(江西)区KBSアリーナで開催する来韓公演「サラ・ブライトマン・クリスマスシンフォニー」で韓国のイテウォン(梨泰院)事故の追慕の気持ちを込めた歌を歌うそうですね。追悼ソングを捧げようと思った経緯を教えていただけますか?
あれはとても心が痛む出来事でした。何よりも腹立たしかったのは、それがハロウィンという楽しい機会で起きてしまったということです。コロナが明けて人々がようやく集まり、このような場に出てきていたのに、あのようなことになってしまった。それがとても悲しいの。楽しいはずの場所で、人々が命を失い、ケガを負いました。こういうことはよくあることで、誰も悪くないと思います。ただでさえコロナ禍でたいへんな思いをしている人が多い中で、あのような事故が起きてしまったことはとても悲しいことでした。日本が津波の被害にあったときも悲しかったです。
そのようなことが起きると、いつも本当に動揺します。だから、何かできること、思い出すこと、敬意を払うことは、とても大切なことだと思うんです。
ーーたくさんお答えいただきありがとうございました。最後に日本のファンへメッセージをお願いします。
こうしてまた日本に戻って来られて、そして「クリスマス・シンフォニー」ツアーを観たい人のために演奏できることをとてもうれしく、光栄に思っています!みなさんを愛していますし、またご一緒できることをうれしく思っています。ステキなコンサートなので、ぜひ楽しんでください。ありがとうございました。
(インタビュー終わり)
商品情報
サラ・ブライトマン / クリスマス・シンフォニー
SARAH BRIGHTMAN
A CHRISTMAS SYMPHONY
[Blu-ray版]
価格:5,500円 (税込)
商品番号:UIXY-15049
[DVD版]
価格:4,400円 (税込)
商品番号:UIBY-15136
商品購入はこちら
https://store.universal-music.co.jp/artist/sarah-brightman/
【収録曲】 ※Blu-ray、DVDは同一内容です
1.くるみ割り人形(序曲) Nutcracker (overture)
2.アヴェ・マリア Ave Maria
3.きよしこの夜 Silent Night
4.ウォーキング・イン・ジ・エアー(アレッド・ジョーンズ&レオ・ジェミソン)
5.ピエ・イエス(サラ&レオ・ジェミソン) Pie Jesu (Sarah and Leo Jemison)
6.アライヴァル Arrival
7.コールダー・ザン・ウィンター Colder Than Winter
8.クリスマス・ドリーム(サラ with アンドリュー・ロイド・ウェバー) Christmas Dream (Sarah with Andrew Lloyd Webber)
9.コヴェントリー・キャロル(クワイア・グレゴリアン) Coventry Carol (Choir Gregorian)
10.ヒム(サラ with クワイア・グレゴリアン) Hymn (Sarah with Choir Gregorian)
11.アイ・ビリーヴ・イン・ファーザー・クリスマス I Believe In Father Christmas
12.くるみ割り人形(ミニチュア・インタールード) Nutcracker (miniature interlude)
13.アメイジング・グレイス Amazing Grace
14.ハッピー・クリスマス(戦争は終った) Happy Xmas (War Is Over)
15.アイ・ウィッシュ・イット・クッド・ビー・クリスマス・エヴリデイ(インストゥルメンタル) I Wish It Could Be Christmas Every Day (instrumental)
EXTRAS:
■ ギャラリー Gallery
■ ビハインド・ザ・シーンズ Behind the Scenes