現在カタールで開催され、世界中の人々を熱狂させている「2022 FIFAワールドカップ」。出場国のイランは、抗議活動の一部としてこれまで国歌を歌うことを拒否していたが、今回これが一転し国歌を歌ったことが注目を集めている。
イラン代表選手たちは11月21日、イランにとって初戦の試合前に国歌を歌わなかった。これにより、イラン国内で広がる反スカーフデモに連携を示したと見られていた。
反スカーフデモとは、イスラム体制下でスカーフのかぶり方が不適切だとして拘束された女性が9月16日に死亡したことがキッカケで始まった抗議活動。現在イランはこの活動を厳しく弾圧しており、これまでに子供や女性を含む多くの人々が死亡やケガを負っている。世界のメディアはイラン当局を「残忍」などと批判しており、イラン国内からも抗議の声が多く上がっている。
サッカーのイラン代表選手たちも、ワールドカップの舞台で国歌を歌わなかったことで抗議活動に連携を示したと見られたが、日本時間11月30日に行われた対アメリカ戦では、一転して国歌を歌ったのだ。
口を小さく開いて歌う選手たち
همخوانی #سرود_ملی توسط بازیکنان کشورمان🇮🇷 pic.twitter.com/VkgZgWdFCf
— روزنامه ایران (@IranNewspaper) November 29, 2022
CNNによるとイラン当局は、アメリカとの大一番を前にイラン代表選手たちの家族を脅したと報道。もし彼らが試合で「行儀よく」しなければ、「暴力と拷問」が母国で起こるかもしれないと、圧力をかけたという。
アメリカサッカー連盟はイランとの試合の前、SNS上でイランの国旗のデザインを変更して投稿。SNSに掲載したイランの国旗は3色のみのデザインで、真ん中の国章が消されているものであった。この理由について、アメリカサッカー連盟は「イランで基本的人権を求めて闘う女性たちへの支持として、24時間限定で掲載した」とCNNのインタビューに答えていた。これをイランは批判し、アメリカをワールドカップから追放するようFIFAに要求。これにより、イランとアメリカの敵対関係はさらに根深くなったようだ。