これまでにグラミー賞を5度受賞し、来年の第65回グラミー賞にもノミネートされている若き天才ジェイコブ・コリアー。かのマイケル・ジャクソンのプロデューサーでもあり、自身も音楽界のレジェンドであるクインシー・ジョーンズに見いだされ、2016年にデビュー。様々な楽器を操るシンガーソングライターであるばかりか、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとして様々な才能を見せている。
今回、約3年ぶりとなる日本公演が、11月27日(日)に大阪BIGCATと、11月28日(月)Zepp DiverCity Tokyoにて開催された。チケットは両日ともにSOLD OUTの人気ぶり。ここでは、28日の東京公演の模様をレポートする。
舞台袖からいきなりの登場! 複数の楽器を1人で操る才能にオーディエンスはくぎづけに
Zepp DiverCity Tokyoは満員と言ってもいいほどの人であふれていた。ある人は踊りながら、ある人は静かに飲み物を飲みながら、ジェイコブ・コリアーの開演を待ちわびていた。開演時間の19時を少し回ったころ、とつぜん、舞台袖からジェイコブが飛び出してきた。軽やかなステップでステージを一周すると、いきなりオーディエンスに手拍子を要求。度肝を抜かれつつ、観客が笑顔でそれに応える。
1曲目の『With the Love in My Heart』から、ジェイコブらしいパフォーマンスが炸裂した。ピアノを弾いていたかと思いきや、次はドラムを叩き、タンバリンを鳴らしながら客席を右往左往して、またピアノに戻り、キーボードを弾き鳴らす。そうして多くの楽器を楽しそうに操っていく。
『Count the people』では、ダイナミックなドラムパフォーマンスに魅了された。ジャンルレスなアーティストと言われるだけあり、彼の曲は、ジャズともファンクともポップスともR&Bとも形容しがたい。『Feel』では、女性ボーカルの声が会場に響いた。ジェイコブとのハーモニーが非常に美しく、さきほどの曲とは打って変わって客席がうっとりと歌声に酔いしれる。ジェイコブの曲は1曲ごとにまったく雰囲気が違う。にもかかわらず、どの曲にも彼らしさがあり、耳にスッと入ってくるからなんとも不思議だ。
ここで、ジェイコブが「How are you feeling?」とMCをはさむ。「会えてうれしいよ。東京に戻ってこれて本当にうれしい。本当に長いこと待っていたんだ。だから本当にso goodだよ」とジェイコブ。そして改めて「僕はジェイコブです!」と自己紹介。知ってるよ、と言わんばかりに会場からは笑い声が漏れる。そして、先ほどの女性ボーカル、エミリー・アルバートを紹介するとオーディエンスから大きな拍手が巻き起こった。
奇想天外なパフォーマンスにオーディエンスが驚愕! いったい何が起きたのか?
次の曲は『Hideaway』。ジェイコブはずっとピアノに向かっていた。世界有数の音楽学校の1つである英国王立音楽アカデミーで学んだジャズピアノの実力をこれでもかと魅せる。
さらに『Don’t you know』では、またも複数の楽器を操る姿が見られた。かと思えば、タンバリンを鳴らしながらステージを縦横無尽に走り回り、オーディエンスにその歌唱力を存分に披露する。楽しすぎるステージに見入っていると、最後にジェイコブがドラムスティックを舞台後方に投げつけた! なんと後方の幕にはシンバルが貼り付けてあったのだ。スティックはみごとシンバルにヒットし、ジャーーン!!! という音が響き渡る。あまりに一瞬の出来事に何が起こったのか理解できないオーディエンス。そんな客席に向けてジェイコブがぺこりと頭を下げると、割れんばかりの拍手と歓声が。それと同時に「すげぇ」という声があちこちから漏れてきた。
『The sun is in your eyes』をアコースティックに歌いあげると、『Can’t Help Falling in Love』で会場を盛り上げた。もちろんエルビス・プレスリーのカバーだ。オーディエンスのボルテージはさらにヒートアップ。「アリガトウゴザイマス!」と日本語であいさつすると、次の『In too deep』は、ジェイコブの歌声はもちろんのこと、女性ボーカル アリタ・モーゼスが素晴らしい。さきほどのエミリーとのハーモニーも美しかったが、アリタの伸びやかな高音は鳥肌モノだ。
▼Jacob Collier – Can’t Help Falling In Love (Live in Lisbon)
ライブ中に姿を消したジェイコブ・・・いったいどこへ? 「そんなことある!?」
すると突然「ちょっとピーに行きたい。ピー」と言い出したジェイコブ。なんと公演の真っ最中にトイレに行ってしまったのだ。しかもエミリーにその場をたくして。これには観客も「そんなことある!?」と大笑い。苦笑いしつつもエミリーが歌いはじめ、オーディエンスがその歌声に酔いしれていると、しれっと何事もなかったかのように戻ってきたジェイコブ。何も言わず、まるで最初からいましたとばかりにピアノを弾き始めた。そんな自由すぎる彼の魅力にますます観客はくぎづけに。
そして、「次はファンキーソングだ!」と宣言すると、ノリノリで『Time alone with you』を披露。会場の熱気は最高潮に達し、客席の前方では踊り出す集団まで現れた。「オーキドーキー!」と歌いながら、かつらをかぶってエレキギターをかき鳴らすジェイコブ。曲の途中で、いきなり停止したかと思えば、また演奏を再開するなどパフォーマンスも奇抜で目が離せない。『All I Need』のあとには、ジェイコブが「あざす!」と日本語であいさつをした。いったい誰に教わったのかとまたもや会場から爆笑が起こる。
▼Jacob Collier – Time Alone With You ft. Daniel Caesar
ピアノバラードは、マイケル・ジャクソンをカバー! 美しい旋律に酔いしれる
そして、「僕はロンドンから来たんだ!」と、またも自己紹介をはじめ、「ロンドン行ったことある人?」とアンケートまで取り出した。「僕は東京を夢見ていたんだ」という言葉にオーディエンスからは歓声があがる。「このワールドツアーはチャレンジから始まったんだ。僕は、チャレンジが大好きなんだ」ジェイコブがそう言うと、客席から「アイスバケツ・チャレンジ?」という声が飛んだ。これには彼も笑いながら「今日はやめとくよ」と返していた。
そして、「ショーごとにやる曲を変えているんだ」と、「僕が本当に大好きな曲をやる。東京ならではのスペシャルだ」と、次の曲を紹介した。その曲とはなんと、マイケル・ジャクソンの『Human Nature』。ピアノの圧倒的な美しい旋律に、さきほどまで賑やかだった客席がしんと静まり返っていた。ジェイコブが「Looking out~♪」と歌い始めると同時に、悲鳴に似た歓声が。しかしまたも、彼の歌声とピアノの音に酔いしれるオーディエンス。10分にもわたる壮大なパフォーマンスのあとには、またも割れんばかりの拍手が起こった。
『Human Nature』を披露したあと、ジェイコブがバンドメンバーの紹介を。ベースはロンドン出身、ドラムはシカゴ出身、キーボードはブリステン…と、国際色豊かなメンツを次々に紹介していく。なんとスタッフまで、ローマ出身など多様性に富んでいるという。おまけに照明の紹介まで。なんと、照明の正体は音を奏でる装置だという。照明までも楽器にしてしまう発想に、驚きを隠せないオーディエンス。
そして、最後の曲となった。照明までをも巧みに使い、またも複数の楽器を弾きこなしてステージを走り回るジェイコブ。そしてカーテンコールを終え、ステージにいた6人は舞台から去っていった。…しかし客席からの手拍子は鳴りやまない。
アンコール曲はビートルズのあの名曲! そして会場全体を巻き込んだ大合唱へ
オーディエンスがジェイコブの再登場を待っていると、またもやステージにジェイコブが飛び出してきた。アンコール曲は、ザ・ビートルズの『Blackbird』。広いステージの上、たった1人でキーボードを操り、音声にはエコーがかかり、まるで宇宙を感じさせるような不思議なアレンジを披露した。ジェイコブにつられ、一緒に「You were only waiting for this moment to arise~♪」と口ずさみ始めるオーディエンス。そして、ステージ前方へ進み出て、指揮者のようにオーディエンスへと手を振るジェイコブ。徐々に歌声が大きくなり、いつの間にか会場全体を巻き込んだ大合唱となった。
そのまま「あーーー♪」というハーモニーが会場全体を包んでいた。ジェイコブの指揮に合わせ、客席の右側と左側とでキーを徐々に上げていく。もちろん何の打ち合わせもない即興だ。観客のほとんどは見ず知らずの赤の他人たち。にもかかわらず、まるで合唱団のようにピタリと歌声を合わせていく。どんどんキーがあがっていき、最後の最後にジェイコブが両手でワッと閉めくくると、一瞬の静寂のあとに割れんばかりの拍手が巻き起こった。
なんとも不思議で爽快感のあるラストに、震えが止まらない。アンコールが終わり、ジェイコブがステージを去ってしまったあともほとんどの観客は帰ろうとせず、まるで余韻を味わうように、会場に流れていた『September』に合わせて踊っていた。音楽を愛し、音楽を心から楽しむジェイコブ・コリア―は、観客にも音楽の面白さを、身をもって教えてくれたように思える。いや、教えていたというより、彼の音に飲まれているかのようだった。まるで魔法のようなコンサートは2時間ほどで幕を閉じた。
リリース情報
ジェイコブ・コリアー / ピアノ・バラッズ:ライヴ・フロム・ジェシー・ワールド・ツアー 2022
これまでにグラミー賞を5度受賞し、2021年には『ジェシー Vol. 3』でアルバム・オブ・ザ・イヤーにもノミネート。先日リリースした新曲「ネヴァー・ゴナ・ビー・アローン」もヒット中の天才シンガー・ソングライター&マルチ奏者のジェイコブ・コリアー。3年振りとなった本来日公演もソールドアウトとなるなど、日本でも人気の高さを見せている彼が先日配信リリースした初のライヴ・アルバム『ピアノ・バラッズ:ライヴ・フロム・ジェシー・ワールド・ツアー 2022』が日本限定でCD化、11月18日に急遽リリースされた。
今年北米とヨーロッパでワールド・ツアーを敢行したジェイコブ。各公演では、ジェイコブが初めてオーディエンスの前でプレイするカバー曲をセレクトし、ピアノ弾き語りで披露された。パフォーマンスの大部分は即興で行われ、しばしばオーディエンス全体がクワイアとなってジェイコブと演奏を創り上げるという、コンサートの感動的なハイライトとなることも多かったという。収録されるのはクイーンの『サムバディ・トゥ・ラヴ』、ABBAの『ダンシング・クイーン』、ザ・ビートルズの『レット・イット・ビー』、ジェームス・テイラーの『思い出のキャロライナ』など、誰もが知っている名曲ばかり。これらのパフォーマンス動画も随時公開予定で、現在はリスボン公演で撮影された「サムバディ・トゥ・ラヴ」のビデオが公開されている。
今回のリリースについて、ジェイコブは「物心ついたときから、ピアノの前に座って即興で演奏することに、大きな安らぎと喜びを感じてきたんだ。そしてそのフォーマットにフォーカスしたアルバムを出せると良いなと長い間夢見てきた。今年、僕はツアーで毎晩違う曲を即興で演奏するというチャレンジをやっていたんだ。もちろん、会場の素晴らしい音楽ファンの助けを借りてね。この11曲は、僕のお気に入りのポストカードのひとつのようなもので、みんなとシェアできることがとてもうれしいよ!」と語っている。
収録曲
CD1
1. エヴリ・タイム・ウィー・セイ・グッドバイ (ライヴ・イン・ロサンゼルス)
Every Time We Say Goodbye – Live in Los Angeles
2. ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ (ライヴ・イン・フォート・ローダーデイル)
How Deep Is Your Love – Live in Fort Lauderdale
3. オール・アット・シー (ライヴ・イン・ケンブリッジ)
All At Sea – Live in Cambridge
4. ダンシング・クイーン feat. アリタ・モーゼス (ライヴ・イン・ストックホルム)
Dancing Queen (feat. Alita Moses) – Live in Stockholm
5. 思い出のキャロライナ (ライヴ・イン・シャーロット)
Carolina In My Mind – Live in Charlotte
6. テネシー・ワルツ feat. スティアン・カルステンセン (ライヴ・イン・オスロ)
Tennessee Waltz (feat. Stian Carstensen) – Live in Oslo
CD2
1. 君の瞳に恋してる (ライヴ・イン・ロンドン)
Can’t Take My Eyes Off You – Live in London
2. 好きにならずにいられない (ライヴ・イン・リスボン)
Can’t Help Falling In Love With You – Live in Lisbon
3. カレドニア (ライヴ・イン・グラスゴー)
Caledonia – Live in Glasgow
4. サムバディ・トゥ・ラヴ (ライヴ・イン・リスボン)
Somebody To Love – Live in Lisbon
5. レット・イット・ビー (ライヴ・イン・コロンバス)
Let It Be – Live in Columbus
ジェイコブ・コリアー (Jacob Collier) プロフィール
ロンドンの音楽一家に生まれる。
2011年から多重録音のアカペラと楽器演奏による動画を自宅のベッドルームからYouTubeで配信し何百万ヴューを獲得するなど世界中で話題となる。それがクインシー・ジョーンズの目に留まり2016年にデビューを果たし、2017年にはグラミー賞を2部門で獲得。一躍スターとなったジェイコブはその後ハービー・ハンコック、ハンス・ジマーなどとのコラボレーションを実現し、ファレルとも共演を果たした。2021年にはアルバム『ジェシー Vol. 3』で、グラミー賞の主要部門であるアルバム・オブ・ザ・イヤーにもノミネート。大きな話題を呼んだ。
様々な楽器を操るシンガー、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとして、これまでに5度のグラミー賞に輝いている天才マルチ・ミュージシャン。
彼が何をやってもそれは私の心を強く揺さぶるんだ。信じられないよ。初めて会った時はとても驚いたね。
―クインシー・ジョーンズ
彼が僕らの音楽を良いものに出来ることをみんな知っている。彼はなんだって出来るんだ。
―クリス・マーティン (コールドプレイ)
私は自分がハーモニーに長けていると思っていた。だが彼は私のさらに上をいっているんだ!
―ハービー・ハンコック
私のヒーローたちは皆、私に会うためではなく、ジェイコブに会うために私のスタジオを訪れているのです。
―ハンス・ジマー
ジェイコブ・コリアー各種リンク
ユニバーサル・ミュージック:https://www.universal-music.co.jp/jacob-collier/
本国公式サイト:https://www.jacobcollier.com/
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