『ゴッドファーザー』の製作に、本物のマフィアはどの程度絡んでいたのだろうか。
1972年に公開され、大ヒットを記録した映画『ゴッドファーザー』。言わずと知れたマフィア映画の代表作であるこの作品だが、その製作の裏には多くの交渉とはげしい駆け引きがあったようだ。作家のマット・バークベックが、著書「The Life We Chose: William ‘Big Billy’ D’Elia and The Last Secrets of America’s Most Powerful Mafia Family」の中で明かしている。
この作品を製作するにあたり、実在するマフィアのボス、ラッセル・ブファリーノに電話でコンタクトを取ったのは、同作に出演していた俳優マーロン・ブランドだった。ラッセル・ブファリーノは当初、マーロン・ブランド本人であることを信じず、なりすましだと考えたという。1950年代には大成功をおさめ、アカデミー主演男優賞まで受賞したマーロンだったが、『ゴッドファーザー』製作時には人気に翳(かげ)りが見え始めていた。そのため、マーロンは、同作でヴィトー・コルレオーネ役を演じるにあたり、本物のマフィアをモデルに役づくりをすることで、彼の起用に後ろ向きなパラマウント社の重役たちを見返したいと考えた。
マフィアの実態を描いたこの作品の映画化には裏社会からの反発が強く、撮影が妨害されることもあったが、そんないざこざを解決にみちびいたのが、この作品に興味を持ったラッセルだったのだ。
そんなラッセルは、撮影中、何度も現場に足を運んでいる。ラッセルの舎弟にあたるウィリアム・“ビッグ・ビリー”・デリアは当時について、「ラッセルは、多くの時間をブランドとともに過ごした」と明かし、「ラッセルはブランドに、落ち着いた話し方や物腰、マナーを教えた。ブランドは質問があると、ラッセルに電話をかけてきていた」と振り返っている。