世界中で愛されるファッションドール「バービー」を題材にした大注目の映画『バービー』がいよいよ8月11日(金)から日本公開となる。tvgrooveは今作を手がけたグレタ・ガーウィグ監督、プロデューサーのデイビッド・ヘイマンに来日インタビューを実施。作品に込めたメッセージや、製作の裏話などについて語ってもらった。
『バービー』は、すべて完ぺきで幸せな日々を繰り返す“バービーランド”からバービー(演:マーゴット・ロビー)とケン(演:ライアン・ゴズリング)が、バービーランドとはかけ離れた“人間世界”に迷い込む…というストーリー。『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でも女性のリアルを等身大に描いてきたグレタ・ガーウィグ監督が、バービーとケンのコミカルな旅路を通じて、我々が生きる現代社会にも共通するメッセージを描いている。
ーーマーゴット・ロビー演じたバービーもとてもキュートでしたが、ライアン・ゴズリングのケンもおもしろかったです。ケンを演じるライアンから、作品について何か提案があったりしましたか?
グレタ・ガーウィグ(以下グレタ):ライアンとは撮影前から1年くらいやり取りをしていて、脚本や衣装、映像など、作品のクリエイティブな部分に関して色々な意見を交換しながら作りました。作中ケンが作り上げる世界「KENDOM」についても彼はとてもこだわりを持ってくれました。シルヴェスター・スタローンの要素を登場させたのも、私とライアンがスタローンのファンだからなんです。
マーゴットもライアンもたくさんのアイデアを出してくれた中で、実現しなかったものもあります。印象的でおもしろかったのは、ライアンが「KENDOM」で“黒いトイレ”を使いたいというアイデアも出ていましたが、バービーランドにはそんなものは存在せず、実現しませんでした(笑)。
ちなみにケンの衣装は、その日のバービーの衣装に合わせてデザインしていたので、バービーの衣装が決まってからケンの衣装を決めていきました。衣装を見たときライアンは「これを僕が着るの!?」と驚くこともありましたが(笑)、彼はしっかり着こなしてくれましたね。
デイビッド・ヘイマン(以下デイビッド):ライアンはとても勇敢で怖いもの知らずな俳優。彼の演技はいつも期待されるその先を突き進みます。そんな彼の演技をグレタ・ガーウィグ監督がまとめるなんて、本当に幸運な経験でした。
ーーマーゴット・ロビーは本作で主演を務めています。バービーを演じるマーゴットに、監督やプロデューサーから何か注文やアドバイスは行いましたか?
グレタ:マーゴットは終始この企画の原動力でした。作品を映画化する権利を取得したのもマーゴットだし、私に監督、脚本家を務めるよう声をかけてくれたのも彼女なんです。デイビッド・ヘイマンなど複数のプロデューサーが今作に関わってくれましたが、マーゴットも作品の多くの面にプロデューサーとしての影響を与えてくれました。
マーゴットには、ほかの人とは一味違うヴィジョンがあるんです。『バービー』というアナーキーで、ワイルドで、笑える世界に飛び込んだ私たちに、マーゴットが作品の核となる感情面の深みを与えてくれました。キャストの演技を見て、作り手である我々が気づかないような映画の側面に気づくことがありますが、今回もマーゴットの演技で、「実はこの映画ってこういう作品だったんだ」という新たなフィーリングを教えてもらうことがありましたよ。『バービー』の製作陣はなかなかクレイジーなチームでしたね(笑)。
ーーすでにマテル社が『バービー』に続くユニバース映画を14作品ほど企画しているといった話もありますが、グレタ監督が『バービー』の続編や、ほかのマテル社のおもちゃに関する映画プロジェクトに携わる可能性はありますか?
グレタ:マーゴット・ロビーやライアン・ゴズリングなど豪華なキャスト、そしてプロデューサーのデイビッドらと共に『バービー』を作り上げたという今回の経験が、私の映画作り人生のピークのような感覚で、いまこの瞬間は「もう一生アイデアが出てこない!」というような状態ではあります(笑)。でも、このステキなメンバーとまた仕事をしたいとは思っているので、どういった方向で進むのかは今後考えていかなければいけないと思っています。
ーービリー・アイリッシュやデュア・リパなど多彩な音楽も本作の魅力を増幅させていると思います。もともと、楽曲を提供してほしいアーティスト・リストがあったそうですが、監督が特に熱望していたアーティストとその理由を教えていただけますか?
グレタ:本当に豪華なサウンドトラックになりましたよね。最初に参加が決まったアーティストは、デュア・リパでした。今作のサントラはディスコ音楽がベースになっているので、現代のディスコ・クイーンといえるデュア・リパの名前は私たちが希望するアーティスト・リストのトップにありました。
【動画】Dua Lipa – Dance The Night (From Barbie The Album) [Official Lyric Video]
ほかにも色々なスタイルのアーティストがグローバルに集まってくれて、それぞれ異なる「バービーと自分の関係性」を持っていたりもしました。今作のために具体的な歌詞を書き下ろしてくれたアーティストもいて、ビリーの他にもニッキー・ミナージュ、FIFTY FIFTY、カロルG…と名前を挙げればキリがありませんが、あんな豪華なアーティストたちが参加してくれたことは本当に夢のような体験でした。
デイビッド:豪華アーティストが最初から全員決まっていたわけではありません。映画の製作にあたってはロンドンにいた僕とニューヨークにいたグレタで電話でのやりとりが多かったのですが、1週間に1回くらい電話すると、そのたびにどんどんアーティストの名前が追加されてリストが巨大になっていて、「え、その人も加わったの!?」なんて驚くこともありましたよ(笑)。
ーー『バービー』は「もっと女性が力を持つことができてればいいな、生きやすい世の中になればいいな」と思わされる映画でしたが、それと同時に“男性の生きづらさ”も描いた作品でしたね。お二人から観客に向けたメッセージを頂けますか。
グレタ:映画自体は楽しくて、笑えて、感動できる、ロックコンサートのようなものにしたかったのですが、メッセージの核の部分についてお話すると…男性でも女性でも、ジェンダーに関係なく、誰にとっても「生きる」ということは大変なことだと思っています。私たちは自分自身に過度な期待をしてしまいがちで、誰もがきっと綱渡りのような、少しでも足を踏み外したら危ない状態になるような状況で生きていると思うんです。
『バービー』は観る人全員に向けた映画ですが、特に“自分に対して過度に厳しい女性たち”に向けて「そのままの自分で十分足りていて、あなたには価値があって、いまそこに存在するために理由づけをする必要はない、そこに存在することだけで十分なんだ」と感じてほしいと思っています。
デイビッド:今回の映画では、バービーが男性側のメッセージを伝えたり、ケンが女性側のメッセージを伝えたりしている部分もありますよね。人はみんな、自分に対して過度なハードルを設定したり、他人からも期待されていると思ったりしてしまう部分があります。でも「自分はこうあるべき」と考えすぎることは、我々にとってかなりの重荷だと思うんです。
この映画を観た誰もが「自分はこのままの自分でいいんだ。不完全でできないことがあっても、あるがままの自分を受け入れればいいんだ」と思ってくれたらうれしいです。
(インタビュー終わり)
全米公開(7月21日)からわずか17日で全世界累計興行収入が10.3億ドル(約1,462億円)を突破し、今年公開作の全世界興行収入ランキングですでに2位にランクインする盛り上がりを見せている『バービー』は、8月11日(金)より日本公開。
『バービー』
8月11日(金)日本公開
どんな自分にでもなれる完ぺきで<夢>のような毎日が続く“バービーランド”で暮らすバービーとボーイフレンド(?)のケン。ある日とつぜん身体に異変を感じたバービーは、原因を探るためケンと共に<悩みのつきない>人間の世界へ!そこでの出会いを通して気づいた、“完ぺき”より大切なものとは?そして、バービーの最後の選択とはー?
【動画】映画『バービー』吹替版予告
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
脚本:ノア・バームバック
プロデューサー:デイビッド・ヘイマン
キャスト::マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラ、ケイト・マッキノン、エマ・マッキー、シム・リウ、ジョン・シナ、マイケル・セラ、デュア・リパ、ウィル・フェレル、ヘレン・ミレン
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/barbie/
公式X(ツイッター):https://twitter.com/BarbieMovie_jp #映画バービー
公式Instagram:https://www.instagram.com/barbiemovie_jp/
楽曲リンク:https://barbiejp.lnk.to/BarbieTheAlbumJP
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。