マーベル・スタジオによるドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」に携わった視覚効果(VFX)コーディネーターが、製作中は「1日18時間労働」だったと明かした。
VFXアーティストが過酷な労働環境を訴える
8月上旬、IATSE(国際舞台従業員・映画技術者・芸術家・関連職人同盟)は、マーベル・スタジオのVFXアーティストが全国労働関係委員会に組合選挙を申請したことをプレスリリースで発表した。投票が可決されれば、IATSEがVFX労働者の代理を務める。
発表後、多くのVFXアーティストがIGNの取材に応じ、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のコンテンツがフェーズ4で増えたことで、仕事がより過酷になったと指摘し、組合結成を決めた理由を語った。
スタッフにとっては地獄!フェーズ4でシリーズが激増したMCU
ディズニープラス(Disney +)での独占配信タイトルも大量に追加されたフェーズ4では、2021年7月の『ブラック・ウィドウ』公開から2022年11月の『ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエバー』までの2年間で7本の映画、8本のシリーズ、2本のスペシャル番組が製作され、シリーズ作品が明確に「フェーズ」に組み込まれたのはMCUで初めて(※)のことであった。
※:過去に「エージェント・オブ・シールド」やNetflixで製作された「デアデビル」などは存在したが、シリーズタイトルが他の映画作品と共に「フェーズ」として発表され、作品同士が強いつながりを持ったのは初めて。
「1日18時間労働・・・」スタッフの心身も限界
「ワンダヴィジョン」にVFXコーディネーターとして携わったマーク・パッチは、IGNにこう話す。「「ワンダヴィジョン」に関わったとき、『第10話(※)を納品するまでの3カ月間は、もう休みはないからね』って言われた。その時すでに僕たちは1日18時間労働だった。どう体力をもたせればいいんだ?」と重すぎる苦労をふり返る。
※「ワンダヴィジョン」は全9話だが、原文をそのまま和訳。
続けてパッチは「映画なら90分のところを合計10時間の長い作品にする場合、映画と同じ時間か、場合によってはそれよりも短い時間で10倍の仕事をすることになるんだ。特にマーベルでは、コロナ禍やストリーミング全盛の時代に突入して以降、僕たちの時間や精神的・肉体的な健康に影響するような要求が爆発的に増えてきた」とスタジオの無理難題に苦言を呈した。
ほかにも、VFX労働者のガブリエル・レベスク(Gabrielle Levesque)は「毎日何かを期待されたり、どうシリーズを売り出していくかだったり、それぞれのプロジェクトに独自の考えと時間が与えられているというより、もはやベルトコンベアーに乗せられて動いているような感覚だよ」と機械的に動かされる苦労を語った。
1月のバルチャー誌のインタビューでは、VFXアーティストたちはマーベル・スタジオを映画業界最大の “いじめっ子 ”だと考えており、権力者に気に入られた者に仕事が与えられる文化があるとも語っていた。さらに、人気を失ったアーティストのいわゆる”追放リスト”の存在も確認されている。
大作の裏に重すぎる苦労あり。今後のマーベル・スタジオの動向に注目したい。
【動画】「ワンダヴィジョン」予告編(ディズニープラスにて配信中)
「ワンダヴィジョン」はディズニーの公式動画配信サービス「ディズニープラス(Disney+)」で配信中。
[PR]◆公式サイト:https://www.disneyplus.com/ja-jp
◆公式 Twitter:@DisneyPlusJP
◆公式 Instagram:@disneyplusjp
◆公式 facebook:@DisneyPlusJP
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。