『エルム街の悪夢』シリーズのフレディ・クルーガー役で知られる俳優ロバート・イングランドが、自身の演技で一番お気に入りは『エルム街の悪夢4』のフレディ役だと語った。
ホラーファンに根強い人気を誇る『エルム街の悪夢』シリーズで、夢の中で若者を拷問する恐ろしいキャラクターであるフレディ・クルーガーを演じたロバート・イングランド。イングランドは、出演した8作品の中から、さまざまな視点でお気に入りを発表してきた。
1984年の元祖『エルム街の悪夢』が一般的に金字塔とされているが、イングランドが1作目に最大級の賛辞を送ることはほとんどない。
イングランドがこのシリーズでもっとも好きな映画は、『エルム街の悪夢/ザ・リアルナイトメア(1994)』だし、もっとも好きな殺人シーンは『エルム街の悪夢/ザ・ファイナルナイトメア(1991)』でカルロスの頭部が爆発するシーン。そしてもっとも好きなセリフは、『エルム街の悪夢3/惨劇の館(1987)』での「Welcome to prime time, bitch!(直訳:「ゴールデンタイムへようこそ、ビッチ!」/字幕では「視聴率が上がるぞ!」)」であることがわかっている。
そんな中、2015年の「Role Recall」でのインタビューで、イングランドが演じたフレディの演技の中で、イングランド自身が選んだお気に入りを発表していたことがわかった。1988年の『エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃』での演技だ。
「これまで出演した映画すべての中でも、一番気に入ってる演技だよ。『エルム街の悪夢4』はシリーズの中で一番好きな作品ではないけれど、一番好きな演技だったことは確かだ」と、4作目のフレディへの愛着を示したイングランド。理由について彼は、「あの作品で、僕は演技を完全に放任されたような感じだったんだ。それによってフレディを自分のものにできた」と製作陣から自由にフレディを演じさせてもらえたことを振り返っている。
【動画】『エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃』予告編(英語)
後に『L.A.コンフィデンシャル』でオスカーを受賞するブライアン・ヘルゲランドが共同脚本を手がけ、後に『ダイ・ハード2』や『クリフハンガー』の監督となるレニー・ハーリンが監督を務めるなど、ハリウッドのトップクラスの才能が結集していた『エルム街の悪夢4』は、フレディ人気が非常に高まっていた時期に公開され、最終的にはその10年間で最高の興行収入を記録したホラー映画となった。
現在76歳のイングランドは、続編のシュールな美学、特に昆虫恐怖症のティーン、デビー・スティーブンス(ブルック・タイス)の死を楽しんだようだ。
「当時『ローチ・モーテル』はテレビで一番のテレビCMだった。『チェックインはできても、チェックアウトはできない!』って言ってたよね。なんであのCMが好きかって、『エルム街の悪夢』シリーズにも共通する、シュルレアリスム(※)の要素をうまく使っていたんだ。心象風景のシュルレアリスム、想像力のシュルレアリスム、夢の風景の中のシュルレアリスム、犠牲者の悪夢というシュルレアリスム(という要素が『エルム街の悪夢』に共通するシュルレアリスム)だ」と当時流行していたテレビCMに絡めてシリーズの魅力を力説したイングランドは、続けて「(『エルム街の悪夢4』で)あの女の子は昆虫恐怖症だった。そんな彼女が虫に変身して、ゴキブリホテルに入るなんて。本当にすばらしい展開だと思ったよ。邪悪なフレディらしい罰だよね」と4作目の恐ろしくもおもしろい展開を振り返った。
※シュルレアリスム:現実だけでなく潜在意識や夢・幻想を表現しようという芸術思想。奇抜で現実離れした様子を指し、「シュール」という表現の語源でもある。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。