999人の亡霊が、“呪われた館”であなたを待っている・・・今週末公開となるディズニー最新作『ホーンテッドマンション(2023)』の魅力を、あらすじやキャストの紹介、本家アトラクションや2004年の映画との比較によって紐といていく。
9月1日、ディズニーによる最新実写映画『ホーンテッドマンション(2023)』が日本で公開となる。今作は、東京ディズニーランドを含めた複数のテーマパークに存在する同名の人気アトラクションを映画化したもので、シングルマザーと幼い息子が幽霊屋敷に引っ越してしまうことから始まるゴースト・パニックを描いている。
『ホーンテッドマンション(2023)』のあらすじ
ディズニーの人気アトラクション、あのホーンテッドマンションが実写映画化! ある親子が破格の条件で手に入れた、豪華すぎるマイホーム。だがそこは、999人のゴーストが住むという“呪われた館”だった。
二人を救うため、かなりクセが強い4人の心霊エキスパート(超常現象専門家、歴史学者、霊媒師、神父)が集結。 果たして、この館に秘められた謎とは何か…? “恐怖”と“笑い”がノン・ストップで押し寄せるアトラクション・ムービーが誕生する。(公式サイトより引用)
豪華キャスト集結!メインキャラクター紹介
今回、キャストが非常に豪華!
シングルマザーのギャビーを演じるのは、『スター・ウォーズ』の最新ドラマシリーズ「アソーカ」でも主演を務めるロザリオ・ドーソン。
妻の死の悲しみを引きずり、対人コミュニケーションに難のある心霊写真家(元科学者)のベンを演じるのは、『ゲット・アウト』『ホワイト・ボイス』などの有色人種としての生き方を描く映画に多数出演し、『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』ではアカデミー助演男優賞にノミネートされたラキース・スタンフィールド。俳優として大活躍中のラキースは、ミュージシャンとしての本業も順調だ。
お金が大好きでうさんくさい神父ケント役には、マーベルのドラマシリーズ「ロキ」のネメシス役や、『グランド・ブダペスト・ホテル』『フレンチ・ディスパッチ』など複数のウェス・アンダーソン監督映画でもおなじみ、オーウェン・ウィルソン。
ご老体にもかかわらず熱量が高すぎて周囲を心配させる歴史学者ブルース役は、ティム・バートン監督版『バットマン』のペンギン役や、『ジュマンジ/ネクスト・レベル』などでおなじみ、個性派俳優ダニー・デヴィートが務めた。
大げさでどこか怪しげな雰囲気もある霊媒師ハリエットを演じたのは、コメディ映画『ガールズ・トリップ』でブレイクし、「サタデー・ナイト・ライブ」のホスト役を務めた史上初の黒人女性スタンダップ・コメディアンであるティファニー・ハディッシュ。
アトラクションでも水晶玉の中から怪しげな声を響かせるマダム・レオタは、人気ホラーシリーズ『ハロウィン』のヒロインを長年演じ、今年のアカデミー賞で助演女優賞(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』)を獲得したことも記憶に新しいジェイミー・リー・カーティスが演じた。
そして、恐ろしい“ハットボックス・ゴースト”を演じたのは、ジャレッド・レト。ジャレッドといえば、名作映画『ダラス・バイヤーズ・クラブ』『レクイエム・フォー・ドリーム』に始まり、『スーサイド・スクワッド』のジョーカー役や『ハウス・オブ・グッチ』での特殊メイク姿など、話題にことかかない名優だ。
ディズニーならではのコミカルでスリリングなホラーエンタテインメント作品『ホーンテッドマンション』を盛り上げるため、ここまで豪華なキャストが集結している。
アトラクションとしての「ホーンテッドマンション」
アトラクション「ホーンテッドマンション」が初めて披露されたのは、1969年。カリフォルニアのディズニーランドに最初のホーンテッドマンションがオープンし、入場制限が行われるほどの大盛況となった。
その後フロリダのマジック・キングダムにも同アトラクションがオープン。ご存知のとおり、東京ディズニーランドにも建設され、ホーンテッドマンションは世界に3つ存在する(※)。
【動画】日本でも人気のホーンテッドマンション
※パリ、香港にはそれぞれ「ファントム・マナー」「ミスティック・マナー」という別の幽霊屋敷アトラクションがある。
少しずつ違いはあるものの、どのホーンテッドマンションも流れはほぼ同じ。身近な東京バージョンを例にとって大まかな流れを紹介すると、
・墓石がたくさんのキューライン(待ち列)を抜けて屋敷へ。
・最初の部屋では徐々に白骨化する肖像画を目撃。
・次の部屋では、一見ありきたりな肖像画が、部屋と共に上に伸びていき、恐ろしい絵に変化。
・その後ショッキングなサウンドとともに、天井の上にあった首を吊った白骨を目撃。
・部屋を抜け、乗り物に搭乗。
そこから(順不同で)登場するものは、
・不気味な絵が並ぶ空間を通過(どの絵も、目がこちらを追ってくる!)。
・どこまでも続いているように見える不思議な廊下と、浮かび上がるろうそく。
・13時まである時計や、タイミングが合えば飛び出してくることもある肖像画。
・ガタガタふるえる棺やドア、誰もいないのに鳴り響くピアノ。
・墓石の後ろから飛び出してくる、ゾンビのようなゴースト。
・書斎では、進んでも進んでもこちらを見てくる胸像が居心地悪さを演出
・メロディがとんちんかんなオルガンと、長い食卓を囲んで踊るゴーストたち。
・食卓の上空では銃で撃ち合うゴーストも。
・中盤で非常に印象的なのは、タロットカードに囲まれた空間。そこには水晶玉に首だけ浮かび上がり、占い文句をつぶやき続けるマダム・レオタがいる。
それらを抜けると、クライマックスは
不気味に鳴くカラスやガリガリの犬に迎えられ、ゴーストたちの歌声が鳴り響く大きな墓場へ。
・ゴーストたちは、映画でも流れる有名な歌「グリム・グリニング・ゴースト」を歌う。
・墓場を抜けると、乗客の乗り物に勝手に乗り込んでくるヒッチハイク・ゴーストたち。
・最後はリトル・レオタと呼ばれるゴーストが「また戻ってきてね」と声をかけてきて終了。
「ホーンテッドマンション」はこんなアトラクションだ。
全体的に、不気味であることは間違いないが、「怖がらせる」より「楽しませる」ことに重きを置いた世界観になっていて、ファミリーで楽しめるアトラクションである。
それは今回公開となる映画版でも同様。自分に本当に起きたら恐ろしいことばかり起きるが、映画を観ている時の感覚は「怖い」より「楽しい」が勝つようにできている。
(極度に怖がりなお子様については保証できないが、)基本的にはファミリーで楽しめる映画といって問題ない!
2004年にも映画が作られている!
ちなみに、ホーンテッドマンションは2004年(全米公開は2003年)にもディズニーが実写映画を作っている。
主演はエディ・マーフィで、不動産の仕事一筋で家族サービスをおろそかにしている男性が、高価な屋敷を売ろうとして災難に巻き込まれるといった内容だ。
【動画】2004年版『ホーンテッドマンション』(英語)
ここで2004年版と2023年版を比較してみよう。
共通するのは、どちらも前述のとおり、怖がらせるより楽しませる映画であるということ。エディ・マーフィと個性的な一家がゴーストと屋敷に秘められた陰謀に振り回される様子は、不気味ながら非常にコミカルで楽しい。
さらにどちらもマダム・レオタ(2004年版ではマダム・リオッタとも表記される)が非常に重要な役で登場する。
異なるのは、まず主軸となる物語。
2004年版では強制的な結婚にまつわる怨念や、金銭のための陰謀をメインに、エディ・マーフィ演じる主人公が妻や子供との関係を見直す展開が主になり、基本的に「主人公一家」の物語になっているに対し、2023年版では悲しみや厄介事を抱えたクセのある人々が、ゴースト騒ぎに対応する中で自分と向き合う機会を与えられ、新たな転機を迎えたりする。「家族」も描くが、「仲間・チーム」の物語としての色も濃い作品だ。
さらに、アトラクションのどこをフィーチャーするか、どのくらいフィーチャーするかも大きく異なる。
2004年版は、歌う胸像やヒッチハイクゴーストなどは登場したものの、そこまで大量のアトラクション要素を登場させた作品ではなかった。それに対して2023年版は、2004年版で実現しなかったアトラクション要素をなるべく多く実現しようという心意気を確かに感じる作品だ。
予告編でもわかるように、部屋ごと伸びる肖像画をはじめとする大量の肖像画ネタが本編に登場するほか、キューラインからアトラクション本編まで、さまざまな要素がアトラクションから引用されていて、乗ったことがあればあるほど細かいところまでアトラクション愛を込められた作品であることがわかる映画になっている。
ディズニーランドのホーンテッドマンションが好きな人にとってはごほうびのような映画だし、2004年版とは物語もオマージュ要素も大きく違うし、もちろんあまり知らない人でも、大人も子どもも楽しめるホラーエンタテインメント映画に仕上がった。
ぜひディズニープラス(Disney +)で配信中の2004年版との比較も楽しんでいただければと思う。
[PR]最後に・・・
ひとつ、一部から起こりそうな批判に先回りして言うなら、今作は幽霊屋敷の話だが、ホラー映画ではない。あくまでファミリー向けのホラーエンタメ映画だ。「刺激が足りない」「怖くない」といった批判を今作にするべきではないため、前提として「楽しむため」に観ていただきたい!
この夏の終わりを盛り上げるホラーエンタメ映画『ホーンテッドマンション』は9月1日全国公開。
【動画】映画『ホーンテッドマンション』日本版予告編 9月1日公開
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。