「ハリー・ポッター」のダークで過激なファンメイド作品が話題を呼んでいる。
大人気のファンタジー小説といえば、「ハリー・ポッター」シリーズは必ず名前の挙がる作品だ。魔法ワールドのフランチャイズはとどまることなく拡大し、いまも多くのファンを魅了し続けている。そして有名な作品には、ファンメイド作品(いわゆる同人誌)もつきもので、「ハリー・ポッター」のファンメイド作品も大量に作られてきた。
そんな『ハリー・ポッター』のファンメイドでもっとも有名な作品の1つが、SenLinYuによる「Manacled(原題)」だ。タイトルを和訳するなら、『束縛』『手錠をかけられて』などになるだろうか。
「Manacled」は、ハーマイオニー・グレンジャーとドラコ・マルフォイの恋を描くダークロマンスであり、現在英語圏のファンを中心に大きく話題になっている。
J・K・ローリングによる「ハリー・ポッター」だけでなく、マーガレット・アトウッド(「侍女の物語」)にもインスパイアを受けていると作者SenLinYuがノートで述べている今作について、この記事では紹介しようと思う。
この記事は「Manacled」序盤のネタバレを含みます。
ハリー死亡!ハーマイオニー監禁…!
「Manacled」は、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』以降の、オリジナル版と異なるパラレルストーリーを描いている。
なんと主人公であるハリーは命を落とし、不死鳥の騎士団はヴォルデモートとデスイーターたちとの戦いに敗れるのだ。
大切な人々を失いながら生き延びたハーマイオニーは、「Manacled」冒頭で、ドローレス・アンブリッジによって、暗く音のしない独房に16ヵ月間監禁され、魔法を封じる手錠をかけられる。
闇堕ちしたドラコと結婚するハーマイオニー
戦争のせいで魔法族の子どもがいなくなった世界で、独房から一度出されたハーマイオニーは魔法使いの代理出産をしなければならなくなる。
代理出産のため、ハーマイオニーはドラコ・マルフォイに嫁ぐことになるが、すでにドラコはヴォルデモートの部下として出世を遂げ、「High Reeve(※)」という名で知られるヴォルデモートの右腕になっており、さらに闇の魔女と正式な結婚もしているのだ。
※High Reeveは別のファンフィクション作品「Uncoffined」(lady_of_clunn作)で生まれた言葉だ
ハーマイオニーの記憶喪失と、ドラコとの関係
代理結婚の前、治療師からハーマイオニーは、彼女が秘密を守るために監禁中に自分自身にかけた、記憶ブロック魔法のことも明かされる。その魔法のせいで、ハーマイオニーはなんと両親の名前さえ思い出せない状態であった。
ハーマイオニーは記憶をつなぎ合わせようとするが、それと同時に大切な人々を失ったつらい思い出と向き合うことになり、その中でドラコ・マルフォイが自分にとって想像以上に重要な人物であったことを思い出していく――。
今作はドラコとハーマイオニーの恋愛関係を想像した初めてのファンフィクションではない。幼いふたりのいがみあう関係が、敵から恋人になる展開を一定数のファンに妄想させるのはごく自然なことだ。しかしこの物語は、ふたりの禁断の恋愛感情と戦争で荒れはてた世界を組み合わせたことで、ただの恋愛物語から一線を画したのだ。
英語版はネットで読むことが可能
「Manacled」はファン・フィクションとして大人気の作品となっており、Ao3によると、25日の時点で480万回以上読まれている。Goodreadsでは35,000人以上が評価し、5点満点中4.68点という高評価をキープ。TikTokでも取り上げているファンがおり、話題はどんどん拡大中。
「Manacled」は、J・K・ローリングによる原作よりずっとダークで、強姦・拷問・その他の暴力を描写するシーンが含まれていることを警告されている作品であることには注意が必要だが、もし興味のある方がいれば、今作(英語版)はFanFictionやInkittといったサイトで読むことが可能だ。
気になる方はぜひチェックしてみていただきたい。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。