Netflix版「デアデビル」のプロデューサーが、リブートドラマシリーズ「Daredevil: Born Again(原題)」を企画しているディズニー社を痛烈に批判した。
9月中旬、Netflix(ネットフリックス)のドラマシリーズ「デアデビル」シーズン1で製作総指揮を務めたスティーヴン・デナイトがX(旧ツイッター)において、ディズニーがドラマシリーズ「Daredevil: Born Again」を企画していることを“詐欺”と呼んで激しく批判する投稿を行った。
“デアデビル”とMCUの歴史
「デアデビル(2015 – 2018)」は「ルーク・ケイジ」「ジェシカ・ジョーンズ」などと同じくNetflixで製作・配信された一連のマーベル・ドラマシリーズの1つで、シーズン3まで配信された後、その大ヒットからシーズン4まで続く計画もあったが、打ち切りになってしまった。
打ち切りの理由はDisney+(ディズニープラス)の始動であると言われており、実際、Netflixから「デアデビル」その他のマーベル・ドラマシリーズは現在Disney+に配信媒体を移行済である。
【動画】「デアデビル」シーズン3 予告編
しかしその後、チャーリー・コックスが演じた“デアデビル”ことマット・マードックは映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』やディズニープラスで配信のマーベル・スタジオによるオリジナルドラマシリーズ「シーハルク:ザ・アトーニー」などMCUのメインストリームに登場し話題に。
ヴィンセント・ドノフリオ演じるデアデビルの宿敵“キングピン”も「ホークアイ」(ディズニープラスで配信中)に登場するなど、Netflix版「デアデビル」でおなじみのキャラクターたちがキャストもそのままに活躍を再開した。
「ホークアイ」には、コミックにおいてデアデビル関連キャラクターである“エコー”も登場、彼女を主人公に据えたドラマシリーズもディズニー社にて企画されている。
さらにディズニー社が発表した今後の計画には「Daredevil: Born Again(原題)」というドラマシリーズがあり、もちろんそのデアデビルもチャーリー・コックスが演じるのだ。
チャーリー・コックスは「Born Again」を「『デアデビル シーズン4』ではなくまったく新しいシリーズだ」と説明していたが、その表現がこれまでのデアデビルのストーリーの完全なリセットを指すのかは定かではない。ここまでの流れがあるにもかかわらず、完全にリセットされてしまってはファンの大きな動揺も予想されるが、現時点では同作についての情報がこれ以上ないことから、チャーリーの発言の意図については、配信を待つしかなさそうだ。
「デアデビル」プロデューサーの怒りが爆発
先述の背景から、「デアデビル」シリーズを生み出した製作陣は「Born Again」から何かしらの恩恵が生まれることを期待するのは自然な流れかもしれない。
しかし「デアデビル」のプロデューサーであるスティーヴン・デナイトは、これまでのディズニー社のビジネスを鑑みても「(「デアデビル製作陣が」)恩恵が何も得られない可能性が高い」と分析。その結果、ディズニー社への怒りを爆発させたのだった。
He does. It’s an old Disney scam where they slightly rename a series to reset contract terms back to first season. Needs to be addressed by all the guilds/unions and crushed! https://t.co/Ttj4A3tnE4
— Steven DeKnight (@stevendeknight) September 18, 2023
「シリーズ名を少し変えてシーズン1に戻す。これは契約期間をリセットするための、ディズニーの昔ながらの詐欺だよ」「すべての組合・協会がこれに対応し、この行為を潰さなければならない」と、ディズニーのビジネスを“詐欺”と呼び痛烈に批判したデナイト。
Oh it’s a sure thing. From what I understand, I’m not going to see a penny from Daredevil: Born Again because they added the “Born Again” and can claim it’s a completely different show. You know, with the exact same two lead actors (who I love!) playing Daredevil and Fisk. https://t.co/hEKxwgbocz
— Steven DeKnight (@stevendeknight) September 19, 2023
「僕の理解では、『Daredevil: Born Again』からは1銭ももらえないだろうね。だってディズニーは『Born Again』をつけたから全く別の番組だって主張できるんだから」と少し名前を変えただけで前番組の関係者が報酬を一切もらえない構図にいらだちを見せるデナイト。
彼は続けて「ご存知のとおり、デアデビルとフィスクを演じるのは、まったく同じ2人の(僕の大好きな)主演俳優だよ」と、同じ物語の設定を継承していることは明白なのに、別作品扱いにされることのやるせなさを強調した。
ディズニーは以前から「シーズン4」を避けている?
過去にディズニーはディズニー・チャンネルの人気番組「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ」をシーズン3まで放送した後に、その続きを「ハンナ・モンタナ フォーエバー」という別の名前の作品に変えたことがある。同じことが「スイート・ライフ」でも起き、シーズン3の後に「スイート・ライフ オン・クルーズ」という名前に変えて再び3シーズンを製作している。
なぜそのようなスタイルを取るかというと、その理由はディズニー社とスタッフ側が結ぶ契約にある。
過去に「うわさのツインズ リブとマディ」の4つ目のシーズンが作られた際、出演者のジョーイ・ブラッグがポッドキャスト番組「Cash Cuties」のインタビューでこのシステムの種明かしをしたことがある。
「労働組合なのかAMPTP(全米映画テレビ制作者協会)なのかはわかりませんが、ディズニー社は番組の最初の3シーズンは、尺の88%を支払うという契約を結んでいます。つまりクルーには最低賃金の88%が支払われるんです。そして、もし番組の人気が出て、4シーズン、5シーズン、6シーズンと続けていくうちに、100%か、何であれ賃金が増えることになっているんです」ブラッグは説明。
つまり、ブラッグが明かした理論やデナイトの主張によれば、ディズニー社はスタッフに支払うコストを削減することを目的として、「シーズン4」を作る代わりに名前を変えて別番組扱いしているという見方ができるわけだ。
もちろんそれは一つの見方であって、他にもさまざまな理由はあるかもしれないが、作品に関わることで収入を得ているスタッフ、キャストからしてみれば、怒りの感情が湧き上がるのも理解できるだろう。
デアデビルの新たな活躍は楽しみだが・・・
To be clear, I can’t wait to see Charlie Cox and the amazing @vincentdonofrio reprise their iconic rolls. But to claim this is a complete reboot and you don’t have to pay the original creatives is some corporate shenanigans, to say the least. https://t.co/jYVZx6L1pA
— Steven DeKnight (@stevendeknight) September 19, 2023
デナイトは「言っておくけど、僕はチャーリー・コックスとヴィンセント・ドノフリオが再び象徴的な役を演じるのを見るのは待ちきれないんだよ」とデアデビルの物語を再び見られることは楽しみだと強調。
その上で、「でも、『これが完全なリブートであり、オリジナルのクリエイターたちに報酬を支払う必要はない』という主張は、控えめに言っても企業の悪ふざけじゃないか」と怒りをあらわにした。
「Daredevil: Born Again」は2024年春の配信に向けて製作中であったが、ハリウッドでのストライキの影響もあってMCU作品の公開は次々に延期されており、「Born Again」の撮影も一旦中止に。配信日が最終的にどうなるかは現在不明だ。
製作が再開する頃、関係者の不満が少しでも解消されるといいのだが。
過去の「デアデビル」シーズン1〜3は現在ディズニープラスで配信中。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。