ジャッキー・チェン(69)が、自身の大ヒット映画『ラッシュアワー(1998)』の第一印象が「ひどい映画」だったと語った。
ジャッキー・チェンは過去に、アメリカ映画に進出することにうんざりした経験を語ったことがある。武術のマスターであり、ブルース・リーのスタント経験もあるジャッキーは、母国である中国では早い時期からスーパースターだったが、『バトルクリーク・ブロー(1980)』『キャノンボール(1981)』『プロテクター(1985)』といった映画でハリウッド進出を試みても、アメリカの観客にはなかなか受け入れられなかったのだ。
2017年のYahoo Entertainment誌のインタビューで、ジャッキーは「この英語を話せない小柄な中国人が何者か、誰も知らなかったんだよ」「がっかりしたし、もうアメリカ市場はこりごりだと思った」と、大スターの自分がアメリカでは無名だったことに落胆した過去を振り返る。
【動画】映画『ラッシュアワー』予告編
マネージャーの説得で出演した『ラッシュアワー』
しかし、1990年代後半に、彼のマネージャーはもう一度だけ挑戦するよう懇願した。
ブレット・ラトナー監督によるアクションコメディ映画『ラッシュアワー』の企画があり、ジャッキーが香港警察の警部を演じ、中国の政治家の誘拐された娘を救出するために、ロス市警の刑事(クリス・タッカー)とコンビを組むことになっていた。
ジャッキーは「脚本を読んで、もう警察はいいよ、と思った僕は断ろうとしたんだ。でもマネージャーが『英語がひどい香港警察の役だよ』って言うから、『OK。英語がひどい役ならいいよ』と引き受けたんだ」と、仕事を引き受けた理由がカタコトの英語でよかったことだと明かして笑った。
「ひどい映画だと思った」
しかし、『ラッシュアワー』を撮り終えた後のジャッキーの感触は、良いものではなかった。
「マネージャーに、『もう二度とこういう映画には出ない』と伝えたよ。ひどい映画だと思った」「彼らは僕のアクション・スタイルを許してくれなかった。あと英語。僕は英語が苦手だし、(相棒を演じた)クリス・タッカーの英語が理解できないんだよ。ひどい映画だと感じた」と完全にうちのめされてしまったジャッキー。
しかし「それでアジア圏に帰ったら、そのあと電話がかかってきて『(『ラッシュアワー』が)大ヒットだよ!』って言われた」「プレミア上映でも観客は爆笑してるけど、僕には理解できなくて『なぜ彼らは笑ってるんだ』と呆然と座ってたよ」と、ジャッキーは自分の感触とのギャップに大いに困惑したようだ。
困惑するジャッキーをよそに映画は大ヒット。全米で1億4100万ドル、全世界で2億4400万ドルの興行収入を記録した『ラッシュアワー』は2作目(全米2億2600万ドル、全世界3億4700万ドル)、3作目(全米1億4,000万ドル、全世界2億5,800万ドル)と続く人気シリーズとなった。
長年を経たジャッキーの心境の変化
しかしジャッキーにも心境の変化があった。
(インタビュー時点で)1作目から20年ほど経っていたジャッキーは「ゆっくりだけど、アメリカの文化を理解できてきたよ。可能な限り、長くハリウッド業界で仕事できればと思う」と文化への適応を見せ、前向きな姿勢を語っていた。
『ラッシュアワー』第4作は、ジャッキーとクリス・タッカーが2019年のインスタグラムの投稿でこの映画を予告するなど、何年も前からさまざまな段階で企画が進められているはずだが、現状公開日もアナウンスされていない状態だ。続報を楽しみに待ちたい。
ジャッキー・チェン出演の新作が公開中
ジャッキー・チェンといえば、彼が声優(スプリンター先生役)として参加した『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』が現在公開中だ。
【動画】『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』日本語版予告編
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。