10月6日、ついにシリーズ最終章となる『イコライザー THE FINAL』が日本公開。
この記事では、憧れのアクションヒーロー「イコライザー」ことロバート・マッコール最後の物語を描く今作をレビューする。
【動画】『イコライザー THE FINAL』予告編
『イコライザー THE FINAL』のあらすじ
ある時、訪れたシチリアでの事件で負傷したことをきっかけに、肉体的にも精神的にも限界を迎えたロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、アマルフィ海岸沿いの静かな田舎町に辿り着く。
よそ者にもかかわらず身内のように看病し、親しみをもって「ロベルト」と呼んで接してくれる街の人々。昼の顔、夜の顔を使い分け、長い時間をたった一人、誰にも頼らず生きてきたマッコールにとって、それはまさに癒しと救いだった。マッコールはこの街を安住の地と心に誓い、イコライザーのスイッチともいうべき腕の時計を外すことを決意。そこで穏やかに残りの人生を送るはずだった。
しかし、小さなこの街にも悪の魔の手は忍び寄っていた。街の人たちが次々と凄惨な事件に遭うのを見て、マッコールは再び「仕事」を再開する。自分を救ってくれた大切な人々を、街を、今度は自分が救うため。善良なすべての人々を救うのがイコライザーの流儀であり、マッコール自身の大いなる復讐でもあるのだ。しかしそれが引き金となり、事態はイタリア全土を巻き込む爆破テロ事件へと拡大してゆく…。
一度外した時計を再び身に着けるマッコール。彼がカウントするのはわずか9秒。怒りが頂点に達したマッコールに、もはや19秒は必要ない。最後にして最大の「仕事」が始まるー。(公式HPより)
哀愁ただよう、老いたマッコール
1作目ですでに中年でありながら、若々しく激しい戦いをこなしていたロバート・マッコール。しかし、もうあの頃のマッコールはいない。彼を演じ続けるデンゼル・ワシントンとともに、マッコールもまた年を重ねているのだ。
もうマッコールは物騒な日々から身を引き、落ち着いた暮らしを始めようとしている。老いたマッコールならではの哀愁が切なく、そして同時に、渋く熟した魅力を感じさせる。
そんな彼だからこそ、今作で彼が戦いに腰を持ち上げるまでには時間がかかる。しかし、戦いがないシーンでもしっかりドラマを見せてくれるのが『イコライザー』シリーズだ。
深く掘り下げられたマッコールの人物像
今作は、シリーズ3作を通して監督してきたアントワーン・フークア監督と主演してきたデンゼル・ワシントンが、いかに主人公ロバート・マッコールというキャラクターの人物像を解像度高く掘り下げてきたかを実感する1作となった。
ひとつひとつの視線や仕草、彼の特徴的なアイテムである「時計」の扱い、そしてもちろん無駄のないアクション。
それらすべてを通したマッコールの変化の描き方が非常に丁寧で、監督とデンゼルの表現力に深く感嘆させられる最終章だ。
「イコライザー」ことロバート・マッコールという、1人のヒーローの物語が、3作をつらぬく1本の確固たる芯を通して完結した。筆者もそんな強い満足感に浸りながら、エンドロールを見つめた。
マッコールとコリンズ ー 師弟のような新たな関係性
今回注目の新キャラは、ダコタ・ファニング演じるエマ・コリンズ。彼女はCIAの新人捜査官で、正義を執行する立場からイタリアに渦巻く闇深い陰謀に立ち向かうことになる。
これまでにもマッコールが「大人」として指導する「若者」キャラはいたものの、CIAの新米と師弟のような関係を見せてくれるのは初めて。
熟練の余裕を見せ、大先輩として見守るマッコールと、新人ながら強気なハート、正義を貫く信念、優秀な頭脳を見せるコリンズの関係性もかなりの魅力なので、ぜひそこにもご注目いただきたい。
ここで、過去作を復習する時間のない方のために、これまでの『イコライザー』シリーズを軽く振り返っておこう。
※過去作のネタバレを含みます
1作目『イコライザー(2014)』
1作目では、マッコールはホームセンターで働くしがない中年男性…に見せかけた、引退したCIA捜査官だった。
しかし、バーで出会った娼婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ)がロシアン・マフィアによって不当に残酷な目に遭っていると知ったマッコールは再び正義のために戦うことを決意。正確無比な計画と暴力によってロシアン・マフィアをねじ伏せ、テリーに平穏に夢を追う未来を確保した。
その後、ラストシーンではマッコールが苦しむ若者を救うための活動に乗り出すところが描かれていた。
【動画】『イコライザー』予告編
2作目『イコライザー2(2018)』
2作目では、マッコールはUberに似たプライベート・タクシーの運転手になりながら、見聞きした世の不正を暴力で正すダークヒーロー的な活動を貫いていた。
しかし、恩のあるCIAの先輩、そして親友として親交のあったスーザン(メリッサ・レオ)が何者かに殺害されてしまい、さらに大きな陰謀に挑むこととなった。
最終的に、CIAを裏切って民間の殺し屋的な活動をしていた元同胞たちを嵐の中の戦いで破るマッコールであった。
今作でもマッコールは、夢を諦めてギャングになりかけていた黒人の若者の人生を正し、未来を与えることに成功している。
【動画】『イコライザー2』予告編
ヒーローの物語は、ついに最終章へ。
1つのきっかけで新たな生き方を見つける1作目。その生き方を続ける中でリスクやさらなる苦難を知る2作目ときて、ある結末に彼が落ち着くための3作目が『イコライザー THE FINAL』だ。
スーパーパワーなどなくとも、その信念と頭脳と戦闘スキルで、「ヒーロー」という生き方を見せてくれるマッコール。そんな素晴らしいキャラクターともお別れとなる。
3作目をより深く味わうなら、時間のある方は過去作も含めて3作続けて観て、マッコールの「生き様」を目に焼き付けるのもおすすめだ。
『イコライザー THE FINAL』は10月6日公開。
『イコライザー THE FINAL』作品情報
■原題:THE EQUALIZER 3
■日本公開表記:10月6日(金)全国の映画館で公開
■US公開日:9月1日
■監督:アントワーン・フークア(『トレーニング デイ』『エンド・オブ・ホワイトハウス』『マグニフィセント・セブン』『イコライザー』シリーズ)
■脚本:リチャード・ウェンク(『イコライザー』シリーズ)
■製作:トッド・ブラック、ジェイソン・ブルメンタル、デンゼル・ワシントン、アントワーン・フークア、スティーヴ・ティッシュ、クレイトン・タウンゼント、アレックス・シスキン、トニー・エルドリッジ、マイケル・スローン
■出演:デンゼル・ワシントン(『トレーニング デイ』『フライト』『デンジャラス・ラン』)、ダコタ・ファニング(『アイ・アム・サム』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)、デヴィッド・デンマン
■公式サイト:https://www.equalizer.jp/
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。