イスラエルで公演を行っていたブルーノ・マーズが、「戦争状態」と言われた同国の状況を見て公演をキャンセル。緊急で避難することになった。
土曜日、ブルーノ・マーズは、テルアビブ(イスラエル)の7万人収容のハヤルコン・パークで、ソールドアウトした2回のコンサートを行なう史上3人目(※1)のアメリカ人アーティストとなる予定だった。
※1:1人目は1993年のマイケル・ジャクソン、2人目は2009年のマドンナ。
彼は先週の水曜日、テルアビブで合計4時間近い初公演を敢行。公演のプロモートはライブ・ネーション・イスラエル傘下のブルーストーン・グループが担当した。
2016年のヒットソング「24k Magic」で幕を開けたマーズのコンサート。マーズは「テルアビブ!フーリガンズがイスラエルに来れたよ。みんな今日は来てくれて本当にありがとう」と喜びを表していた。
そして今回の土曜にも、短めのワールドツアーの最後から2番目の公演となるコンサートを行う予定だった。
しかし、最後の2公演は両方キャンセルすることになってしまった。
土曜の早い時間に、イスラエルとパレスチナの紛争をエスカレートさせるハマス主導の組織的なテロ攻撃の報道が流れ始め、その後イスラエルのネタニヤフ首相がテレビに出演。イスラエルはハマスと「戦争状態にある」と宣言した。
それを受けたライブ・ネーション・イスラエルは午後にはコンサート中止の声明を出し、ブルーストーン・グループからはオンラインで「購入されたすべてのチケット代は購入時に使用されたクレジットカードを通して自動的に払い戻しとなります」との声明が発表された。
戦闘が活発な区域の近くにいることを危険と判断し、ブルーノ・マーズと60人のクルーは緊急で午後2時までにベン・グリオン空港に到着。そのままアテネ行きの飛行機に搭乗した。
翌日、マーズは予定していたドーハ公演もキャンセル。理由としては、マーズはアテネからドーハに移動してパフォーマンスを行う予定だったが、そのパフォーマンスに間に合うように制作機材をイスラエルから運び出すことができなかったと伝えられている。
ドーハのステージにはフランスのプロデューサー兼アーティストのDJスネイクが出演した。
マーズのコンサート・キャンセルは、イスラエルのコンサート・ビジネス後退の象徴的な出来事といえる。
この10年以上、イスラエルでの公演計画を発表した活動家やアーティストは、パレスチナ人に対する不当な扱いを批判する人々から厳しい非難にさらされてきたが、テルアビブを拠点とするブルーストーン・グループのような新世代のプロモーターを2017年にライブ・ネーションが買収してから少し潮流は変わった(※2)。
※2:2023年にはイマジン・ドラゴンズ、ティエスト、オズナ、クリスティーナ・アギレラ、ブラック・キーズ、ガンズ・アンド・ローゼズなど、欧米の一流アーティストが多数訪れるようになっていた。
しかし、このような事態が起きたともなれば、しばらくはまた他国のアーティストが公演に訪れることは難しい状況になるだろう。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。