10月20日(金)、ザ・ローリング・ストーンズの最新アルバムリリースと同時に、原宿に公式ストアがオープン。その前日に開催されたメディアレセプションに、日本が世界に誇るギタリストで、ザ・ローリング・ストーンズと共演した経験もある布袋寅泰がゲスト登壇した。
ロンドンのカーナビー・ストリートにあるものが世界唯一の店舗だったザ・ローリング・ストーンズ(以下ストーンズ)の公式アパレルストア“RS No.9”が、10月20日(金)に日本・原宿にオープン。同日には彼らの18年ぶりの最新アルバムである「Hackney Diamonds(ハックニー・ダイアモンズ)」も発売される。
19日には公式ストア現地でメディアレセプションが行われ、ユニバーサル・ミュージックの藤倉尚CEO、そしてトークゲストとしてギタリストの布袋寅泰が登壇した。
世界中の人々が集まる原宿に本拠地を置くユニバーサル・ミュージックの藤倉CEOは、この店のオープンについて「文化の発信地である原宿に何か貢献したいと考えていました」「原宿のひとつの観光名所みたいになれるように、この場所でがんばっていきたいと思います。ぜひ可愛がっていただければと思います」と感無量の様子であいさつを述べた。
ストアのオープンに際して、ストーンズからもメッセージが。
「ニューアルバムのリリースタイミングに俺たちのブランド“RS No.9”を日本に届けられることにとても興奮している。ファンの皆が俺たちのストアを体験してエキサイトしてくれるのを楽しみにしているよ」と、バンドのメンバーたちも世界2番目の公式ストアオープンを喜んでいるようだ。
60歳を超え、ソロデビューから35年となるギタリスト布袋寅泰は、先月アルバム「GUITARHYTHM VII」をリリースし、現在も年末まで続くアルバムのツアー中。
そんな布袋も、さらに一回り年を重ねて活動中のストーンズには計り知れない尊敬を示し、今回のイベントでもストーンズを讃えて印象的な名言を連発した。
「年はとっても魂は老いない」
80歳前後(ミックが80歳、キースが79歳、ロンが76歳)になっても熱い音楽を奏で続けるストーンズについて布袋は「別の生き物だと思います(笑)」と笑いつつも、ストーンズが「いつも笑ってる」「頑張ってる。でも我々が思う以上に楽しんでるっていうのを、ステージを見るたびに思います」と、彼らの“楽しむ”姿勢に敬意を示す。
「昔はロックっていうのは若者の怒れる魂の象徴だった」と回想する布袋は、今もそういう面は残りつつも、別の側面もストーンズが体現していると語る。
「(ストーンズは)今も熟成されながら、輝き続けられるということを証明している」「『年はとっても魂は老いない』というのを体現している人たち」と深い尊敬をにじませる布袋。若者のエネルギーを爆発させるロックの側面だけでなく、80歳になってもエネルギッシュであり続けられる証明というロックの見方を教えてくれるのがストーンズなのだ。
布袋は「後に続く我々ロッカーにとっては、ストーンズの存在は本当に『どこまでもやり続けられること』を証明している」「夢があると同時に眩しい…そして困っちゃう存在ですけどね(笑)」「(他のロッカーが)辞めるに辞められなくなっちゃう(笑)」と笑い、20歳ほど年上でいまだ走り続けるストーンズの偉大さと、彼らが引き上げたロックスターのハードルについて語った。
そんなストーンズが18年ぶりのアルバムをリリースすることについて、「やっぱりアーティストとしては、自分たちをアップデートしていくことってすごく大切なこと」と共感を示し、「あそこまでのキャリアを積んでも最新作に賭ける。(そんなストーンズが)堪らない」「(最新作を)聴けるのが幸せ」と“最新型”にアップデートされたストーンズの新譜が待ちきれないようだ。
同じステージで音を出すなんて宇宙旅行よりレア
そんな布袋寅泰は、日本が誇るギタリストとして、2014年に東京ドームでストーンズと共演したことがある。
共演について聞かれ、「今振り返っても本当に夢のようなできごと」「思い出しただけで鳥肌が立つ」「お会いするだけでなく、ステージに一緒に立って音を出したのは、ひょっとしたら宇宙旅行よりも確率が低いことなんじゃないか」と、その現実離れした経験を振り返った布袋は、ストーンズのメンバーについても印象深い思い出を語った。
打ち合わせのためミック・ジャガー(ストーンズでメインボーカルなどを務める)とともに入った楽屋で、ロン・ウッド(ギターなどを担当)とチャック・リーヴェル(ツアーメンバーとしてキーボードを担当)と会った布袋は、気さくなメンバーの温かさに感銘を受けたという。
さらにステージで聞いたキース・リチャーズのギターの音には「イナズマが身体の中を走ったような」感覚を覚えたそうだ。
とても紳士だということで有名だったチャーリー・ワッツ(ドラムス、2021年逝去)についても、布袋はつぶさな記憶を語った。
共演の日、ジャケット、ローファー、アンティークらしき時計という「ディナーにでも出かけるんじゃないか」というチャーリーの“紳士すぎる”格好に驚いた布袋。しかしチャーリーはドラムセットに座るとジャケットと時計を外し、ローファーをスニーカーに履き替え、布袋の方へニヤっと笑いかけたという。なんともかっこいい、画になる姿と仕草が想像できる。
「ローリング・ストーンズが音を出しているんですよ。その真ん中でローリング・ストーンズを体験している」という当時を振り返るだけで大興奮の様子の布袋は、ストーンズの奏でる音について「思った以上にダイナミックだったし、繊細な一音一音がぶつかり合いながら尊重もし合いながら、でも自由で、散らばっている…そんな音楽のあり方というのは体験したことがなくて本当に驚きました」とその唯一無二の音楽性を絶賛した。
10代も70代も「みんなザ・ローリング・ストーンズ世代」
“ザ・ローリング・ストーンズ世代”と聞けば、人々は高齢者世代を思い浮かべるかもしれない。筆者の父(50代後半)も「自分よりもっと上」というイメージだそうだ。
しかし布袋は自身も遅れてストーンズを聴くようになった世代としながらも、ストーンズは「常に新しいことにチャレンジしている」「ストーンズが奏でる最新系のロックンロールが世界のロックをリードしている」と常にアップデートしていくストーンズを“古いバンド”とは思わないことを強調。
「(ストーンズを)『おじちゃんのバンド』と思わず今のバンドとして共有することが、年代を超えた、ロックを愛する者同士の繋がりを生む」「こうやって今2023年、AI元年と言われるくらいの今、ストーンズをこうしてワクワクしながらみんなで迎えられるということは、全員が、10代も50代も60代も70代もみんな、ローリング・ストーンズ世代なんですよ」と、最初にヒットした時代に若者だった世代だけを“そのバンドの世代”として扱うことはナンセンスだという価値観を示した。
“あっかんべー”は反抗の証だけど、ユーモアや包容力もある
以前は原宿近辺に住んでいたと明かした布袋にとって「(パンクやストリート文化を感じる)ロックンロールな場所」である原宿にオープンした今回のストア。ここではもちろんストーンズを象徴する「舌を出した口」のロゴが入ったグッズも多数販売される。
ストーンズを知らなくとも誰もが知る、そんなロゴについて布袋は「若かりし頃は反抗の証だったけど、今こうやって年を重ねてダイナソー(恐竜)になって大きなリズムを踏み闊歩しながら、でも世界中に“あっかんべー”しながら、そこにもユーモアや包容力も」あると持論を述べる。
「老若男女、若い人から僕らの上の世代まで踊れるロックンロールを奏でている。ストーンズというのはロックの歴史の中で、ロックのアイコンそのもの」と、ストーンズと、彼らの歴史を長年背負ってきたロゴが持つ多面性を分析した。
ストアにはストーンズのファンである布袋も見たことがないグッズもあり(英国で販売されるグッズのほか、日本オリジナルグッズも作られた)、「往年のファンに受けると思う」と予想した布袋。
同時に「キッズたちが着ても、キラッとインパクトのある商品」と語った布袋自身、幼かった娘にストーンズTシャツを着せていたことがあるそうだ。
「ストーンズを聴くことはロックを聴くこと」「ストーンズを楽しむことは人生を楽しむこと」
最後に布袋は、世界からストーンズのアイコンに引き寄せられて集まってくるであろう往年のファン、そして新規のファンに向けてメッセージを述べた。
「ザ・ローリング・ストーンズを聴くことはロックを聴くことだし、ザ・ローリング・ストーンズを楽しむことは人生を楽しむこと。それくらいストーンズはハッピーにしてくれる偉大なるアーティストだと思うので、ぜひここに足を運んで、ストーンズの歴史にちょっと触れながら、これからの毎日をアップビートにテンション上げて、ポジティブに変換できれば」と、ローリング・ストーンズの音楽・アイコンが人生にもたらすパワーを強調した。
布袋寅泰も「欲しいものだらけだった」と語る、ザ・ローリング・ストーンズ公式アパレルストア“RS No.9”は10月20日(金)、原宿にオープン。
そしてデビュー60周年の彼らが送り出す最新アルバム「Hackney Diamonds(ハックニー・ダイアモンズ)」も同じく10月20日(金)に全世界同時発売。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。