クリストファー・ノーランが、コンサート映画『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』が大ヒット中のテイラー・スウィフトを絶賛した。
『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』は10月13日から世界中で公開され、10月13日から15日の週末だけで米国内興収9,280万ドル、全世界興収1億2,350万ドルを記録、北米で史上最高の興行収入を叩き出したコンサート映画となっている。
【動画】『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』予告編
City University of New Yorkのイベントにおいて、映画監督のクリストファー・ノーラン(『インターステラー』『TENET テネット』)は、映画という形式で自身のコンサートを世界に届けたテイラー・スウィフトについて、その配給方法や映画業界にもたらす効果に触れながらコメントした。
2023年のノーランといえば、『バービー』とともに史上最大の週末興行収入を記録した自身の大ヒット作『オッペンハイマー(日本公開未定)』だ。ノーランは複雑な劇場ビジネスとその方向性について彼なりの見解を持っている。
【動画】『Oppenheimer(原題)』予告編(英語版)
「ハリウッドは常に、親しみのある作品と儲かることを期待する作品との間で張り詰めた緊張感を保っていて、それがスタジオがビジネスを維持するための重要な要素になっている。でも観客には常に、新鮮なものを求める熱い欲求があるんだ」「その緊張感、この現状…ビジネスと芸術との間にある構図は、ハリウッドでは決して変わることがない。映画の製作は非常にお金がかかるんだ」と、興行的にある程度の成績が見込まれる“安定の作品”を取りがちなハリウッドと、新鮮さを求める観客とのギャップの間にビジネスの苦労があり、予算の問題もあることを明かすノーラン。
続けて彼は「『オッペンハイマー』のように、そこまで成功が期待されていなかった映画が最大期待値を大きく上回るようなときは、いつでもみんなは勇気づけられるし、スタジオや映画製作者にとっても励みになるよ」と、ヒットする映画の振れ幅が広がることが映画製作者の勇気につながることを説明した。
そんなノーランにとって、テイラーの映画もまたひとつの“振れ幅”だったようだ。
「テイラー・スウィフトのコンサート映画はスタジオを通して配給されず、映画館オーナーであるAMC社によって直接配給された。そして膨大な収入を生むだろうね」と、スタジオを通さず映画館会社に直接映画を配給させた特殊なフォーマットについて言及したノーラン。
彼は続けて「これが大切なんだよ。これもひとつの形式。これも物事に対するひとつの見方であり、物語や経験を共有する方法だよ。もしそれを望まない誰かがいても、他の誰かがそれを望む。それが真実だろう」と、テイラーの配給方法を称賛。
コンサート映画を手にできなかったスタジオにとってはマイナスかもしれないが、その代わりに映画館ビジネスを行う会社が直接大きな利益を手にできるチャンスが生まれた。
映画館で映画を上映することの重要さを説いてきたノーランにとっては、これもひとつのプラスに思えたのだろう。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。