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[レビュー]リアルな小説を書くために風俗店で働くことを決意! 映画『ラ・メゾン 小説家と娼婦』とモデルになった実話から、「自由」と「社会」を考える

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映画『ラ・メゾン 小説家と娼婦』が12月29日に公開。この記事では実話がモデルになったという今作をレビューしつつ、緻密なメッセージ性とリアルを描いた今作をどう観るかを考える。

【動画】『ラ・メゾン 小説家と娼婦』予告編

『ラ・メゾン 小説家と娼婦』あらすじ

フランスからベルリンに移り住んだ27才の小説家エマは、作家としての好奇心と野心から娼婦たちの裏側に惹かれてゆく。そして、大胆にも彼女たちの実情を理解するために、有名な高級娼館“ラ・メゾン”に娼婦として潜入する。

危険と隣り合わせの女性たちの日常、そして孤独や恋愛の尽きない悩み…。そこでの日々は、エマにとって新たな発見に溢れていた。そして2週間のつもりが、いつしか2年もの月日が流れてゆく。

果たして、エマがその先に見るものとはー。(公式HPより)

©︎ RADAR FILMS - REZO PRODUCTIONS - UMEDIA - CARL HIRSCHMANN - STELLA MARIS PICTURES

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ただの“エロ”にしない性描写

物語の展開上、今作には当然多くのベッドシーンが存在する。しかし監督も主演のアナ・ジラルドも、ただ性的で妖艶なシーンにするつもりはなかったと語っている。

アンダーグラウンドな世界に憧れる視線というのは事実としてあるのだから、妖艶で魅力的に見える性描写ももちろんある。主人公自身が夜の世界や、特殊なシチュエーションの性行為への好奇心を感じているからだ。

©︎ RADAR FILMS - REZO PRODUCTIONS - UMEDIA - CARL HIRSCHMANN - STELLA MARIS PICTURES

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しかし、それとは反対に、見知らぬ相手との密室での性行為には危険や恐怖、嫌悪感もつきもの。そういったシーンでは、主人公のその感覚にシンクロさせるような、リアルで「嫌な生々しさ」も演出されていて、同じベッドシーンでも、シーンごとに描くべき演出を切り替えているのが印象的であった。

自由と地獄、力強さと苦悩

今作には原作があり、原作者は主人公エマと同じように、実際に娼婦として働くことで現場のリアルを知った。

今作の娼館「ラ・メゾン」で働く女性たちは、裏では笑い合い、エネルギッシュに活動している。一般のイメージや偏見に囚われず、その地に乗り込んで実際に働いた原作者だからこそ描けた、彼女が見つめる“夜の世界の本当の姿”がそこにある。

©︎ RADAR FILMS - REZO PRODUCTIONS - UMEDIA - CARL HIRSCHMANN - STELLA MARIS PICTURES

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“風俗堕ち”などという言葉があったりするものの、セックスワーカーとして働く全員が「堕ちた」と思っているわけではないし、一般人から理解されずともその世界の“誇り”も存在しているはずだ。一般常識も所詮は人間が決めた“たくさんある価値観の一つ”でしかない。自由と意思をもってセックスワーカーとして働き続けるエマの姿には“気高さ”すら感じるし、そういう人物もいるのが性風俗業界のリアルなのだろう。

とはいえ、今作は性風俗の仕事に参加することを賛美する煌びやかな映画というわけでもない。もちろんその業界には“地獄”も存在しており、気高く強く活動していても、望まぬ危険な目に遭うリスクは避けられない。危険で恐ろしい地獄・苦悩の面にも向き合っているのが今作の特徴だ。

今作に「正しさ」は存在しない。そこにあるのは、ただ主人公が自由意思のもと冒険に出て、酸いも甘いも経験しながら、周囲の価値観とのギャップに悩む現実だけ。これを見てセックスワーカーの生き方をどう思うかは観客に委ねられている。社会に定着している偏見や“常識”から一度解放され、ありのままの姿を受け止めてみることができる映画だ。

周囲の心配とのギャップ、憧れと煌びやかさ、そして不安と地獄。娼婦たちの中に潜入した作家の目線でしか描けない「リアル」を堪能しながら、社会における彼女たちの存在に思いを馳せてみてほしい。

『ラ・メゾン 小説家と娼婦』作品情報

■原題:La Maison
■監督:アニッサ・ボンヌフォン
■原作:「La Maison」エマ・ベッケル著
■出演:アナ・ジラルド、オーレ・アッティカ、ロッシ・デ・パルマ、ヤニック・レニエ、フィリップ・リボット、ジーナ・ヒメネス、ニキータ・ベルッチ
■2022年/フランス、ベルギー/フランス語、英語、ドイツ語/89分/カラー/1:2.35/5.1ch/字幕翻訳:安本熙生/R-18
■配給:シンカ
■公式HP:https://synca.jp/lamaison/
■SNS X (旧Twitter):@syncacreations
■Instragram:@synca_creations
© RADAR FILMS – REZO PRODUCTIONS – UMEDIA – CARL HIRSCHMANN – STELLA MARIS PICTURES

本作は“French Cinema Season in Japan”の一環として、ユニフランスの支援を受けて公開される。

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