1月5日(金)から、アクション映画『シャクラ』が公開。この記事では、ドニー・イェンが手がけたこのアクション映画の魅力に迫る。
【動画】『シャクラ』予告編
『シャクラ』あらすじ
宋代の中国。幇主である喬峯(きょうほう)は誰からも慕われるヒーローだったが、ある日何者かに副官が殺害され、その濡れ衣を着せられた上に、“自分が漢民族ではない”という出自も暴露され追放される。自分を陥れた人間を突き止め、そして自身の出生の真実を知るため、喬峯は危険な旅にでる…。
アクション界のレジェンドがコラボ!
製作&総監督を務めながら主演もこなした喬峯役は、アクション映画好きには絶大な人気を誇るドニー・イェン。自身が主演する『イップ・マン』シリーズを始め、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『ジョン・ウィック:コンセクエンス』では盲目の猛者としてアクションを披露している。
そんな彼の自在なアクションに加え、アクション監督は実写版『るろうに剣心』シリーズで日本映画のアクションレベルを大きく引き上げた谷垣健治。今作で『るろうに剣心』のアクションを直接的には活かしていないと語る谷垣だが、目まぐるしい剣さばきや身軽な“すり足”など、過去作の影響は随所に感じられる。
ドニー・イェンを支える彼のチームも含め、アクション界のレジェンドがコラボレーションして作り上げたバトルアクションは圧巻だ。
ドニーのあくなき探究心
今作の原作は、香港を代表する武俠小説家・金庸(きんよう)の長編小説「天龍八部」。金庸の熱烈なファンであるドニー・イェンは、その知識と敬愛の心をもって、「天龍八部」に登場する武芸者のひとり、喬峯を愛すべきアクション映画ヒーローにしてみせた。
武術の天才である喬峯は、今作の舞台である丐幫(かいほう)のトップに君臨する人物。彼が使うのは、幫主に代々伝わる武術・“降龍十八掌”という。喬峯の武術の質感やリアルさにこだわったドニーは、降龍十八掌に剣を使用したアクションを加えることで、伝統へのリスペクトとオリジナリティのバランスをとったクールな格闘映像に昇華している。
もちろん「強くてかっこいい」だけではない。義理人情を重んじ、正しさを追求する。そんな喬峯という戦士の“生き様”も徹底して描いたことにより、その「かっこいいアクション」には燃え上がる魂が宿り、観客は苦難に立ち向かう彼を全力で応援したくなるのだ。
カメラワークの巧みさや、多様なフォーメーションに注目
物語のテンポに関しては少し乗りきれないというか、「もっと濃厚に描いた上で、1時間半くらいの2本の映画に分ければよかったのでは…」などと思う部分もある。
しかし、そんな乗れないポイントを吹き飛ばすくらいに、アクションシーンの迫力が圧倒的。ドニー・イェンはやはり、アクションの見せ方/魅せ方のレベルが他のアクションスターたちと比べてもひと回り違う次元に達していると感じる。
「そんなことされたら死ぬだろう」「それはさすがに無理があるだろう」…そんな“ツッコミ”が頭をよぎろうと、よぎるだけで頭にとどまってはいられない。アクションに感心した次の瞬間、次のアクションでまた驚愕させてくる。素早い動作の連続が、流れるようなステップで繋がっていく気持ちよさは、文字には表し難いものがあり、気づけばツッコミなど忘れて見入ってしまう。それがドニー・イェンのアクションだ。
そして、そんなアクションの表現力を最大限底上げしているのがカメラワーク。動きの一つ一つを、どう撮影すれば一番クールで一番迫力があるかを徹底して追究し、豊富なアングル、豊富な動きによってすべての瞬間で魅了する。撮影のバリエーションにはぜひ注目していただきたい。
敵の集団のフォーメーションや登場方法もバリエーション豊かで観ていて飽きない。(個人的に笑ってしまったのは、敵対する軍団がドアを蹴破って出てくるところ。「自分たちの建物なのになぜ壊す?」とツッコむのは野暮だろうか…)
色々な登場方法で、色々な形で襲い掛かる敵をドニーがバッタバッタと倒していく“無双感”は笑ってしまうほどに爽快だ。
圧巻のカメラワークで、現実と幻想の中間に観客を誘うような、激しく爽快なアクション。そんな映像はやはり、大画面で観るに限る。ぜひ今作は映画館で観ていただければ幸いだ。
『シャクラ』は1月5日(金)より公開中。
『シャクラ』作品情報
■製作・監督・主演:ドニー・イェン
■アクション監督:谷垣健治
■出演:チェン・ユーチー、リウ・ヤースー、ウー・ユエ、チョン・シウファイ
■2022年/香港・中国/広東語/130分/シネスコ/5.1ch/原題:天龍八部之喬峰傳/日本語字幕:小木曽三希子/提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。