ウィレム・デフォーが、ストリーミングサービスの流行が「より難しい映画、より挑戦的な映画」の発展を妨げていると語った。
『スパイダーマン』シリーズのグリーン・ゴブリン役をはじめ、ラース・フォン・トリアー監督の怪作やカルト的な人気を誇る映画への出演などでも知られ、『哀れなるものたち』の日本公開も控える俳優ウィレム・デフォー。彼はガーディアン誌のインタビューに応じ、ストリーミングサービスが席巻する今の映画業界について嘆いた。
【動画】『哀れなるものたち』予告編
デフォーは「家での人々の(映画に対する)注意は(映画館で観る時とは)異なる種類のものだ」「より難しい映画、より挑戦的な映画は、本気の注意を払ってくれる観客がいなければうまくいかない。これは大問題なんだ」と、映画を観る環境によって人々が映画に払う注意が変わると分析。難しい映画は家ではうまくいかないとした。
続けてデフォーは「映画が世界に溶け込んでいた頃のソーシャルな感覚が恋しいよ。映画を観に出かけて、夕飯を食べに行って、そして後で映画について話す。それ(その議論)が外に広がっていたんだ。現代の人々は帰宅してこう言う。『なあハニー、今夜はバカげた何かを観よう』そして彼らは映画を10本、5分ずつ見て『もういいや、ベッドに行こう』だ。そのどこに議論があるんだ」と、ストリーミング時代になり、人々は“バカげた”コンテンツを“バカげた”楽しみ方しかしていないと猛批判。
「彼ら(ストリーミング会社)による映画の作り方は昔とは異なる」「彼ら(ストリーミング会社)はおもちゃ会社やほかの事業体から資金を提供され、彼ら自身が映画を作る主体になっている。彼らはそのノウハウを知っている」「ストリーミングは独占企業のような状態になっていて、彼ら自身が製作・配信の手段を持っている。すごく複雑な状況だよね」と見解を語ったデフォー。
世に出た作品を配信するだけでなく、ストリーミング会社自体が作品を作ることもできてしまっている現状、大衆にとっつきやすいライトな(デフォーのいうところの“バカげた”)コンテンツが配信されやすくなるのは自然な流れ。しかしその影響で、ひと昔前は映画館で「より難しい映画」を観ていた層すらライトな映画だけに流れてしまっているなら、映画人が嘆くのも無理はないことだろう。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。