クリステン・スチュワートが『チャーリーズ・エンジェル(2019)』を作りたくなかったと明かした。
Variety誌のインタビュー動画の中で『チャーリーズ・エンジェル(Charlie’s Angels)』に話題が及んだクリステン・スチュワートが、今作を「作りたくなかった」と明かした。『チャーリーズ・エンジェル』は2000年のマックG監督版が人気を博したスパイアクション・コメディ映画であり、2019年にメインのチームメンバーがリキャストされ、エリザベス・バンクスが監督を務めた。
【動画】『チャーリーズ・エンジェル(2019)』予告編
スチュワートがナオミ・スコット、エラ・バリンスカと共にチームアップした今作のレビューには賛否両論あったものの、サビーナ役を演じたスチュワートの反骨精神たっぷりの演技には賞賛の声もあり、映画批評家(Variety誌)のオーウェン・グレイバーマンは彼女の演技をひとことで「目がくらむような磁力」と褒めている。
「あなたのセリフ覚えてる?(Know Your Lines)」というクイズゲームのなかで、彼女は『チャーリーズ・エンジェル(2019)』冒頭シーンの「男性は女性相手だと、男性相手の時に比べて自身の危機に気づくのに7秒長くかかるって知ってた?」というセリフに再会した。
【動画】クリステン・スチュワートのセリフ当てゲーム(英語)
長いセリフを音読する途中で笑い、「当時これを言いきるのが大変だった」とこぼすスチュワートは、「そのセリフは覚えてるよ。『チャーリーズ・エンジェル』という小さな映画のセリフだよね。私たちはインパクトのあるオープニングを求めたんだ」と、パワフルなアクションシーンで始まる今作を振り返る。
しかしスチュワートは「あの映画が描くものを世に出したいと私たちは思っていて、当初それは良いアイデアだと思ったけど…私はあの映画を作りたくなかった。他にどう言っていいかわからないよ」と、今作に自信を持てていない様子を見せる。
そして続けて「正直、あの三人には敵わない。キャメロン(・ディアス)、ルーシー(・リュー)、そしてドリュー(・バリモア)…私はあの映画が好き。あの映画が好きなんだよ! …としか言いようがないな」とスチュワートは、キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューのトリオをフィーチャーした2000年版『チャーリーズ・エンジェル』について言及。ディアスら3人が好きだからこそ、自分たちが作った作品に複雑な思いを抱えているようだ。
【動画】『チャーリーズ・エンジェル(2000)』予告編
ディアスら3人は2003年の続編『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』で再集結。彼女たちの映画が両方とも世界的な興行収入で2億5000万ドル以上の興行収入を叩き出した2作の比較すると、スチュワートらによる2019年版はわずか7300万ドルの売上となった。
2022年、リメイク版のエリザベス・バンクス監督はニューヨーク・タイムズ誌に対して、映画のマーケティングが「ただの女の子向け映画だと表現されなければよかったのに」と語り、それが映画の失敗の一因だと考えていると説明していた。さらに昨年、彼女はローリング・ストーン誌にこの件を詳しく語り、当時メディアが興味深く取り上げたのが「ジェンダー(性別)に関するアジェンダ」だけであったと発言した。
バンクスは「『チャーリーズ・エンジェル』についてメディアが伝えたかった話の多くで、今作がフェミニスト宣言であるかのように扱われたの」「人々は『あなたは『チャーリーズ・エンジェル』初の女性監督だ!』って言い続けたけど、私にしてみれば『(過去にチャーリーズ・エンジェルは)テレビ番組とマックG監督のシリーズしか存在しないのに、(初の女性監督なんて)何を言ってるの?そんなに長い歴史はないでしょ』って感じよ。私はこのフランチャイズが好きだっただけ。私からジェンダーに関連するアジェンダを発するつもりはなかったのよ。その扱いはこの仕事に重くのしかかってきて、少し残念だったな。(女性のための映画といった扱いが)私と観客を狭い範囲にとどめているような感じがした」と、意図していなかった“女性のための映画”扱いが、今作が活躍する舞台を狭めてしまったことを惜しく思っているようだ。
「どうストーリーを語るかという支配権をそんな形で失うのは本当に残念だった」「ご存じのとおり、メディアは、作り手が想定した枠組みに関係なく、何かの枠組みを決めることができてしまう。3人のインクレディブルな女性が主演した『チャーリーズ・エンジェル』を監督した私がたまたあま女性だっただけ。でもメディアが「あなたは女性監督だ!特別だ!」ということをやめさせることはできない。たしかにそう(私は女性監督で、女性が活躍する物語)だけど、(語りたいことは)それだけじゃないよ」と、メディアの表現によって“女性であること”ばかりが取り上げられ、狙いとは異なる形で映画が世間に伝わってしまったことを悔しく思っているバンクスだった。
『トワイライト』シリーズが2012年に終了して以来大きなハリウッド映画をほとんど作っていなかったこともあって『チャーリーズ・エンジェル(2019)』はクリステン・スチュワートが大きく注目される1作だったが、彼女の活躍はそれで終わってはいない。
『スペンサー ダイアナの決意』でアカデミー主演女優賞にノミネートされた彼女の最新作としては、A24がレズビアンの主人公たちをフィーチャーするクライム・スリラー映画『Love Lies Bleeding(原題)』や、スティーヴン・ユァン主演の世紀末ロマンス映画『Love Me(原題)』などが控えている。
【動画】『Love Lies Bleeding(原題)』予告編
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。