シェネル(Che’Nelle)が新曲となる「木曜ドラマ23 夫婦の秘密」主題歌「SOS」を2月2日(金)にリリースした。
12月リリースのシングル「I AM」と連続して日本語楽曲を発表し、本格的に日本での活動が再開したシェネルに、tvgrooveはオンラインインタビューを実施。最新曲を含めた3つのシングルと、出産・育児を経たここ近年の変化について語ってもらった。
インタビューの機会をありがとうございます。筆者自身もですが、特に妹があなたの音楽が大好きで、実家でよく「Believe」や「Happiness」を歌っていました。お話できて光栄です。
シェネル「嬉しい!20代の子が私の音楽を愛してくれているなんて最高!イェーイ!妹さんに『ヨロシク』って伝えてね」
3歳くらいのお子様が生まれた後、今の歌手活動はいかがですか。
シェネル「最高だよ。最高。ちょっとストレスを感じることだってあるけど、それは自分の人生を見つけようとしたり、自分の時間をどう使うかと向き合うなかでのことであって、娘のせいではないの。私は母親であり、アーティストであり、妻であり、友人であり、娘でもある。たくさんの異なる役割を演じる中で子どもや夫とも色々起こるけど、起こることすべてがすばらしいと思っているよ。私に言わせればすごく楽しい。新たな楽しみを得たって感じかな」
さらに彼女は「夫のすばらしいサポート」も得て「自分の活動と家族の生活のバランス」をとっているとも語ってくれた。
21年11月のシングル「Bloom」はお子様のことを歌ったと考えていいんでしょうか。
シェネル「あはは、ミュージック・ビデオに娘を出しているし、そう思うよね(笑)でも実は違うの。彼女の誕生より前から『Bloom』は書いていたんだよ」
シェネル「『Bloom』はみんなの自信を促す応援歌だね。自分自身の中に太陽のような美しいものを見出すことを歌ったの。『咲く(bloom)』ということは成長するということでしょ。(曲作りは娘と関係がなかったけど、)後から思うと毎日成長し続けている娘の姿にも重なるよね。だから後でミュージック・ビデオに娘を登場させたってこと」
12月のシングル「I AM」について。日本語バージョンは詩的で美しく、英語バージョンはさらに人生観を深掘りしたような内容に聞こえます。ふたつの歌詞についてはどのようにアプローチされたのでしょうか。
シェネル「当初英語バージョンは作る気がなかったの。後から作ることになったけどね。日本のライター・チームと曲のコンセプトについて話し合って、“自分自身の尊厳(selfworth)”についての曲を作ることになった。“足るを知る”ということでもあるね。日本語版は詩的に作っているから、そのあたりも少し抽象的な表現にしているかも。“世界で何が起きていても、あなたはそのままで大丈夫だよ。そのままで十分。価値があるよ”って歌ってる」
シェネル「その後、日本語バージョンと一緒に過ごすうちに、ふと英語版が頭に浮かんだの。そういう理由で“さらに深堀りした内容”になったっていう流れだね」
「I AM」で“今の人生・今の状態を受け入れ、幸せだと感じられる(足るを知る)状態”を歌えるように至るまで、何か人生の転換期があったのでしょうか。
シェネル「うん。『I AM』で歌った結論にたどりつくまでに経験があったよ…たくさんね(苦笑) 以前私には、私自身の価値観に固執していて、夫も同じでなきゃ許せないという時期があったの。自分のことはなんでもひとりでできる自立した人間であるはずなのに、どこか潜在意識で彼に依存してしまっていた面もあったんだよね。でもそんな時期を経てから私は学んだ。自分の人生は自分自身がどう生きるかでしかないってね。たぶんあの時、私にとって一番比重を占めていたのは結婚生活で、人生観を学べたのも結婚生活の中でのことだった」
結婚生活での苦悩を乗り越えた彼女は、娘の誕生でさらに価値観がアップデートされていったという。
シェネル「大なり小なり私たちが人生で経験することは、私たちがほしい何かを与えてくれたり、幸せに感じさせてくれる瞬間になり得るはず。“幸せだ、十分だ、満たされている”と、みんなが自分自身に対してそう思えるようになったらいいなと思うんだ」
そして最新曲「SOS」について。これまで日本語でリリースしてきた楽曲はJ-POPにも親和性の高い、美しくかつキャッチーなメロディでメッセージや愛を歌い上げるようなものが多かったのに対して、英語での楽曲は以前からクールなエネルギーにあふれるような音楽が多いですよね。「SOS」はどちらかというと英語楽曲に近い、パワフルかつクールな印象を受けました。曲作りに関してはどのようなこだわりをもってされたのでしょうか。
シェネル「当初はドラマ(「木曜ドラマ23 夫婦の秘密」)のためのメッセージを考えようと、よりドラマに忠実な歌詞を考えていたの。不倫とか浮気とかが混沌としていて、幸せそうには見えないドラマだよね。でも(KAY-Iから)楽曲のデモが届いた時に、『SOS』というタイトルが稲妻のようにインスピレーションをくれて、“カオスな状況でも自分をしっかり持って、自分の思うことを声に出していこう”と、より大きなメッセージを歌うことにしたの」
また、彼女はKanata Okajima、KAY-Iとの共同作業について、「集中できたと同時に、新しい経験もできて楽しかった」と話す。作詞の際はGoogleドキュメントを使って「私(シェネル)が英語詞、Kanataが日本語詞を同時に書き込む」という効率的なプロセスでテンポよく作詞を進めたそうだ。レコーディングまでの作業も「かなり急速」なテンポで進んだといい、とんとん拍子で進む作業に驚いたようだった。
前回のアルバム「メタモルフォーゼ」から7年となりますが、今後フルアルバムの制作予定はありますか。
シェネル「あはは、私もたくさんのアルバムを思いつけたらと思うけど、私(のチーム)は1回に1曲を作るスタイルなんだよね(笑)」「(アルバム作りができるかは)今出している楽曲がどこまで伸びるかにかかってるともいえるから、楽しみにはしているよ。昔ながらのファンもいるし、新しいファンもいてくれてる。創作活動を続けて、フルアルバムを作れる可能性が高まったらいいなと思ってるよ」
最後に日本のファンにひとことお願いします。
シェネル「tvgrooveのインタビュー記事を読んでくれる皆さん、みんなのシェネルだよ!サポートしてくれるみんなに本当に本当に本当に感謝してる。リリースする曲をみんなが楽しんでくれることを願っているよ。たくさんの新しい音楽と、そこに持たせた意味・メッセージがみんなに届いて、みんなに少しでも影響を与えられたらいいな。きっといつかみんなの前でパフォーマンスできることを、楽しみにしてるね」
歌手活動だけでない? シェネルの今後のさらなる活躍に期待!
「I AM」「SOS」と2作連続して日本語楽曲のリリースとなったシェネル。今後の日本での活動について希望を持っていいか聞くと「そりゃそうだよ、私が日本を離れられるわけないでしょ」「2曲だけでなくもっとたくさん曲を作るつもり」「わざわざ“希望”なんか持つまでもない、私は日本に来るわ」と力強い笑顔を見せてくれた。
出産・育児を経たシェネルは今、「新しく大きな革新への準備段階」にいると語る。その詳細な内容はまだ語らない彼女だったが、「私のキャリアに関するだけでない、別の段階に進もうとしてる。これまで経験したことのない状況で影響を与えたり受けたりしながら、これまでとは違う種類のモチベーションであふれているんだ」とエネルギッシュな現状を明かしてくれた。
最後までシェネルは「楽しかったです、ありがとうございます」と日本語であいさつし、筆者の妹にも改めて「よろしく」と伝えてくれるなど、終始温かみのあふれるインタビューであった。
(インタビュー以上)
シェネル プロフィール
マレーシア出身のアーティスト、ソングライター。オーストラリア・パース在住。2007年、米メジャー“キャピトル・レコーズ”より世界デビュー。日本では ヒット曲「ベイビー・アイラブユー」 「ビリーブ」「Happiness」などのヒット曲で、マルチ・プラチナ・ディスクを獲得し、「ラブソングのプリンセス」と呼ばれた。
映画「ブレイブハーツ海猿」、TVドラマ「ディア・シスター」等の主題歌を担当し7つのゴールドディスク賞を受賞。出産や育児を経て、2023年12月には、6年ぶりとなる日本語詞の楽曲「I AM」をリリースし、日本での活動を本格的に再開。
新曲「SOS」について
1月4日放送開始の、臼田あさ美、剛力彩芽ら出演の闇堕ち・愛憎ミステリー。
BS-TBS「夫婦の秘密」の主題歌でもある今作は、ラブバラードから一転自分の中にある痛み・混乱について声をあげることが自分を助け、力を与え るということ、自分の中にある「SOS」を発信していくことの重要性を歌詞のテーマにした力強い一曲。
ドラマ『ディア・シスター』の主題歌として大ヒットしたシェネルの「Happiness」の作詞家でもあり、有名アーティストの楽曲を多数手掛け、オリコンチャート1位 を140回以上記録するKanata Okajimaと「Happiness」以来の再タッグ!
また、作曲は、歌唱動画が人気を集め、TikTokフォロワー50万人を超えるKAY-I が参加する、注目の作品。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。