クリストファー・ノーラン監督が、ロバート・ダウニー・Jrとの仕事について語った。
ロバート・ダウニー・Jr.の発言が話題になった。今月初めのことだ。彼はクリストファー・ノーラン監督(『オッペンハイマー』)との初対面は2000年代初頭であり、その際に同監督のスーパーヒーロー映画『バットマン ビギンズ』(2005)で悪役スケアクロウとしてキャストされる可能性があったことを明らかにした。
しかし彼によるとノーランは彼を配役することにあまり興味を示さなかったそうで、ノーラン監督自身も最近のニューヨーク・タイムズ誌とのインタビューでそれを全面的に認めた。
「君がスケアクロウ役に適役でないことは100%わかっていたんだよ」とノーランは言う。最終的に同役を演じたのはキリアン・マーフィだ。さらに「頭の中で、その役は既に決まっていた」と続けるノーラン。ではなぜダウニーに会ったのか。
彼は「でもいつか君に会いたいと思っていたんだ。僕は君の大ファンで、ただ会いたかったんだ。でも、同時に君を少し怖がっていた。君がどれだけクレイジーか、色々と聞いたからね。あれらの話から数年しか経っていなかったんだ」と、ノーランはダウニーへの恐れを感じつつ、ファンとして会う機会がほしかったようだ。
ノーランとダウニーの初対面は、マーベルが彼をアイアンマン役にキャストする前のこと。ダウニーの一連の法的トラブルの後の時期だ。
ダウニーは1996年にヘロイン、コカイン、空の銃を所持して逮捕され、3年間の執行猶予が課せられた。その後も裁判所命令の薬物検査を怠り、1年後にほぼ4か月間投獄された。さらに1999年に再度検査を怠り、懲役3年が宣告された。ダウニーは15か月間服役し、釈放後4か月後に再び薬物所持で逮捕された。
そのようなダウニーの法的経歴。それはマーベル・スタジオにとって、トニー・スターク役を彼に配役する際の大きな課題だった。元マーベル・スタジオの社長のデビッド・メイゼルは、ダウニーをトニー・スタークの役に抜てきすることを最初の選択肢とした。しかし「取締役会は、薬物中毒者に会社の将来を託すことを狂っていると思っていた」と当時の状況を明かしている。
メイゼルは当時を振り返る。「彼が役に最適だと人々を説得するのを手伝った」。そして「我々はみな、彼がクリーンであり、クリーンでい続けると信じていた」と。その“賭け”が彼をアイアンマン役に導いたのだ。
ノーランは今月初め「ザ・レイト・ショー」に出演。ダウニーがアイアンマンを演じたことを「映画業界の歴史の中で最も重大なキャスティング決定の一つ」と絶賛した。さらにこの意見をニューヨーク・タイムズ誌のインタビューでも強調している。
「本当に、ジョン・ファヴローがロバートをトニー・スターク役にキャスティングしたことは、ハリウッド史上最も重要で重大なキャスティングの一つだと思う。それは、我々の産業を定義づけたよ」。そうノーランはキャスティングを讃える。
「後で振り返れば明らかに誰もが認める役になった。でも当時の彼にとって、ロバートをキャスティングするのは大きなリスクだった」。ノーランはファヴローとマーベル・スタジオの勇気に感服しているようだ。
ノーランは、ダウニーを『オッペンハイマー』のルイス・シュトラウス役にキャスティングした。既にこの役はダウニーにクリティクス・チョイス・アワードとゴールデン・グローブ賞の助演男優賞をもたらした。さらにアカデミー賞でも助演男優賞の有力候補だ。
「偉大な俳優と共演する機会をいつも探している。しかも彼らの人生やキャリアの中で、彼らが以前にやったことがない、または長い間やっていないことを提供できる瞬間がほしいんだ」とノーランはダウニーをキャスティングすることについて語る。
「僕はただ本当に、この信じられないほど優秀なスターが、そのすべての荷物、カリスマを置いて、非常に複雑な人物のドラマチックな描写に没頭するのを見たかったんだ。僕はいつも彼と仕事をしたいと思ってきたよ。彼を怖がるのをやめてからね」。そうノーランは、ダウニーとの仕事の機会を得られたことを喜んだ。
『オッペンハイマー』は3月29日(金)公開。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。