今大注目の若手アーティストがいる。ハワイから日本へ、そして中国へと拠点を移動しながら、グループ活動の経験を経て、ついにソロデビューを果たしたMIKA(ミカ/米卡)だ。そんなMIKAが、今回tvgrooveに独占インタビューの機会をくれた。
MIKAの魅力は最新のライブ・パフォーマンス・ビデオに詰まっている。この動画では、BTS・SUGAのワールドツアーを同行したバンドメンバーが再集結し、韓国で撮影を行った。MIKAのファンだけでなく、多くの方に注目していただきたい動画だ。
MIKA「so I don’t forget」ライブ・パフォーマンス・ビデオ
MIKA(米卡)の音楽人生と近況を振り返る! 独占インタビュー
ハワイ・ホノルルで生まれ育った15年間
多様性に触れながら音楽に触れ続けたシャイな少年時代
母に日本人、父にドイツ人を持つMIKA。彼はハワイのホノルルに生まれ、少年時代の15年間を過ごした。
MIKAは「(少年時代に)多様性あふれるハワイで、日本人、中国人、韓国人、フィリピン人などさまざまな人々が集まったアジア系の文化に身を置いたから、今も多様な環境で生きられるようになったんじゃないかな」と、自身のルーツを振り返っている。
子どもの頃から(今も根の部分は)シャイで内向的だというMIKA。彼の音楽経験のルーツは小学校にさかのぼる。小学校時代、彼は必修科目としてウクレレを2年間経験、クラスで2度ほど発表もしたそうだ。さらに授業の音楽コースで「歌ではなくオーケストラを選択し、バイオリンを4年間経験した」という。
少年時代に大好きだった音楽は?
レゲエ・ポップ音楽や、アコースティック音楽に癒されながら、ラジオから流れるヒップホップやR&B(ビヨンセなど)に浸り、多様な音楽を楽しんだ少年時代のMIKA。
特にニーヨ(Ne-Yo)の「So Sick」とクリス・ブラウンの「With You」がお気に入りだったという。「今も昔もスロウでスウィートな曲が好き」だというMIKA。彼の音楽を聴けば、納得の2曲だ。
日本での8年間(INTERSECTIONのメンバーとして活動)
それから日本にやってきて、8年間は日本で活動していたMIKA。2018年には男性4人組ボーカル・グループ「INTERSECTION(インターセクション)」のメンバーとしてデビュー、“橋爪ミカ”名義で活躍した。
INTERSECTION時代はどうだった?
MIKAは当時を「とても楽しかったよ。僕は(シャイな)性格上、いきなりソロデビューは難しかったと思うから、自分と同じような性質を持つ3人のメンバーと、友だちのような関係性で一緒に業界デビューできて本当によかった。すべてがとてもいい経験だったよ」と振り返る。自身に似たメンバーに囲まれての活動を楽しんでいたようだ。
「(自身も含めて)みんなアジア人と白人に半分ずつルーツを持つメンバーたちだから、西洋の文化とアジアの文化の両方に理解がある者同士だった」と、文化の面でも互いを理解し合えたINTERSECTIONのメンバーたち。
INTERSECTION時代の“一番よかったこと”について聞いてみると、MIKAは「メンバーと本当の友だちになれて、いつも一緒に遊んでいただけでなく、最後の年くらいになると一緒に音楽を作ったり、クリエイティブな面でも心のつながりを感じられて、それが本当に幸せだったな」と、友人としても、チームとしても深い絆が生まれたことを教えてくれた。
今でも、一番の敵は“緊張”
逆に“一番大変だったこと”については「ステージに向かう時かな。当時、全員が経験不足な自分たちにとって、大勢の前でパフォーマンスするのはとても怖かったし、緊張したよ」「練習を重ねて徐々に耐性はついてきたけど、みんな最後まで克服しきれてはいなかったんじゃないかな(笑)」と、やはり性格の根幹にあるシャイな部分がMIKAの一番の試練であるようだ。
「今でも緊張する時はあるよ。冗談じゃなく本気でね(笑)」「ライブが頻繁にある時期は徐々に慣れるけど、時期が開くとまたリセットされちゃうんだ。この前久しぶりにライブストリーミングでパフォーマンスをしたんだけど、緊張でノドがぐっと詰まったよ(笑)」と、大勢の前で緊張しやすいことは今でも変わらないMIKA。
しかし、不特定多数の前では今でも緊張するMIKAだが、自分のファンの前ではリラックスできていることも教えてくれた。自身のソロ・ライブは安心して行えそうだ。
現在、INTERSECTIONのメンバーとの関係は?
ちなみに、現在もメンバーとのつながりは切れていないそうだ。「活動拠点が違うから頻繁に会うのは難しいけど、メッセージやビデオ通話でのやりとりはあるよ。会うのは年に2回くらいかな」と、現在でも交流があることを明かすMIKA。当時からのファンにはなんとも嬉しい話なのではないか。
中国でさらなる成長を目指すことに(INTO1のメンバーとして活動)
今度は中国に拠点を移したMIKA。多国籍グループ「INTO1」での活動が始まった。「(INTERSECTIONとは)また違う形で、すべてがいい体験だった」と語るMIKA。「アイドル文化は初めてだったから、新たにダンスを覚えたことも、中国語の歌詞で歌ったことも大きな挑戦だった」と語る彼は、中国で改めて「さらに成長しなければならないと感じた」そうだ。
ソロ活動になった今も拠点が中国にあるため、「ダンスはしなくなったけど、中国語は今もずっと続けている」とのこと。「中国語を覚えるほどに日本語を忘れていく」と笑いながら、「でも日本語も喋ると思い出すね」と語った。(このインタビューでも英語と日本語を交えての形で行っている。)
INTO1での活動で、一番よかったこと/一番大変だったことは?
「一番よかったことも、一番大変だったことも、同じく厳格なスケジュールでの仕事」。そう明かしたMIKAの中国での日々は、「これまでに経験したこともないほどの忙しさ」だったという。「毎日色々な街を飛び回りながら、次々にダンスと中国語の歌を覚える。それを同時にこなしていたから全然眠れないこともあった」と過酷なスケジュールを振り返った彼だが、それでも「その日々が自分を成長させてくれた」と決して悪い思い出ではないことを強調していた。
INTO1メンバーのうち5人でひとつの家に住んでいたMIKA。当時「ルームメイトと一緒に暮らす」という経験も人生で初めてで、「仲間との毎日を楽しんだ」と教えてくれた。
ついにソロでのグローバルデビューへ
ついにソロデビューを果たした感想、意気込みは?
MIKA「今とてもハッピーだよ。グループでみんなの力を結集するのと、自身の創造性を活かして、自分で考えて作ってパフォーマンスするというのは全然違う。“僕の音楽”をみんなに披露できるようになって嬉しいよ」
MIKAの音楽がもっとも影響を受けた音楽は?
MIKAは現状、外の音楽からエッセンスを取り入れるよりも、「自分や、自分のギターから生まれるものを大切に」しているという。INTERSECTION時代の作曲経験も活かし、「メンバーと一緒に楽しく作曲するスタイル」を思い出しながら作曲に向き合ったようだ。
ただ中国で耳にした音楽は彼に影響を与えているという。MIKAは「中国ではバラードがすごく人気なんだ。エモーショナルに自分を表現できるバラードは僕のスタイルにもマッチしていたから、現地の“懐メロ”的な楽曲から最近のよりポップなものまで、中国の音楽をたくさん聴いて、さまざまなスタイルの影響を受けたと思う」と教えてくれた。
さらに、彼自身も好きで影響を受けた中国バラードの例として「永不失聯的愛(英題:Unbreakable Love)」という楽曲を教えてくれた。聞けばたしかに、MIKAのソロ楽曲に通ずるものを感じる。
12月リリースのEP「bleached」はどのように作られた?
MIKAの甘く優しい歌声が活きたEP「bleached」。収録楽曲は、2023年初め頃に一気に作られたという。MIKAは「ハワイ、東京、中国と過ごし、それぞれ異なるジャンルの音楽スタイル、プロセスを経験した自分の感情を、それぞれのスタイルで伝えてみたかった」と明かした。
活動拠点の変化を複数経験しているMIKAが今作に込めたコンセプトは「移住(migration)」。「bleached」、日本でいうところの「漂白」にあたるタイトルは、中国語でも「漂」という漢字で表すことができる。活動拠点を移した際の「まっさら」な感覚や、自身のトレードマークでもあるブリーチされた髪色を示す「漂白」の「漂」であると同時に、移住を繰り返し「漂流」し、「漂う(ただよう)」という意味の「漂」とのダブルミーニングにしているそうだ。
「bleached」の各トラックはどのようなコンセプトで作られた?
トラック1「stupid love」は、「東京で曲作りを始めた頃を思い出しながら、1本のギターと1つの声だけ使って、すべて自分自身でプロデュースした楽曲」だという。
トラック3「forever you」はMIKAが「ファンのために書いた楽曲」。「中国人が好きな、メロディの甘いポップスから影響を受けている」そうだ。トラック4「長いやつ」にも、中国のバラードの全般的要素が詰まっているという。
トラック2「melancholy song」トラック5「so I don’t forget」は、「すべてを経た上で、現在の僕が一番好きな種類の音楽。一歩進んで今後向かっていきたい音楽スタイルを示した曲になっている」と教えてくれたMIKA。「melancholy song」にはINTERSECTIONの活動を通して見つけた音楽の要素も入っているという。
2024年以降の予定・目標は?
「今年はまだたくさんプランがあるよ。中国でのツアーも続くしね。他の国にも行ってみたいと思ってる。もっと曲もリリースしたいし、いつかはアルバムもできたらいいな」と今後への意気込みを語るMIKA。彼はツアーをしながらでも並行して作曲を続けているそうだ。
次回のEP・アルバムについては「エモーショナルな世界観は貫きつつ、ヒップホップやR&Bも取り入れてよりグルーヴ感を感じられるような作品を作りたい」と語ってくれたMIKA。中国語の勉強も続ける多忙さの中だが、INTO1時代よりは「しっかり睡眠を取れている」と安心させてくれた。
最後に、このインタビューを読む方々にメッセージをお願いします。
MIKA「これまでのキャリアをずっと応援してくれているファンの皆さん、ありがとう。最近聞き始めてくれた人にも感謝の気持ちでいっぱいだよ。僕を愛して応援をしてくれる皆さん全員のおかげで僕のキャリアがあるし、自分の音楽を続けられると思ってるからね。みんながこれからも好きでいてくれると嬉しいな」
(インタビュー以上)
日本では「おしゃれな場所が好きだから、代官山でお茶をするのが好き」だというMIKA。インタビューでも終始にこやかで、朗らかな彼の人柄を感じられた。彼の活躍がさらにグローバルに広がっていくことに期待したい。
リリース情報
EP「bleached」絶賛配信中
ダウンロード&ストリーミング
MIKA(ミカ/米卡)プロフィール
ハワイのホノルルで生まれ育ったMIKAは、2016年に音楽活動を開始し、東京に拠点を移した後にボーイズ・グループ「INTERSECTION」に加入。
2018年にデビューした彼らは、西洋と東洋のポップサウンドを組み合わせたファースト・アルバム「INTERSECTION」を共同で作曲し、2019年にリリースした。
2021年に中国最大級のオーディション番組「創造営(CHUANG) 2021」に出演後、「So Sick by Ne-Yo」、「永不失連的愛 by Eric Chou」、「輸入法打可愛按第五」をリリースし、シルキーな美声が一躍話題となり、中国の音楽市場でのブレイクに成功した。
「輸入法打可愛按第五」は8億8,000万回以上の再生数を獲得し、全ての中国のトップチャートにランクイン。
また、 「創造営(CHUANG) 2021」の最終回では、ボーイズ・グループ「INTO1」の上位メンバーに選ばれ中国デビューを果たし、中国語と英語の両方で4枚のアルバムをリリース。
「INTO1」としての限られた2年間で、MIKAは「Beautiful」などのカバーやシングルもリリースし、複数のチャートで1位を獲得した。
様々な国、2つのボーイズグループを旅してきた5年間を経て、2023年、MIKAはついにソロ・アーティストとしてデビューした。
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。