2024年最大級のスケールで送る、あのSF超大作の2作目がやってくる。3月15日(金)、ついに『デューン 砂の惑星PART2』が公開となる。大ヒットを記録した映画『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)の続編で、三部作の中編となる1作だ。この記事では圧巻の最新作『デューン 砂の惑星PART2』をレビューする。
映画『デューン 砂の惑星PART2』レビュー
【予告編】映画『デューン 砂の惑星PART2』
『デューン 砂の惑星PART2』あらすじ
砂の惑星デューンをめぐるアトレイデス家とハルコンネン家の壮絶な宇宙戦争が勃発!
ハルコンネン家の策略により、アトレイデス家は全滅。しかし、最愛の父とすべてを失うも、後継者ポールは生きていた。 ポールは愛する砂漠の民チャニと心を通わせ、その絆は、彼を救世主としての運命に導いていく。
一方で、ハルコンネン家は宇宙を統べる皇帝と連携し、その力を増していく。
そして、遂に復讐の時。未来の希望を取り戻すため、ポールたちの全宇宙を巻き込む最終決戦が始まる。(公式サイトより)
『デューン 砂の惑星PART2』レビュー
圧巻! これぞ“映像体験”
前作に引き続き、『メッセージ』『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がメガホンを取り、音楽をハンス・ジマーが手がけた今作。今回もその圧倒的な世界観は変わらない。壮大に広がる砂漠を大画面で浴び、全身を震わせる音圧で「サンドワーム」の突進を文字通り“体感”できる、この“映像体験”は映画館ならでは。筆者はIMAX®︎レーザー上映で鑑賞したため、その“体験”感はよりいっそう強まった。今作はぜひ大画面で味わっていただきたい作品だ。
強まる物語性-宗教、正義、戦争-
前作である第1作は、たしかに圧倒的な世界観を持つ衝撃的な映画だった。しかし、物語の展開上、第1作は“主人公ポールの本当の戦いが始まるまでの序盤”に過ぎず、心に訴えかける物語性という部分においてはそこまでの深みはなかったように感じる。
そして今回の第2作。ついに本格的に始まったポールの試練。今作では、「DUNE」という作品の真髄たる“社会的・政治的・民俗学的な物語性”も足され、世界観だけでなく、重厚なストーリーにも浸れるようになっている。
救世主・リーダーとして崇められてしまう人間の苦難。何かに盲信する人々の狂気と、“信仰・宗教”の想像以上の力と危険性。荒れる世界の未来を裏で操るミステリアスな組織の不気味さ。それらに怒り、嘆いてもひとりでは何もできない民衆。つまり時代も世界観も完全なフィクションでありながら、我々の世界に通ずる構図によって“自分ごと”として共感しやすくなっているのが、この物語の秀逸なポイントだろう。
オースティン・バトラーの演技に戦慄
まず今作で注目していただきたいキャラクターは、<フェイド・ラウサ>。ハルコンネン家の世継ぎとして登場するフェイドは、ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)さえヒヤヒヤさせる“超問題児”だ。ほかのハルコンネン一族と変わらず配下の命を何とも思っていない残酷さ。それに加え、暴力や拷問に快楽さえ覚えている狂気。
今作におけるメインヴィランともいえる恐ろしいフェイド・ラウサを演じたのは、『エルヴィス』(2022)でエルヴィス・プレスリーを演じてアカデミー主演男優賞にもノミネートされたオースティン・バトラーだ。くぼんだ目元は青白いメイクで引き立ち、さらに眉毛も髪もない。そのビジュアルだけでも相当恐怖を煽るのだが、そんな彼が狂った笑顔を浮かべてカメラに近づいてくる。その際に身体を走る恐怖は、なんとも言葉にしがたい種類のものだった。
レア・セドゥとの相性も最高
彼の紹介パートともいえる“誕生日の決闘”シーンは、不気味にして何とも美しさも感じる印象的な一幕。<レディ・マーガレット・フェンリング>役で登場したレア・セドゥの妖艶でミステリアスなオーラも相まって、非常に劇的で芸術的にも見えるシーンとなっていた。
何者かに仕立てあげられていくポールの変化
そして主人公<ポール・アトレイデス>(ティモシー・シャラメ)。彼の運命は、今作でも大きく動いていくことになる。
彼自身は何者かになりたいわけではないのだが、母<レディ・ジェシカ>(レベッカ・ファーガソン)や、<スティルガー>(ハビエル・バルデム)をはじめとするフレメンたちが、彼の運命を強引に動かしたり、崇拝のあまり彼を救世主に仕立てようとしたりと働きかけることで、彼は徐々に変わっていく。
その変化の機微を見事に表現し、苦悩の中で徐々に周囲に見せる人格すら変わっていくポール役を演じきっているティモシー・シャラメ。彼が発する存在感には、さらに“重み”が出てきたように思える。最終作となる『PART3』でどのような演技を見せてくれるのか。今から期待が高まっている。
振り回されるチャニが観客を代弁
王族や世界を裏で操る魔女、狂気的な戦士などがひしめくこの物語。今作において、もっとも観客の目線に寄り添ってくれる存在がいる。それが、ゼンデイヤ演じる<チャニ>だ。
ポールと良い関係を紡いでいくチャニは、関係を紡ぐからこそポールの変化に振り回される。さらに彼女はもっとも現実主義者的な立ち位置におり、予言や信仰を盲信する人々の狂気にも疑問を投げかけている。
彼女のような「一般人寄り」のキャラクターが運命に感情を翻弄されることにより、観客もよりいっそうこの物語に感情移入しやすくなっており、今回のヒューマンドラマ面において非常に重要なキャラクターだった。
そのほか安定の豪華キャスト
そして、そのほか続投のジョシュ・ブローリンやステラン・スカルスガルド、デイヴ・バウティスタらもそれぞれが個性を発揮。さらに<イルーラン妃>を演じたフローレンス・ピューや、原作読者からすると「やはりこの役か」と納得なアニャ・テイラー=ジョイなども、出演時間がかなり短いものの、間違いない存在感で目を奪っていた。
レビューまとめ
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督とハンス・ジマーの音楽による圧倒的な世界観で文字通り“映像体験”ができる『デューン 砂の惑星PART2』では、原作の真髄たる“社会的・政治的・民俗学的な物語性”によって、重厚なストーリーも味わえる。狂気的なオースティン・バトラーの存在感や、妖艶なレア・セドゥも加えた豪華キャスト布陣に隙はなく、救世主に仕立てあげられていくポールを見事演じきるティモシー・シャラメと、観客目線を補完してくれるチャニ役のゼンデイヤが見せる絶妙な相性にも印象的。すでに3作目が楽しみでならない。
『デューン 砂の惑星PART2』は3月15日(金)より全国ロードショー。
作品情報
タイトル:『デューン 砂の惑星PART2』
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公開日:3月15日(金)全国公開 (3/8(金)、9(土)10(日)3日間限定先行上映)
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
撮影:グリーグ・フレイザー
脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ジョン・スペイツ、クレイグ・メイジン
出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイヴ・バウティスタ、ロバート・ロドリゲス、クリストファー・ウォーケン、スティーブン・ヘンダーソン、レア・セドゥ、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデム
公式X:@dunemovie_jp
映画公式サイト
#デューン2
IMAX(R)/4D/Dolby Cinema(R)(ドルビーシネマ)/ScreenX
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。