アル・パチーノが、アカデミー賞授賞式における作品賞の発表について声明を出した。
2024年のアカデミー賞授賞式において、最優秀作品賞を発表したアル・パチーノの発表方法が一部で物議を醸している。彼は、ゆっくり壇上に現れると、ほかの作品賞のノミネート作品を読み上げることなく、「作品賞ね…僕は封筒を開けなきゃいけないんだ。さあいくぞ」と突然封筒を開けた。そしてそのまま「私の目には『オッペンハイマー』と書いてあるのが見えるね」と言ったのだ。
I’m obsessed with the way Al Pacino announced Oppenheimer as Best Picture. couldn’t have been more chaotic or confusing lol
“Best Picture…uh, I have to go to the envelope for that. And I will. Here it comes. And my eyes see Oppenheimer?”#Oscars pic.twitter.com/a0hNQ4ZP7j
— Spencer Althouse (@SpencerAlthouse) March 11, 2024
これが“アカデミー作品賞の発表の瞬間”だったのだが、会場は一瞬「今のが発表なのだろうか」とも取れる静寂の後に歓声をあげて動き出した。
従来の発表では、ノミネートされた各作品を振り返るステップがあり、その後にプレゼンターが「そして、オスカーを受賞するのは…(And Oscar goes to…)」に続いて受賞者を発表するというのが一連の流れ。これと異なる今回の発表方法に、ソーシャルメディアでは「『処方箋を読み上げる医者のような作品賞の発表の仕方部門』オスカーは…アル・パチーノ」などと皮肉な批判も上がっており、この発表については論争が起きている。これに対しパチーノが声明を発表した。
「私が省略しようと意図したわけではありません」
パチーノは声明で「昨夜、私がアカデミー作品賞を発表する前に、すべての映画(ノミネート作品)の名前を挙げなかったことについて一部で論争が起きているようです」と論争について確認していることを説明。「はっきりさせたいのは、私がそれらを省略しようという意図ではなかったということです。むしろそれは、(授賞式の)プロデューサーの選択でした。それらの作品は授賞式全体をとおして個別にハイライトされていたため、再度言う必要がないとの判断です。私はあの夜の一部になれたことを光栄に思い、彼らが望むプレゼンテーション方法に従って作品賞を発表することを決めたんです」
続けてパチーノは「ノミネートされることは人々の人生における大きなマイルストーンであり、それが完全に認知されないことは不快で傷つくことだと、私は理解しています。私は映画製作者、俳優、プロデューサーと深く共感する者として、(ノミネート作品を読み上げるという行いの)見落としによって軽視された人々に深く共感します。そのため、この声明を発表する必要性を感じました」と述べました。
授賞式のプロデューサーも裏事情を説明、謝罪
アカデミー賞のプロデューサーであるモリー・マクネアニーもオスカー授賞式後のVarietyのインタビューで、「それはクリエイティブな決定だったんです」と説明した。
マクネアニーは「ショーの終盤になると、みなさんはすでに作品賞候補10作品に関するクリップ(動画)を見終えているはずです」と説明。「人々は単に誰が受賞したかを知りたがっており、番組終了を待っている状態です。少なくとも私たちはそう考えていました。なので、私たちは彼(パチーノ)にクリップ(の時間)を与えなかったんです。私たちは彼に読ませるノミネーションリストを渡しませんでした。全候補作を読み上げない方法にしたことで彼を困らせたなら、私がお詫びします」と謝罪の意思を口にした。
マクネアニーはまた、パチーノがお決まりの「And Oscar goes to…」を言わなかったことが「少し混乱を招いた」と振り返るも、「でも聞いてください、それが生放送の興奮です。何が起こるか正確に予想不可能なんです」と述べた。
ジミー・キンメルは皮肉なコメントをしていた
司会を務めたジミー・キンメルは、2024年の授賞式が終わった後、パチーノの発表のぎこちなさについて尋ねられて「恐らく彼は以前に授賞式を見たことがないんだろう。アメリカ中の誰もが『そしてオスカーは…』という発表の流れを知っているのに、アル・パチーノは知らなかったんだ!彼に神の祝福あれ」とジョークめいた回答を残している。
批判はパチーノがノミネート作品の名前をあげなかったことだけでなく、従来の流れに逆らった読み上げ方にも関連するため、これで物議がおさまるかは不明であるが、ノミネート作品を読み上げなかった理由は声明のとおりのようだ。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。