ジョージ・ミラー監督が『マッドマックス:フュリオサ』の配役について語った。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から9年。前日譚となる『マッドマックス:フュリオサ』が今年ついに公開となる。監督のジョージ・ミラーが、今作で過去のフュリオサをシャーリーズ・セロンの代わりにアニャ・テイラー=ジョイが演じたことについて語った。
“若返り”をしなかった理由
4年前、ミラーは“過去のフュリオサをシャーリーズ・セロンは演じない”と認めた。そしてその役目は後に、アニャ・テイラー=ジョイに託された。もちろん近年の映画ではデジタルによる“若返り”も時に行われている。しかし、ミラーはそのような技術は使わないことにした。
最近のEmpire誌でのインタビューで、ミラーはセロンから離れることは容易ではなかったとした上で、フュリオサの過去を演じさせるためにセロンに特集技術を施すことは選べなかったと説明した。
「時が経つにつれて、僕は『ああ、もしかしたら若返りを(セロンに)使えるかもしれないぞ』と考えるようになってきた。そして、アン・リーやマーティン・スコセッシといった名匠たちが『ジェミニマン』や『アイリッシュマン』を作ったのを観たら、うまくいっていないように見えたんだ。どれだけ技術がうまく機能しているか確認して、説得力がないと思ったんだ」。そうミラーはまだ“若返り”に説得力を持たせるのは難しいと判断したことを説明した。
【予告編】『マッドマックス:フュリオサ』
アニャ・テイラー=ジョイ配役のきっかけは?
そして、セロンに代わってフュリオサの過去を演じることになったテイラー=ジョイ。ミラーが彼女を選んだきっかけとは何だったのか。
それは、他の映画監督からの一押しだった。テイラー=ジョイをミラーに推薦したのは、『ラストナイト・イン・ソーホー』で彼女を主役に起用したエドガー・ライト監督だという。
ミラーは「彼(ライト)は言ったんだ。『もし彼女をキャスティングしようかと検討しているなら、何の企画であれ、起用すべきだよ!』ってね」と、当時のライト監督の猛プッシュを振り返った。
ミラーがテイラー=ジョイに見出した才覚
テイラー=ジョイはEmpire誌に、自身がなぜフュリオサに選ばれたのか当初理解していなかったと明かしている。
ミラーによれば、「最終的には、それは直感での選択だった。彼女には本質的に確固とした資質を備えている。彼女は強い意志と厳しさも持っている。さらに神秘的な部分もある。そして、彼女は幼い頃からバレエダンサーとしての訓練を積んでいる。シャーリーズ(・セロン)も幼い頃からバレエダンサーとして訓練を受けていたんだ。必要とされる精度がふたりにはあった」とのこと。人格だけでなく、バレエの経験という面でのふたりの共通点も重要だったようだ。
【予告編】『マッドマックス 怒りのデスロード』
テイラー=ジョイ「フュリオサを守りたいと思った」
テイラー=ジョイは役を得てから、セロンのアイコニックな演技を模倣せずにフュリオサを演じるという挑戦に直面した。彼女はEmpire誌に対して、今作での演技についてこう語っている。
「もし私が(セロンの演技を取り入れようと)したら、すごく混乱していたと思う。彼女はすごく寛大で優しく、私にそうしていいと言ってくれたんだけどね。ただ幸運なことに、脚本を読んだ瞬間から、私はこの人物(フュリオサ)を知っていたように感じたの。私は激しくフュリオサを守りたいと思ったし、彼女の重要性を守りたいと思った」。そうして役を感覚から理解し、守ろうとしたテイラー=ジョイが、彼女なりのフュリオサを完成させた。
若返り加工なし、演技の模倣なし。ジョージ・ミラー監督とアニャ・テイラー=ジョイが小細工なしで向き合ったフュリオサを目撃できる日が楽しみだ。
『マッドマックス:フュリオサ』は2024年5月24日に米公開。日本でも2024年内に公開予定。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。