安定感のあるホラーで安心(怖いけど)したい時。ただひたすら王道に楽しませて(怖いけど)ほしい時。ホラー映画ファンにはそんなタイミングもあるのではないか。そんな日に映画館で観たい最新作がやってきた。本日4月5日(金)公開映画『オーメン:ザ・ファースト』だ。
『オーメン:ザ・ファースト』レビュー
【予告編】『オーメン:ザ・ファースト』
『オーメン:ザ・ファースト』概要
6月6日午前6時に生まれた悪魔の子・ダミアンと、彼をとりまく人々の戦慄の連続死を描き、全世界を恐怖に包み込んだレジェンド・オブ・ホラー『オーメン』。その“はじまり”の物語が、“悪の誕生”に隠された真実を暴き出す。
ローマのある教会で、新たな人生を歩み始めたアメリカ人女性、マーガレット。だが彼女は、悪の化身を生み出そうとする恐るべき陰謀を知ってしまう…。“なぜダミアンは誕生したのか?”──その謎へとつながる真の恐怖への幕が開く…。
レビュー
これで正解!リスペクトのこもった王道宗教ホラー
教会と修道女(シスター)、孤児院、悪魔、不穏な数字“666”、謎めいた陰謀、讃美歌めいた音楽、ジャンプスケア、思った以上に過激な描写…“これぞ宗教ホラー”という大量の要素を洗練された作風に詰め込んだ、新たな王道ホラー映画が完成した。
逆に王道すぎて「今作ならでは」という部分は最近の他のホラーに比べると少ない印象ではあるが、歴史的名作を使用したのに奇を衒って失敗してしまう前例(『チャイルド・プレイ』のリメイク版、『エクソシスト 信じる者』など)を思い返せばこれで正解だと感じる。
オリジナル版へのリスペクトを感じさせる、じめじめと陰湿な空気感も嬉しいところ。冒頭の衝撃シーンでオマージュを捧げるなど、「久々の前日譚」ならではのファンへの目配せも忘れない。
悪魔コワ、だけど人コワ
強者から弱者への一方的な支配というのはいつの世もわかりやすく胸糞悪いもの。孤児院の運営サイドが高圧的に子どもたちを選別・監禁・支配する様子は陰謀云々に関係なく不快な気持ちにさせられ、主人公とのわかりやすい対立構図が確実に観客の感情移入を手伝ってくれる。
今作のメインはやはり「悪魔」ではあるが、しっかり「人怖(ヒトコワ)」といえる作風になっていて置いてけぼりにもならない。
作中で「近頃の若者は宗教の権威を重んじない」といったセリフがある。これは皮肉にも「悪魔(宗教の敵)だけでは今はあまり怖くない」というホラー映画の弱みにも刺さってしまっているのだが、「人怖」の部分でそこを堅実に補っている印象だ。
ジャンプスケアや、真っ暗な映画館だからこそしっかり観やすい暗い場面もあるため、ぜひ閉塞感と迫力を味わえる映画館での鑑賞をオススメしたい。
ネル・タイガー・フリーに注目!
主演のネル・タイガー・フリーの存在感も印象的。シスター姿の似合うその美貌は、『死霊館のシスター』シリーズのタイッサ・ファーミガとも肩を並べるシスターキャラクターを生み出した。困惑しながら環境に適応しようとする序盤から、使命感を持って陰謀に立ち向かう中盤以降まで、まさに主人公のオーラを纏った彼女が観客をスリリングな旅路に導いてくれる。
もちろんビル・ナイやラルフ・アイネソンといった風格あるベテランたちにも注目だ。
レビューまとめ
『オーメン:ザ・ファースト』は、「宗教ホラーといえば」を詰め込んだ由緒正しき王道ホラー。歴史的名作の雰囲気をリスペクトしているため<今作ならでは>が少ないという点はあるが、“悪魔だけでは物足りない”という現代の宗教ホラーの弱みは「人怖」によって堅実に補完されている。迫力と閉塞感が映画館での鑑賞に最適な今作にネル・タイガー・フリーの演技と美貌が今作に多大な魅力を加え、ビル・ナイらの風格が引き締めている。
『オーメン:ザ・ファースト』は本日4月5日(金)から日本公開。
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。