クリストファー・ノーランが『ダークナイト』を作るかどうか迷っていたことが判明。
ジョナサン・ノーランがポッドキャスト番組「アームチェア・エキスパート」に出演。兄のクリストファー・ノーランが当時『ダークナイト』(2008)を作るか迷っていたと明かした。
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「『バットマン ビギンズ』で僕らは一定の距離をおいて仕事をした。でも兄が僕の14歳の誕生日にくれた漫画が『バットマン:イヤーワン』なんだ」。そう振り返るジョナサン。彼は「10年後に彼と一緒に(バットマン始まりを描く)仕事をするとは…」「ものすごいことだよね」と振り返り、少年時代の思い出でもあるバットマンの物語に兄弟で携われたことにしみじみした様子だった。
続編を作るか迷っていたクリストファー・ノーラン
ジョナサンは「クリス(クリストファー)はもう1作撮るか迷っていたんだ」と明かす。「彼はスーパーヒーロー映画の監督にはなりなくなかったんだ」。そうジョナサンが明かしたとおり、クリストファーは『バットマン ビギンズ』の後にそのまま続編を作ることなく、一度『プレステージ』(2006)を挟んでいる。
ジョナサンによればクリストファーは、『バットマン ビギンズ』を「とても誇りを持っていた」というが、ジョナサンは“その先”を求めた。
「僕にとって(『バットマン ビギンズ』)はすばらしいスポーツカーを完成させたようなもので、『(それを使って)ドライブしよう。もう1本作りたくない?』って感じだったよ」と、ジョナサンはその1本ではもったいないと感じていたようだ。
ジョナサン必死の説得が『ダークナイト』へつながる
「我々は(バットマン)の起源の物語に1時間を費やした。それはよしとして、じゃあ『これを使って何ができるのか?』と考えたんだ」とジョナサンは当時を思い出す。「同じキャラクターを使って、少しだけジャンルを変えることができるか?雰囲気そのままに冒険映画から犯罪映画・大衆を描く映画に変えられるか?」というのが『ダークナイト』の検討プロセスだったそうだ。
「だから僕はチャールズ・ローヴェン(プロデューサー)とクリスと文字通り一緒に座って、『おい、ビビるなよ!やろうぜ!』って感じで伝えたんだ」とジョナサンは決死の説得を回想する。
「そして彼はデヴィッド・ゴイヤーと一緒に、僕の意見も少し聞きつつ脚本を書いた。当初の脚本では第1幕が詳細に、第2幕もある程度詳細に、第3幕では彼が最後にバイクで駆け去って…みたいな感じだったな。脚本が完成した時、僕は『これはすばらしいものになるぞ。楽しみだ。この映画を作らなければ』と思ったよ。そして最終的には彼も納得した。(スーパーヒーロー映画監督の)型にはまることは避けられたしね」
最終的には三部作に。
『ダークナイト』はマイケル・マン監督の『ヒート』などからも影響を受けた1作。アメコミ映画の中でも最も称賛された作品の1つだ。ノーラン兄弟は続編『ダークナイト ライジング』(2012)でも共同脚本を手がけた。
『ダークナイト』は名だたるクリストファー・ノーラン監督作品の中でも特に批評家・観客双方からの評価が高い傑作(Rotten Tomatoesは両方94%(24年4月10日時点))。ファンとしても弟ジョナサンの説得に心より感謝したい。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。