テイラー・スウィフト11枚目のフルアルバム「The Tortured Poets Department」および同アルバムに15曲を追加した「〜:The Anthology」が4月19日(金)にリリースされた。
今回はアルバムの中から16曲目「Clara Bow」(クララ・ボウ)に注目し、意訳・分析してみる。
テイラー・スウィフト「Clara Bow」リリック・ビデオ
テイラー・スウィフト「Clara Bow」意訳
“You look like Clara Bow
In this light, remarkable
All your life, did you know
You’d be picked like a rose?”
「君、クララ・ボウみたいだね。
この光の中でも目立っているよ。
知ってた?君のその人生が、
バラのように選ばれるものなんて。」
“I’m not trying to exaggerate
But I think I might die if it happened
Die if it happened to me
No one in my small town
Thought I’d see the lights of Manhattan”
「誇張するつもりはないけど
でももし本当になったら、私は死んでしまうかも。
死んでしまうよ、私にそんなことが起こったら。
私の小さな町の誰も、
私がマンハッタンの灯りを見るなんて思わなかった。」
“This town is fake, but you’re the real thing
Breath of fresh air through smoke rings
Take the glory, give everything
Promise to be dazzling”
「この町は偽物だけど、君は本物だ。
煙のリングを通して新鮮な空気を吸って。
栄光を手に入れるんだ、全てを与えよう。
輝く存在になると約束して。」
“You look like Stevie Nicks
In ’75, the hair and lips
Crowd goes wild at her fingertips
Half moonshine, a full еclipse”
「君、スティーヴィー・ニックスみたいだね。
‘75年の髪と唇。
彼女の指先が群衆は狂わされる。
月光の半分で、皆既日食も起こせる。」
“I’m not trying to exaggeratе
But I think I might die if I made it, die if I made it
No one in my small town thought I’d meet these suits in L.A.
They all wanna say…”
「誇張するつもりはないけど
でももし成功したら、私は死んでしまうかも。
死んでしまうよ、私が成功したら。
私の小さな町の誰も、
私がLAのスーツたちに会うなんて思わなかった。
みんな言いたがってるよ…」
“This town is fake, but you’re the real thing
Breath of fresh air through smoke rings
Take the glory, give everything
Promise to be dazzling
The crown is stained, but you’re the real queen
Flesh and blood amongst war machines
You’re the new god we’re worshipping
Promise to be dazzling”
「この町は偽物だけど、君は本物だ。
煙のリングを通して新鮮な空気を吸って。
栄光を手に入れるんだ、全てを与えよう。
輝く存在になると約束して。
王冠は汚れてるけど、君は真の女王。
戦争のための機械の中に、血と肉が息づく。
君こそ、我々が崇める新たな神。
輝く存在になると約束して。」
Beauty is a beast that roars down on all fours
Demanding more
Only when your girlish glow flickers just so
Do they let you know
It’s hell on earth to be heavenly
Them’s the breaks, they don’t come gently
美とは四つん這いで唸り声をあげる獣。
さらに上を要求する。
あなたがガーリッシュに輝き出したとき、
彼らはあなたに教えるよ。
天国にいるかのように地上で過ごすのは地獄。
受け入れるほかない、彼らの近づき方は穏やかではない。
“You look like Taylor Swift
In this light, we’re lovin’ it
You’ve got edge, she never did
The future’s bright, dazzling”
「君、テイラー・スウィフトみたいだね。
この光の中、気に入ったよ。
君には、彼女になかったエッジがある。
未来は輝かしいよ。きらめいている。」
曲名である「クララ・ボウ」とは、サイレント映画時代に活躍した大スターの名前。記念すべき第1回アカデミー作品賞を獲得した映画『つばさ』(1927)などに出演していた。
「私がピックアップしたのは、過去に偉業を成し遂げ、エンターテイメント業界における偉大さの象徴となった女性たち。クララ・ボウは最初のそれに値する人だった。スティーヴィー・ニックス(※)もアイコン的存在で、歌を書いたり音楽を作りたいと思っている人々にとっての偉大な前例だよ」と、ボウやニックスの名前を歌詞に盛り込んだ理由を説明したテイラー。
※スティーヴィー・ニックスはロックバンド「フリートウッド・マック」のボーカルとしても知られるアメリカの有名歌手。
この曲についてテイラーは、「長い間、私がいる業界で目にしてきたものについて語っている」と明かしている。「私が子どもの頃、私はよくレコード契約をしようとレーベルに行っていたの。その時彼らは『君は***(特定のアーティストの名前)を思い出させるよ』と言った。そして、その人に欠けていたところに言及して、『でも君はこんな点やあんな点で彼女より優れているね』と言ってきたよ。それこそが女性たちに自身について教える方法なんだよ。あなたは、過去に偉業を成し遂げたこの女性の新たな代わりになれるぞってね」と、テイラーは自身の経験を語った。
芸能人でなくとも、人を褒める際に別の誰かを貶してしまう言動は多々耳にする。「誰かより優れている」という抽象的な相対評価ではなく、「何が優れている」という具体的な絶対評価をしてほしいものだが、テイラーは相対評価に辟易する経験も重ねてきたようだ。
この曲における「褒め言葉」には具体性がない。「輝いている」「群衆を狂わせる」「選ばれる」など、外から目立つ・選ばれると言われているだけで、“なぜ選ばれるか”という本質的な褒め言葉が存在しないのだ。まるで、「選ばれる」ことが一番重要かのような扱い。これがテイラーの言う「女性たちに自身について教える方法」なのだろう。選ぶ男性・選ぶ権力者が前提の褒め言葉に対する皮肉が、この曲には込められている。
そして、過去に活躍した人物と比較し、相手を下げることで評価されてきたテイラーは、曲の最後に歌うように、“自分より後に出てくる誰かを褒めるために、今度は自分が引き合いに出されて貶されるのだろう”と想像して複雑な気持ちになっているようだ。
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。