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【映画レビュー『チャレンジャーズ』】「テニス」「恋愛」「会話」「音楽」すべてが主人公! ただのスポーツ映画におさまらない傑作を、圧倒的ヒロイン・ゼンデイヤが支配する

© 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.© 2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved. REVIEW
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本日6月7日(金)、ゼンデイヤ主演映画『チャレンジャーズ』が日本公開となった。『君の名前で僕を呼んで』『サスペリア』『ボーンズ アンド オール』といった作品で映画ファンの心を掴んできた奇才ルカ・グァダニーノ監督の最新作だ。試写で鑑賞した今作は非常にオリジナリティにあふれ、鑑賞後もしばらく心を掴んで離さなかった。

レビュー『チャレンジャーズ』

【予告編】『チャレンジャーズ』

『チャレンジャーズ』あらすじ

人気と実力を兼ね備えたタシ・ダンカン(ゼンデイヤ)は、絶対的な存在としてテニス界で大きな注目を集めていた。しかし、試合中の大怪我で、突如、選手生命が断たれてしまう――。選手としての未来を失ってしまったタシだったが、新たな生きがいを見出す。それは、彼女に惹かれ、虜となった親友同士の2人の男子テニスプレイヤーを愛すること。だが、その“愛”は、10年以上の長きに渡る彼女にとっての新たな<ゲーム>だった。はたして、彼女がたどり着く結末とは-。

「テニス」「恋愛」「対話」「音楽」すべてが主人公

時に「A=B、B=CならAは実質Cだね」といった“屁理屈ジョーク”を耳にするが、そのような文脈においては、たいていの場合「A=C」が正しくないことも多い。しかし、映画『チャレンジャーズ』においては、「テニス」「恋愛」「対話」「音楽」は屁理屈なしにすべてイコールで結ばれている。衝撃的な“圧”でそれを否が応でも体感させる作風が度肝を抜く。

人間同士の心の対話はテニスを通じても行われる(テニス=対話)。対話シーンでは通常の映画では例をみない音量で音楽が耳を震わせ、対話すらも音楽の一部と化す(対話=音楽)。もちろん恋愛関係を築き、壊すのはいつでも対話である(恋愛=対話)。そして主人公タシが主張するとおり、テニスは心の関係を表し、それは時に“恋”ですらある(テニス=恋愛)。もちろん恋愛が熱く燃え上がるシーンや壊れかけるシーンでは音楽が効果的に作用するし(恋愛=音楽)、テニスボールを打ち合うリズミカルな音の響きは音楽のようにテンポ良く耳を打ち、時にBGMもそれを助ける(テニス=音楽)。

すべての要素が綿密につながり、互いを補完・増強し合うストーリーテリングのスタイルがあまりに美しく、強烈で、物語だけでなくその“作り”に強く惹かれてしまった。

(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. (C)2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

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“ストイックに狂気的”なヒロインをゼンデイヤが熱演

もちろん、この映画の魅力の中心にいるのは、ポスターでも顔のアップが目を引くゼンデイヤ。今作は彼女の演技・存在感があってこその作品といえよう。狂気的なファム・ファタールを演じたゼンデイヤが、インパクトの強すぎる前述の諸要素の手綱を握り、『チャレンジャーズ』をアートかつ非常に人間的な1本の映画として昇華することが可能になっている。

また、彼女が演じるタシ・ダンカンという人物が極めて強烈なキャラクターである。彼女は強迫観念に駆られたように「楽しさ」と「勝利」を追い求める狂気的なストイックさを持っており、それに加えて女性としての魅力も兼ね備えているため、彼女に惚れ込んでしまえば周囲も彼女の狂気に巻き込まれていくことになる。

タシの中では恋愛とテニスが明確な因果関係で結ばれている。そのため、「楽しさ」「勝利」にストイックな彼女は、当然顔で恋愛関係を狂わせるような言葉を口にし、男性たちの競争心を煽り、テニスの試合を異次元の高みへと導いていく。

神と悪魔は紙一重。(恋愛関係においてもテニスコーチとしても)“ゲームマスター”であるタシが、“チャレンジャー”である男性ふたりの人間性も試合もすべてを掌握し、支配者でありながらも戦いの行方に関してはタシ本人もドキドキしながら見守る。当初は「なんだこいつ」と思われる類のヒロインにもかかわらず、気づけば我々も一緒になってその「高みへの喜び」を求めて身震いしてしまうのだ。

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振り回される男性ふたりにも注目!

そして、当然ゼンデイヤだけでなく、彼女の存在感にかすむことない印象を残したマイク・ファイスト(アート役)、ジョシュ・オコナー(パトリック役)にも注目したい。

強引で利己的、野心にあふれるパトリックと、物静かに見えるが嫉妬心が強く負けず嫌いなアート。大親友だったふたりがタシとの出会いで狂わされていく様子は見ていて非常に痛々しいのだが、“外から見るドロドロ恋愛ドラマ”はやはり素直に面白い。この恋愛リアリティショーのようなザワザワした感覚を得られるのは、キャラクターにあったふたりの風貌や演技力あってのものだろう。

3人それぞれが存在感と色気、狂気を見せつけたことで、今作は『天国の口、終りの楽園。』(2001)や『ドリーマーズ』(2003)にも負けない“女1:男2系映画の傑作”という境地に辿り着いた。

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グァダニーノ監督こそがタシ・ダンカン?

常人にたどり着けないストイックすぎるゆえの狂気の鍋に、恋愛とテニスを放り込んで煮込んだような『チャレンジャーズ』には、過去の監督作品同様、ルカ・グァダニーノ監督の並々ならぬ狂気的なこだわりを感じた。

楽しさを感じるために狂気的なストイックさで高みを目指し、高みにこそ喜びを得る。ゼンデイヤの演じたタシ・ダンカンの人間性は、まさにグァダニーノ監督の作品づくりへの姿勢を映した鏡のようなものではないか。これまでにも細部まで一瞬たりとも気を抜かないストーリーテリング、映像づくりを行ってきたグァダニーノ監督が、またもや我々を圧倒する作品を完成させた。

『チャレンジャーズ』は6月7日(金)より公開中。

作品情報

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タイトル:『チャレンジャーズ』
原題:『Challengers』
公開日:6月7日(金)
監督:ルカ・グァダニーノ(『君の名前で僕を呼んで』『ボーンズ アンド オール』)
出演者:ゼンデイヤ( 『スパイダーマン』シリーズ、『デューン 砂の惑星』シリーズ)、ジョシュ・オコナー(Netflix ドラマ シリーズ「ザ・クラウン」)、マイク・ファイスト(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
衣装:ジョナサン・アンダーソン
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.© 2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.
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#映画チャレンジャーズ

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