映画『メイ・ディセンバー ゆれる真実』より、劇中音楽をフィーチャーした本編映像が公開。
『キャロル』のトッド・ヘインズ最新作にして、ナタリー・ポートマン&ジュリアン・ムーアが豪華共演を果たした『メイ・ディセンバー ゆれる真実』が、7月12日(金)より日本全国公開となる。
実際の事件をもとにした衝撃作
『メイ・ディセンバー ゆれる真実』(原題:May December)は90年代に全米に大きな衝撃を与えた実際の事件「メイ・ディセンバー事件」からインスピレーションを受けており、13歳の少年と36歳の女性のスキャンダルの真相を、様々な角度から見つめる心理ドラマとなっている。今作は2023年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品、プレミア上映され話題をさらったほか、今年のアカデミー賞でも<脚本賞>にノミネートされていた。
『エデンより彼方に』『キャロル』などの映画で甘美な世界観と複雑に交錯する人間模様を映し出してきたトッド・ヘインズ監督が、オスカー俳優であるナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーアのふたりを迎え、過去と現在、真実と憶測が混ざり合う心理戦を描き出す今作。グレイシーとジョーの関係は犯罪だったのか純愛だったのか、はたまた他に真実があったのか…。
【動画】『メイ・ディセンバー ゆれる真実』本編映像
36歳の女性がアルバイト先で知り合った13歳の少年と情事に及び、逮捕されたという衝撃の事件。それだけでなく、女性は獄中でふたりの間にできた子を出産、出所後に夫婦になるという一連の騒動を起こした。彼女は当然メディアの恰好の的となり、このスキャンダルは連日全米を騒がせた。
それから23年後、この“メイ・ディセンバー事件”が映画化されることに。数えきれないメディア出演を経て話題になった夫婦が住む豪邸に、映画の主演俳優が足を運ぶシーンから物語は動き出す。
「礼儀正しい人だといいけれど」。妻・グレイシー(ジュリアン・ムーア)は、これから来訪予定の“ハリウッド女優”エリザベス(ナタリー・ポートマン)の態度を危惧しながら、おもてなしの準備を進める。そして彼女が冷蔵庫を開けると、突然仰々しい音楽が鳴り響き…。
有名な楽曲を編曲し、奇抜に使用!
この音楽は、ジョセフ・ロージーの映画『恋』(’71)より、ミシェル・ルグランの楽曲の一節を編曲したもの。グレイシーが冷蔵庫を確認し、「ホットドッグが足りないわ」とつぶやく何の変哲のないシーンにもかかわらず、今後の不穏な展開を予感させるような絶妙な空気感を醸し出している。
その日常的な場面とはあまりにミスマッチな音楽の使い方には、完成したシーンを観たジュリアン・ムーアも思わず笑ってしまったそうだ。トッド・ヘインズ監督は、シーンと音楽を絶妙なバランスで組み合わせ、笑いの要素を織り交ぜながら観客に違和感をもたせる。ここで感じるのは、今作の描く“固定観念の罠”を示唆するような不穏さだ。
名作曲家ミシェル・ルグランの有名なこの楽曲は、脚本を読んだ際すでにヘインズ監督の頭の中に浮かんでいたという。音楽を手掛けた作曲家マーセロ・ザーヴォスは、「トッドは、音楽がストー リーの流れに完全に従う必要はないと考えていたので、これまでの映画 音楽の慣習は無視されました」と説明。さらに「この映画の音楽は大胆不敵です。これほど効果的に音楽を使用している映画はほかに思いつきません。通常の映画音楽は、観客を作品に優しく引き込み、誘導するものですが、この作品の音楽は、観客の胸ぐらを掴んで極上の心理戦へと引きずり込むのです」と、今作の音楽における独特の手法を語っている。
ヘインズ監督は本作の映画音楽に対して「観客は殺人が起こるような犯罪ドラマを想像するかもしれない。そしてすぐにこの物語がどこに向かっていくのか、鋭い注意力で画面や演技を見つめることでしょう。音楽は、さらにその疑問を増幅させ続けますが、それはきっと楽しい映画体験になるはずです」と今作の音楽の魅力を説明している。
物語だけでなく、監督やキャストも虜にした音楽にもぜひご注目の上、作品をご堪能いただきたい。
『メイ・ディセンバー ゆれる真実』は7月12日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開。
作品情報
<STORY>
全米に衝撃を与えた、実在の“メイ・ディセンバー事件”。当時36歳だった女性グレイシーは、アルバイト先で知り合った13歳の少年と情事におよび実刑となった。少年との子供を獄中で出産し、刑期を終えてふたりは結婚。その後夫婦は平穏な日々を送っていたが、事件の映画化が決定し、女優のエリザベス(ナタリー・ポートマン)が、映画のモデルになったグレイシー(ジュリアン・ムーア)とジョー(チャールズ・メルトン)を訪ねる。彼らと行動を共にし、調査する中で見え隠れする、あの時の真相と、現在の秘められた感情。そこにある“歪み”はやがてエリザベスをも変えていく…。
≪よそ者であるエリザベスの憶測≫と≪当事者の意外な本心≫≪新たな証言≫すべてが絡み合い、観ている貴方の真実もゆらぎ始める。
監督:トッド・ヘインズ(『キャロル』)
脚本:サミー・バーチ
原案:サミー・バーチ、アレックス・メヒャニク
出演:ナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーア、チャールズ・メルトン
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2023年|アメリカ|カラー|アメリカンビスタ|5.1ch|英語|字幕翻訳:松浦美奈|原題:MAY DECEMBER|117分|R15+
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公式サイト
公式 X:@maydecember_jp
#メイ・ディセンバー
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。