ビリー・アイリッシュの来日イベント(AMEX POP-UP FAN EVENT)が行われた。
5月17日にニュー・アルバム「HIT ME HARD AND SOFT」(ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト)をリリースしたビリー・アイリッシュがプロモーションのために来日。成田空港で250名のファンに迎えられた6月19日に続き、20日には東京・原宿でトークイベントに参加した。
当イベントはアメリカン・エキスプレスのカード会員(*他社発行のカード会員は対象外)から抽選で当選した合計50名が参加した。
会場は、21日から23日に開催される「ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト」ポップアップストアの展開に備えてグッズも並んだBA-TSU ART GALLARY(原宿)。赤に細かい格子柄の入ったファッションで現れたビリーは拍手で迎えられ、ファンとの集合写真撮影の前に貴重なトークを聞かせてくれた。以下は司会者とビリーの会話となる。
まず会場に一言お願いします。
ビリー・アイリッシュ(以下、ビリー):みんなこんにちは!来てくれてありがとう。みんな大好き、すごくキュートだね!
よろしくお願いします。まず今回の「HIT ME HARD AND SOFT」はどのように作られましたか。
ビリー:制作には2年かかったんだ。2年前、ちょうど前回日本に来たくらいの時期にアルバムを作り始めたよ。大変な経験だったし、インスピレーションが湧く日も湧かない日もあったけど、兄(フィニアス)と一緒に作り続けて、ようやく完成させることができたよ。そして今ここにいられてる。最高だね。
完成してみて、どんなアルバムに仕上がったと感じますか。
ビリー:これまでで一番正直に自分をさらけ出したアルバムになったと思うよ。まさに私がどのように感じているかを感じてもらえると思う。ありのままを見せることは怖かったけどね。
過去の作品よりも自分をさらけ出したということですね。
ビリー:他の作品がさらけ出してなかったわけではないけど、今の自分自身の成長した姿を見せられたんじゃないかな。誰かの期待に沿うのではなく、とにかくやりたいことを追求しようと決めていたんだ。
これまでも誰かに迎合したり、誰かの期待通りの作品を作ろうとしたわけではないけど、やっぱり「こうした方がかっこいいかな」とか「みんなはこういうのが聞きたいのかな」とか考えていたんだよね。
でも今回は「気に入られなくてもこうしよう」と突き進んだ。自分を信じるのって難しいけど、その覚悟で作ったからこそ、自分のすべてを出しきれたと思う。
今作は大ヒットしていますが、世界からのリアクションについてはどう感じていますか。
ビリー:すごくいい気分だよ、もちろんね(笑)ここまでヒットするとは予想してなかったんだよ。いつもリアクションはもらってるけど、今回のファンの皆の反応は本当にすごくて、驚いたよ。みんなが気に入ってくれて、本当によかったよ
2年ぶりの日本でしたいことはありますか。
ビリー:(今回は)時間がないからなぁ(笑)。今日1軒のお店に行ったくらいだな…。次は仕事じゃなくて旅行で来て楽しみたいな。でも移動中に窓から見る景色だけでも本当に美しくて、ここにいられることに幸せは感じてるよ。日本には3,4回来ているけど、初めての時からずっと大好きな場所だよ。
その1軒の店というのは…?
ビリー:あはは、秘密にしておく(笑)
9月からツアーが始まりますね。
ビリー:すごく楽しみだよ。前回のツアーが終わったのが昨年の9月だからあまり間隔が開いていないけど、新曲を披露することになるから去年とは全く違うショーになるはず。すごく楽しみだな。
ライブで楽しみにしていることは何ですか。
ビリー:ステージの上でパフォーマンスするのが本当に大好きなんだ。観客、ファンの皆との繋がりや一体感を得られて、一番自分らしくいられる感覚を得られる。自由を強く感じるんだ。アーティストによっては「自分はここにいていいのだろうか」と悲観的になる人もいるみたいだけど、自分はそんなことないかな。ありのままでいられるスペシャルな時間だよ。
ビリーさんはいつもミュージック・ビデオの監督もされていますよね。「LUNCH」「CHIHIRO」のMVはいかがでしたか。
ビリー:最高だよ。もっともっと作りたいとは思うけど…。昨年の「What Was I Made for?」も前のアルバムのも好きだけど、今回の2曲は本当に今までで一番気に入ってるんだ。作れたことを誇りに思う。
それにすごく楽しかったよ。最高のチームが毎回集まってくれて、お互い信頼関係を築けている。彼らは私のやりたいことを本当に理解してくれているから、大変だったけどすごくやりがいを感じたよ。
「LUNCH」「CHIHIRO」のMVづくりはどういったところからインスパイアを受けましたか。
ビリー:「LUNCH」は、曲の通りのMVにするのは避けたんだ。自分が見て育ったような90年代風の可愛らしくてカラフルで楽しい映像を意識した。すごく気に入ってるよ。
「CHIHIRO」は曲を書いていた時に頭に浮かんでいたイメージをもとにしてる。私は野原をかけていて、誰かが追いかけてくるんだ。説明しづいらいけど、複雑で深い人間関係を描いたよ。
それから、これまでMVに友人に出演してもらうことはなかなかできなかったけど、今回は友人と共演できて、すごく安心感があったし、才能ある彼とビデオを作れて嬉しかったよ。
ここからはファンからの質問も入り混じりながらのQ&Aへ。
日本で一番の思い出は何ですか。
ビリー:日本の思い出はたくさんあるけど、初めて来たのは14歳の時。たぶんまだみんなは私を知らなかったと思うけど、私はその時から日本が大好きになっていたんだよ。
2018年にサマーソニックに出演した時は、日本のお客さんが親密さも感じさせながら敬意を持って聞いてくれて、日本人の音楽を聴く姿勢に感動したよ。
それから、昨日(6月19日)に空港でファンの皆が待っていてくれたことも一生忘れない。
クリエイティブなことをするときはどのようなものからインスパイアされていますか。
ビリー:インスピレーションは色々なところにあるよ。身の回りのあらゆるところにヒントはあるから、それに気づくように自分の感度を上げておくことが大切だと思う。感じ取ることができれば、それを活かせるはず。
曲作りにおいて自分がよくやる方法としては、まず座って、知っているコードを弾いてみる。アイデアがなくてもとにかくまずやってみるんだよ。そうしたらいずれ1つアイデアが浮かんで、「これもある、あれもある」と発展していく。そこから何か絶対に生まれていくんだ。あらゆるものからインスピレーションを受けるのが私の制作プロセスだね。
今回の「HIT ME HARD AND SOFT」もそういった形で制作されたのでしょうか。
ビリー:うん、そんな感じではあるね。今回のアルバムについても、特に色々なところからインスパイアされながら、無理矢理押し進める方法をとったりしたよ。何かを作り上げる時って人間関係と一緒で、いい時も悪い時もあるから、距離を置くしかない時もある。簡単にどんどんインスピレーションが湧く時もあれば、「ダメだ、私もう一生書けないんじゃないか」とまで感じることだってあるよ。でもとにかくめげずに突き進むんだよ。投げ出しそうになる瞬間は何度もあったけど、諦めなくてよかったと思う。
個人的に「CHIHIRO」が大好きです。聴けば聴くほど本当にすばらしい曲だと思います。「CHIHIRO」で曲調がどんどん変化していくのはどのように思いついたのでしょうか。
ビリー:質問者の方、ありがとう。私も本当に大好きな曲だよ。曲名は日本人の名前だし、私が大好きな映画『千と千尋の神隠し』の大好きなキャラクター、千尋にインスパイアされているんだ。歌詞は千尋の視点で書いたんだ。ハクに対する思いとかね。本当にあの映画が大好きなんだよ…。
うん、たしかにすごく変化のある曲だよね。でもあれは兄と一緒に作っていった結果、自然とできていったんだ。「よしここで変化、ここでまた変化…」という風にね。
そのように映画からインスピレーションを受けることはよくあることでしょうか。
ビリー:映画やテレビ、物語から作ることは兄も私も楽しくてよくやるんだけど、自分じゃないキャラクターになって作るというのがとても楽しいんだ。バービーとか、ジェームズ・ボンドもそうだよね(※)。作曲を始めた頃からやっているんだよ。
「CHIHIRO」に関しては『千と千尋の神隠し』を何度も観ていて物語の展開も知っているから、楽しいし描きやすかったよ。自分のことを書くことに比べても楽しいんだ。だって自分のことになるとまだこの先未来がどうなるかわからないし、すごく怖いからね。
※過去にビリーはジェームズ・ボンドが主人公の映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』に「No Time To Die」を、映画『バービー』に「What Was I Made for?」を提供している。
歴史上の人物や有名人など誰にでもなれるなら、誰になりたいですか。
ビリー:うーーーん…どうしようかな…困った(笑) あなたは?
あなたになりたいです!
ビリー:いやいや、ないって。私は思いつかないな…ママは?
母マギー氏(会場袖で見ていた):スーザン・B・アンソニー(※)かな。あはは(笑)
ビリー:スーザン・B・アンソニーだって。私は本当に思いつかないわ(笑)
ひとりの人間として生きるだけでも、自分が何者なのか解明するだけでも大変で頭が痛くなるのに、他の人の悩みまで背負えないでしょ?
※アメリカの公民権運動の指導者。女性参政権獲得のために活躍した。
最後に日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします!
ビリー:みんな本当に大好きだよ。いつも応援してくれてありがとう。今日も来てくれてありがとう。日本のみんなは誰よりも早く私を応援してくれた。最初に来た時からずっと応援してくれている日本のみんなのことは忘れないよ。
またくるのが待ちきれない!愛してるよ!
ビリー:(日本語で)ありがとう。
(トークセッション以上)
イベント情報
ビリー・アイリッシュ トークイベント in TOKYO
日時:2024年6月20日(木)
会場:BA-TSU ART GALLARY(東京都渋谷区神宮前5-11-5)
18:30 開場
18:45 Q&Aセッション
19:20-19:30 フォトセッション(集合写真)
同会場にて、6月21日(金)〜 6月23日(日)の3日間、ポップアップストアも開催される。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。