『クワイエット・プレイス:DAY 1』のマイケル・サルノスキ監督が、猫の撮影について語った。
※この記事には『クワイエット・プレイス:DAY 1』のネタバレがあります。
ハリウッド・リポーター誌に、『クワイエット・プレイス:DAY 1』の監督であるマイケル・サルノスキ監督が登場。今作における猫のフロド役にフィーチャーしたインタビューに応じた。人気ホラーシリーズの前日譚である『クワイエット・プレイス:DAY 1』は、映画レビューサイト「ロッテントマト」でも批評家から84%の支持を得るなど大好評。日本でも6月28日(金)から上映され、話題となっている。
今作では、ルピタ・ニョンゴ(「ブラックパンサー」シリーズ)が演じるサミラやジョセフ・クイン(「ストレンジャー・シングス」)が演じるエリックのほか、サミラが連れている猫のフロドもメインキャラクターとして活躍。聴覚が鋭く音を立てると襲いかかってくる地球外生命体がはびこるニューヨークで、人間たちと共にサバイバルの冒険をすることになる。
フロドとサミラの出会い、“本物”へのこだわり
サルノスキはフロドについての裏設定を明かしている。「以前サミラが街に住んでいた時、賢い野良猫だったフロドに彼女はミルクを出すようになり、そのままペットになったんだ。街を離れるサミラが唯一連れて行ったのがフロド。フロドは彼女の“かつての人生”の象徴なんだよ。彼らは街に一緒に戻り、街を一緒に再体験する。サミラが小さな猫を連れて荒廃したニューヨークを歩く姿が浮かんだ時、パーフェクトだと感じたんだ」
当初スタジオは猫についてのアイデアを聞き、「OK、CGの猫を使うってことだね。いけると思うよ」と反応したそうだ。しかし、サルノスキにCGを使う意図はなかった。猫は犬に比べても、監督の思うように演じてもらうのが難しい動物だが、それでも彼は本物の猫にこだわり、ニコとシュニッツェルという2匹の猫にフロド役を託したのだ。サルノスキは「幸運にも、すばらしいキャット・トレーナーたちとすばらしいパフォーマーたちのおかげで成功できたよ。みんなは古臭い撮影方法ではうまくいかないと考えたようだが、うまくいって本当に嬉しい」と満足気だ。
主演ルピタ・ニョンゴ、猫への恐怖心を克服!
サルノスキにとって、ニューヨークを舞台にした今作に猫が登場するのは当然のコンセプトだったようだ。「猫はニューヨークの街と強く結びついている。街の野良猫、ボデガ(※)の猫、街に感じるサバイバル本能…」と、猫とニューヨークの切っても切り離せないイメージを語るサルノスキ。彼は「犬では『クワイエット・プレイス』の世界を生き抜けないと思うんだ。彼らは吠えすぎるからね。忍び寄る捕食者である猫は、生まれつき静か。だから猫が生き延びているのは理にかなっているよ」と、犬ではなく猫である理由も説明している。
※主にヒスパニック系が営む酒屋。
さらにサルノスキは「猫はサミラの気分や感覚を補完する存在だ。猫には少し冷淡なところもあるけど、親しくなると実はとてもスウィートですばらしい存在になり得る。猫は完璧にマッチする存在だと思ったんだ」と続けた。しかし、ひとつ問題があった。それは、主演のルピタ・ニョンゴが猫を苦手だったことだ。
「ルピタは本当に猫を怖がっていたね。彼女はただ『猫が好きじゃない』のではなく、本当に恐れていたんだ。初期のミーティングで、彼女は私のオフィスの床に座り、猫に少しずつ近づいていった。最終的に彼女は猫を撫でたり抱き上げたりできるようになったよ。今では彼女自身もペットの猫を飼っている。彼女がどれだけ勇敢で、この役にどれだけコミットしてくれたかがわかるよね」と語るサルノスキ。ニョンゴの努力へのリスペクトを示した。
フロドが死なないことは当初から決まっていた
インタビュアーから「猫が生き延びないバージョンはあったか」と尋ねられたサルノスキは、それをきっぱり否定している。
「ないよ。常に猫が生き延びるという前提でことが進んでいた。動物を殺す場合、そこに本当に意味のある理由がなければならない。そうでなければ、ただ観客に対して残酷なだけだろう。フロドは今作のキャラクターたちにとって重要な存在。彼を殺したら、それはただの意地悪だと思ったんだ」と、今作でフロドが死ぬ理由はなかったそうだ。
苦労したシーン、やめたシーンについて
猫の撮影で最も難しかったことは、「水に関するシーンだった」そうだ。
水のシーンについて彼は「彼を浮揚装置に乗せ、急流の近くに置くのは大変だったよ。彼は水を恐れているのに、時々逃げようと水に飛び込もうとしたんだ。多くのシーンで重要だったのは、ジョー(ジョセフ・クイン)とルピタ(・ニョンゴ)がフロドを演じた猫たちと本当の絆を築くことだった。ジョーとルピタがいるとき、猫たちはリラックスして安全だと感じられるようになったんだ。『大丈夫だよ、水に放り込まれるわけじゃないからね』とわかってもらうために、猫たちがリラックスして安全だと感じる時間を取ることが重要だったんだ。とはいえやっぱり、猫は水が嫌いみたいだね」と苦労を振り返った。
さらに、脚本にはあったが、CGを使わないことによって実現しなかったシーンもあるという。
「オリジナル脚本では、フロドが背中を丸めて威嚇するシーンを想定していたんだ。でも、早い段階で動物トレーナーからそれは不可能だと教わった。猫にその仕草を教える方法がないんだ。威嚇したり背中を丸めるのは、猫が恐怖を感じたりトラウマを受けたときに自然に生じる反応だ。猫をトラウマにさらすことはしないよ。昔は映画やテレビで猫を怖がらせたり、苦しめたりしてその反応を引き出していたけど、今では幸運なことにそんなことはしない。猫に威嚇させたいなら、口をCGで編集する必要があるんだ。だから、そのシーンの代わりに、他の方法で恐怖や不安を表現することにしたよ」。そうサルノスキは説明、あくまで猫に心地よい撮影が行われたことを強調した。
今後の作品でフロドは登場するのか?
さらに、生き延びたエリックとフロドのその先について尋ねられたサルノスキは「そうだな、かなりの人数が『クワイエット・プレイス 破られた沈黙」(シリーズ2作目)の島にたどり着いた可能性が高いよね。彼らがそこにいる可能性も十分にあるし、彼らの再登場の可能性も十分にあると思う」と、エリックとフロドの再登場を期待させた。
「僕を最も不安にさせるものは、僕を最も興奮させるものでもある」と語る、サルノスキ監督。彼は猫の撮影について「不安だったよ、でも不安でいたかったんだ。うまくいくかわからないアイデアが欲しかった。すべてに安心感があったら、その安心感は観客にも伝わってしまう。僕もそれはつまらないと思うよ」と語っている。
チャレンジャー精神と強いこだわりを持ち、観客に寄り添った作品を提供するマイケル・サルノスキ監督の意志は、映画に強く反映されていたように思う。
『クワイエット・プレイス:DAY 1』は6月28日(金)より公開中。
作品情報
エグゼクティブプロデューサー:アリソン・シーガー、ヴィッキー・ディー・ロック
プロデューサー:マイケル・ベイ、アンドリュー・フォーム、p.g.a.、ブラッド・フラー、ジョン・クラシンスキー
キャラクター創造:ブライアン・ウッズ、スコット・ベック
ストーリー:ジョン・クラシンスキー、マイケル・サルノスキ
監督・脚本:マイケル・サルノスキ
キャスト:ルピタ・ニョンゴ、ジョセフ・クイン、アレックス・ウルフ、ジャイモン・フンスー
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#クワイエット・プレイス
#即死度MAXのDAY1
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。