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【映画レビュー『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』】想像膨らむ陰謀論コメディ × 偉大な一歩を目指した人々へリスペクトを捧げるドラマ-色々な意味で“面白い”お仕事映画が誕生【月面着陸映像はリアル? フェイク?】

REVIEW

世界を斜めから見た陰謀論を、さらに斜めから見て面白おかしく描く映画は楽しい。アンドリュー・ガーフィールド演じる主人公が根拠のない陰謀を求めて奔走する『アンダー・ザ・シルバーレイク』や、極論は月の裏側にナチスの基地ができているという『アイアン・スカイ』まで、“もしかしたら”を膨らませる映画はロマンとバカバカしさの両方をバランスよく味わえるのが魅力だ。そんな“陰謀論コメディ”最新作であり、ドラマ的な魅力にもあふれた最新作が、「月面着陸のフェイク映像計画」を描いた『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』。本作は明日7月19日(金)ついに公開となる。

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』レビュー

【予告編】『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』あらすじ

世界中が見守るテレビ生中継で35億人が目撃したのは、リアルか“フェイク”か――。

1969年、アメリカ。ケネディ大統領が宣言した<人類初の月面着陸を成功させる国家的宇宙プロジェクト=アポロ計画>がスタートして8年――。人類の大きな<夢>は未だ成功ならず、米ソ宇宙開発競争で後れを取る中、失敗続きのNASAに対して国民の<月>への関心は薄れ、予算は膨らむ一方。

この悲惨な状況をなんとかしようと、ニクソン大統領に仕える政府関係者モー(ウディ・ハレルソン)を通してNASAに雇われたのは、PRマーケティングのプロ、ケリー(スカーレット・ヨハンソン)。このプロジェクトを全世界にアピールするためなら手段を選ばないケリーは、アポロ11号の宇宙飛行士たちを「ビートルズ以上に有名にする!」と意気込み、月面着陸に携わるNASAスタッフにそっくりな役者たちをテレビやメディアに登場させ、“偽”のイメージ戦略を仕掛けていく。

そんな彼女に対し、実直で真面目なNASAの発射責任者コール(チャニング・テイタム)は反発するが、やり手のケリーは 聞く耳を持たず、コールの代役まで雇ってしまう始末…。しかし、ケリーの見事なPR作戦により、月面着陸は全世界注目の話題となり、盛り上がりはピークに。そんな時、モーからケリーにある衝撃的なミッションが告げられる――!

レビュー本文

陰謀論コメディ × 胸熱な努力のドラマ

「人類初の月面着陸の裏で“フェイク映像計画”が進行していたら…?」というコンセプトは無限の想像が膨らみ、半信半疑で陰謀論を楽しむ時のスリルを思い出させてくれる。皮肉と興奮の詰まったコメディ・パートは勢いがあり、キャラクターたちの思想の噛み合わない会話や行動に何度も笑わせてもらえる。コメディ要素は間違いなく今作の大きな魅力だ。

しかし本作の魅力は皮肉やコメディだけではない。NASA全面協力のもとで描かれたのは、当時のNASAや人々が偉大な一歩にかけた情熱や真摯な努力だ。その努力にリスペクトを捧げ、彼らを讃える胸熱なドラマにはまっすぐ感動させられ、ただ歴史の裏側を想像だけで茶化すようなコメディ作品にはなっていない。だからこそNASAは“全面協力”を行ったともいえるだろう。

PR担当、政府関係者、そしてNASAの当事者という三者三様の立場から見た必死の努力を描く今作は、コメディ映画でありながら、“お仕事映画”としても味わい深く仕上がっている。

ヨハンソン × テイタム × ハレルソン、配役ぴったりの化学反応

クセはあるが芯の通ったPR担当ケリーを演じたスカーレット・ヨハンソンのカメレオンぶりは、突飛な発想と異様な行動力を勢いよく突き進めるケリーというコミカルな役に説得力を持たせた。

真剣なロードムービーからシュールな冒険家まで幅広く演じるチャニング・テイタムは、今作では真面目で熱いロケット発射担当者コール役。“真剣な顔で真面目な役をこなすと、すごく仕事ができる人間に見える”という彼の王道ビジュアルの強さを体感させられた。

そして、倫理に反いた行為に頼ってでも“成功”を最優先させる野心と狡猾さを持ち、人々に静かな圧力をかけるモー役にはウディ・ハレルソン。表情は笑顔なのに恐ろしい圧力を感じるモーのオーラには、ハレルソンの表情・声のコントロール力を強く感じさせられた。

そんなメインキャスト3名のそれぞれぴったりはまった配役が見事な化学反応を起こし、どの会話パートも魅力的なものとなっている。

さらにさまざまな要素で楽しめる大満足の1作

さらには、幻想的な色合いの夜空をバックにディズニー映画『アラジン』(’92)を彷彿とさせるような美しくロマンチックなシーンを提供したり、可愛くもコントロールの効かない動物要素で観客をほっこり笑わせたりと、ストーリーの本筋以外の部分でもさまざまな要素にあふれていて飽きさせない。

コンセプトにワクワクし、まさかの展開に笑い、大ピンチにヒヤヒヤし、ときにロマンチックに胸をときめかせ、鑑賞後は“Interesiting”な意味でも“Funny”な意味でも心から「面白かった」と満足感に浸れる。魅力があふれるまさに“楽しい映画”だった。

全世界が目撃したアポロ11号の月面着陸は果たして、リアルか、フェイクか―。『フライ・ミー・トゥ・ ザ・ムーン』 は7月19日(金)より全国の映画館にて公開。

作品情報

タイトル:『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』
原題:FLY ME TO THE MOON
日本公開:7月19日(金)より全国の映画館で公開
US公開:2024年7月12日
監督:グレッグ・バーランティ(『フリー・ガイ』製作)
出演:スカーレット・ヨハンソン、チャニング・テイタム、ウディ・ハレルソン

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