ディズニー&ピクサーによる、あの感動作が“成長”して帰ってくる。8月1日(木)から、『インサイド・ヘッド2』が公開。すでに全米で大ヒット、世界歴代アニメ映画No.1のオープニングを飾るなど話題騒然で大絶賛も集まる今作が、ついに日本にもやってくる。
映画レビュー『インサイド・ヘッド2』
【予告編】『インサイド・ヘッド2』
『インサイド・ヘッド2』あらすじ
少女ライリーを子どもの頃から見守ってきた頭の中の感情・ヨロコビたち。ある日、高校入学という人生の転機を控えたライリーの中に、シンパイ率いる<大人の感情>たちが現れる。
「ライリーの将来のために、あなたたちはもう必要ない」-シンパイたちの暴走により、追放されるヨロコビたち。巻き起こる“感情の嵐”の中で自分らしさを失っていくライリーを救うカギは、広大な世界の奥底に眠る“ある記憶”に隠されていた…。
レビュー本文
“大人の感情”だけに取り憑かれた自分は、本当に自分?
喜怒哀楽を表に出すことを恥じ、それらを抑圧してアンニュイに振る舞うことが“クール”とし、ステレオタイプな幸せの形に憧れ、自分の立場と未来が少しでもそこに近づくよう打算的に動くようになり…。多くの人が通るであろう思春期の1ページだけど、このように行動する自分は本当に“自分”だろうか。
今作では、「シンパイ」「ハズカシ」「イイナー」「ダリィ」という新たな4人のキャラクターが、主人公ライリーの脳内に現れる。これらは“大人の感情”であり、思春期に差し掛かったライリーに生まれた新たな感情だ。起きるかもしれない未来を“シンパイ”し、失敗を“ハズカシ”がることが、人を危険から守ってくれる。優れた他人や有名人を見て“イイナー”と憧れる気持ちが人を成長させる。面倒なことをある程度“ダリィ”と避けることで自分の時間や労力をキープし、自分を優先させることができる。
どれをとっても不要な感情などなく、むしろ必要な感情であることは間違いない。しかし、それら“大人ならではの感情”だけを暴走させた時、そこに残るのはもはや純粋な自分の思いではないのではないか。打算とプライドだけこじらせ、喜びや悲しみといった純粋な感情を分かち合えない人間は、人間らしさを失っていくのではないだろうか。これは多くの人が成長しながら、どこかでぶつかりかねない試練だ。
自分らしさって何?
さらに、人は自分に都合の悪い事実や、マイナス感情を伴う記憶に向き合うことを嫌う。しかし、自分に都合の良い記憶や、他人にクールだと思われる側面だけを“自分”だと認識していていいものだろうか。“自分らしさ”とは何だろうか。今作の物語のテーマは、強がり、クールぶり、本音よりも「どう見られたいか」で生きがちな学生や大人には強く刺さるだろう。
『インサイド・ヘッド2』は、前作に続き、人間誰もが陥りがちな葛藤や苦悩をわかりやすく独創的な設定で描ききり、ありのままの自分を受け入れ、愛することを教えてくれる。どんな人間も苦悩のひとつやふたつは抱えているものだが、どんな悩みを抱えていても、きっとそんな自分を受け入れ、愛そうという気持ちになれるはずだ。
前作で「幼少期の記憶」「夢」「性格の形成」「突然脳内再生されるCMソング」などが描かれたように、このシリーズの魅力は感情だけではなく、脳で起きるさまざまな現象を独特の世界観で描いてくれる点だ。感情以外の新キャラも含め、キャラクターデザインも非常にキャッチーで可愛くわかりやすいし、新たに出てくる脳内のシステムの数々もそれぞれが心をくすぐった。
それらをワクワクする映像と美しい音楽で温かく包む、ディズニー&ピクサー最新の傑作『インサイド・ヘッド2』は8月1日(木)公開。どんな人にも、ぜひ観てみていただきたい。
作品情報
監督:ケルシー・マン(『モンスターズ・ユニバーシティ』、『2分の1の魔法』)
制作:マーク・ニールセン(『トイ・ストーリー4』)
日本語版声優:大竹しのぶ(カナシミ)、多部未華子(シンパイ)、横溝菜帆(ライリー)、村上(マヂカルラブリ―)(ハズカシ)、小清水亜美(ヨロコビ)、小松由佳(ムカムカ)、落合弘治(ビビリ)浦山迅(イカリ)、花澤香菜(イイナー)、坂本真綾(ダリィ)、武内駿輔(ブルーフィー)、花江夏樹(ポーチー)、中村悠一(ランス)
日本版エンドソング:「プレゼント」Performed by SEKAI NO OWARI
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。