ケイリー・スピーニーが、ソフィア・コッポラとの初仕事は、制作中止となった「人魚姫(リトル・マーメイド)」映画だったと語った。
『プリシラ』『エイリアン:ロムルス』『シビル・ウォー アメリカ最後の日』と勢いの止まらない俳優ケイリー・スピーニーがEmpire誌のインタビューに登場、制作中止となったソフィア・コッポラ版「人魚姫(リトル・マーメイド)」に自身が関わるかもしれなかったことを語った。
企画の頓挫した人魚映画
「私が初めてのオーディションに参加したのは、ソフィアを通じてのことだったよ」と明かしたケイリー・スピーニー。「それはコッポラ版の『リトル・マーメイド』だったけど、結局作られなかった。私はセリフなしで人魚を演じるという、ちょっと奇妙なセルフテープを送ったの」とスピーニーは当時のことを回想している。
スピーニーによれば、その「人魚姫(リトル・マーメイド)」の映画はソフィア・コッポラらしいと「非常に奇妙で前衛的」なものだったそうだ。
2014年、コッポラはユニバーサルおよびワーキング・タイトルと共同で、ディズニーなどのバージョンとは対照的に「はるかにダークな」オリジナルの童話に基づいた実写版『リトル・マーメイド』を開発していたが、このプロジェクトはスタジオの幹部が“大人の男性にアピールできるのか”と疑問を投げかけたことで頓挫した。
「ええ、たしかにそれが決定打だったよ。会議室にいたら、ある開発担当者が『この映画は35歳の男性をどうやって観客に引き込むんだ?』と言ったの」「私は何も言えなかったよ。完全に場違いだと感じた」とコッポラは後に語っている。
ケイリー・スピーニーとソフィア・コッポラのその後
2017年にもスピーニーはコッポラに再び接触している。ニコール・キッドマン、キルスティン・ダンスト、コリン・ファレル、エル・ファニングらが最終的に出演した映画『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』のオーディションを、スピーニーも受けていたのだ。
「それもうまくいかなかった」「すごくショックだったよ」とオーディションがうまくいかなかった当時を振り返ったスピーニーは、「ソフィアは私が若い頃から特に注目していた監督で、特に聖書地帯(バイブルベルト)で育った私にとっては特別な存在だった」とコッポラへの思いを明かす。
「彼女の作品には何か解放的なものがあって、私が育った地域ではあまり語られなかった若い女性についてのテーマがあったの。彼女は若い少女たちを真剣に扱ってくれた。それが私にとって個人的なレベルで非常に響いたんだ」と、コッポラの映画作品はスピーニー個人にとって大切なものであるようだ。
しかし、これらの経験を通じて、スパイニーは『プリシラ』(’23)でプリシラ・プレスリー役を獲得。エルヴィス・プレスリー役のジェイコブ・エロルディとともに見事な化学反応を見せた。
プリシラ役獲得の裏にはキルスティン・ダンストの存在が?
「(ソフィア・コッポラが)ニューヨークで会いたいと言ってくれたの。私たちは一緒にコーヒーを飲んだよ。すると彼女はiPadを取り出して、私にプリシラ・プレスリーの写真を見せ始めたの」とスピーニーは振り返った。
スピーニーがその電話を受けたのは、キルスティン・ダンストと共に『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を撮影していた時のこと。ダンストといえば、ソフィア・コッポラ監督作品に複数回出演していることでおなじみだ。
「(キルスティン・ダンストが)私を観察して、私についての所見を考えていたんだと思う」「彼女がソフィアに何と伝えたのかは分からないけど、何かを言ってくれたんだと思う。『シビル・ウォー』の撮影が終わる頃には、プリシラ役を獲得したと知らされていたよ」
実際にダンストは、コッポラの撮影現場に順応する方法について、スピーニーにいくつかのアドバイスをしてくれたという。
恐ろしい表現やディストピア的な世界観での演技が必要だった『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の後に撮影することになった『プリシラ』について、ダンストは「『プリシラ』は(『シビル・ウォー』とは正反対になるはずだよ。落ち着いてのんびりした雰囲気の撮影になる。ソフィアが音楽をかける中、バスタブで悲しんだりね。最高の時間になるよ」とスピーニーを激励し、スピーニーは「実際にその通りになった」と喜んだそうだ。
ケイリー・スピーニー出演作『エイリアン:ロムルス』は9月6日、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は10月4日に日本公開。さらにスピーニーはNetflixの「ビーフ」シーズン2にも出演予定だ。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。