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【映画レビュー『モンキーマン』】怒りの込もった豪快なバイオレンス・アクションが感情を震わせる! 現実世界を舞台にした神話・英雄譚が、“大衆の怒り”を派手に代弁する

©2024 Universal Studios. All Rights Reserved. FILMS/TV SERIES
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今年トップクラスのバイオレンス・アクションに滾れ!『モンキーマン』が8月23日(金)より日本公開となった。今作はデヴ・パテル(『LION ライオン 25年目のただいま』『ホテル・ムンバイ』主演)が主演だけでなく監督・脚本も務めた意欲作だ。

『モンキーマン』レビュー

『モンキーマン』予告編

あらすじ

たった一つの小さな残り火が、すべてを燃やし尽くす。幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われた<キッド>は、夜な夜な開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、<モンキーマン>を名乗る“殴られ屋”として生計を立てていた。
どん底で苦しみながら生きてきた彼だったが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然にも見つけるー。何年も押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的はただ一つ「ヤツらを殺す」。
【復讐の化神<モンキーマン>】となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける!(公式より引用)

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レビュー本文

「猿(モンキー)」という表現は、時に他人を侮辱する際にも使われる。野蛮で知性に欠ける、卑しい人物というような文脈、“人間に足らない存在”といった意味合いで人間は「猿」を引き合いに出す。しかし、インド神話において、猿の姿をしたハヌマーンは神であり、英雄でもある。「西遊記」の孫悟空から「ONE PIECE」のモンキー・D・ルフィに至るまで、猿の神ハヌマーンをモデルとした英雄は多い。

今作の主人公は、大衆に媚びへつらわなければならない、立場の弱い貧民だ。金や権力を持つ強者からは薄汚れた猿のような扱いを受けている。実際に猿のマスクを被り、地下の格闘場で殴られ役を担い、“汚い金”を手にしている。しかし、彼はただ権力者に媚びへつらっているわけではない。その瞳には常に復讐の炎が燃え、長年の目的のためにひたすら苦難を耐えているのだ。今作冒頭から言及されるハヌマーンを、彼自身のヒーローとして心に据え、時を待っている。

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今作の舞台は現代のリアルな社会。ジャンルは泥臭くて生々しいバイオレンスアクションである。しかし今作は間違いなく、大衆がすがる光のような物語=“神話”であり、“英雄譚”だ。映画はいつでも弱者の味方である。今作はわかりやすく弱者の反逆精神と怒りをスクリーンに映し、大衆にエネルギーと爽快感をもたらすスペクタクルとして完成されていた。

アクションシーンもただ暴れ回っているだけではない。終盤のアクションなどは、格闘だけで涙腺が緩んだ。まさに一挙手一投足に怒りや昂る感情が込められた“感情の乗ったアクションシーン”が完成していた。ドラマチックに観客の感情をも振り回し、それでいて動き自体も非常にスピーディかつスタイリッシュなアクションシーンは今作の最高到達点としてカタルシスをもたらした。

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このような感情面でも映像面でも完成度の高い衝撃作で、監督・脚本・主演を1人でこなしてしまうデヴ・パテルの才能には改めて感嘆させられ、演技だけでない今後の活躍に期待せずにはいられない。

強者に屈さず弱者の魂を燃やす、泥臭くかつクールな傑作アクション『モンキーマン』は8月23日(金)より上映中。

作品情報

監督・脚本・主演:デヴ・パテル
プロデューサー:ジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』『NOPE/ノープ』)、バジル・イワニク(『ジョン・ウィック』シリーズ)、エリカ・リー(『ジョン・ウィック』シリーズ)
公式HP:monkeyman.jp
公式X:@monkeymanjp
配給:パルコ ユニバーサル映画
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