SFホラーの金字塔『エイリアン』シリーズの最新作、『エイリアン:ロムルス』が、9月6日(金)より日本公開となる。今作は『エイリアン』(1979年)と『エイリアン2』(86年)の間の時系列を描く1作で、監督は『ドント・ブリーズ』(2016年)でも緩急のついたスリルと人間の狂気をスクリーンにもたらしたフェデ・アルバレスが務める。
【予告編】『エイリアン:ロムルス』
『エイリアン:ロムルス』あらすじ
物語の舞台となるのは、地球から遠く離れた宇宙──人生の行き場を失った6人の若者たちが、生きる希望を求めて足を踏み入れた宇宙ステーション“ロムルス”。だが、そこで彼らを待っていたのは、恐怖と言う名の絶望──寄生した人間の胸を突き破り、異常な速さで進化する“エイリアン”だった。しかも、その血液はすべての物質を溶かすほどの酸性のため、攻撃は不可能。宇宙最強にして最恐の生命体“エイリアン”から、彼らは逃げ切れるのか?
レビュー本文
『エイリアン:ロムルス』は、『エイリアン』元祖2作への明確な愛とリスペクトを感じさせながら、どことなく『エイリアン3』(92年)のディストピア感、『エイリアン4』(97年)や『プロメテウス』(2012年)を思い起こさせる描写もあるなど、原点回帰であると同時に“シリーズ全体の正統な最新作”という空気感もあり、さらに今作ならではの新たな風の吹いた作品だとも感じられた。
新主人公が我々に近づけた『エイリアン』の世界
今作は新たな女性主人公レイン(『プリシラ』『シビル・ウォー アメリカ最後の日』でも注目されるケイリー・スピーニーが演じる)を中心に、抑圧・支配からの解放を求める若者たちが宇宙船「ロムルス」でエイリアンの脅威に対峙する物語だ。
『エイリアン』第1〜第4作の主人公エレン・リプリー(シガニー・ウィーバー)は、ある程度一般人に近い感覚を持ち合わせていたとはいえ、やはり勇敢で歯切れのよいヒロインというイメージがあった。それに比べ、さらに庶民的に見え、感情のわかりやすい新主人公レインは、明確に描かれた庶民(中でも貧困層)上がりのバックグラウンドも含めて観客が感情移入をしやすいキャラクターになっている。
さらに(AVP2を除く)シリーズで初めて“雇われ”でないチームがエイリアンの恐怖に対峙しながら犠牲を乗り越えてたくましくなっていくストーリー展開ということもあり、『ロムルス』は『エイリアン』シリーズの世界を「遠巻きに観て楽しむ仕事人の世界」から「一緒に怖がるみんなのSFホラー」という手が届く距離まで近づけてくれたように思える。今作によって、シリーズには新たな風が吹いた印象だ。
音楽や小ネタにも注目
音楽が最新のSF映画群に比べてノスタルジーを感じるサウンドであった点も、シリーズのタイムラインにおける今作の位置付けを強く意識した作品であることを感じさせる。
“最新SF映画らしい音楽”を思い浮かべようとすると『TENET』の音楽(ルドヴィグ・ゴランソン作曲)のようなトガった曲風の電子音楽が脳内で再生されるが、『ロムルス』の音楽はそのような音楽ではない。ジョン・ウィリアムズを彷彿とさせるシンフォニックでまっすぐな音楽が70〜80年代の映画に浸っているような懐かしさを感じさせ、今作が『エイリアン』1,2作目の間の時系列を描いているというコンセプトを強く支えるのだ。しかし、ただ懐かしいサウンドにしたわけではなく、キレのある効果音が組み合わさることで鋭く恐怖を煽ってくる一面も印象的だった。
シリーズの中に挟まる作品とはいえ基本的には独立しており、1作だけ観ても十分に楽しめる作品であることは間違いない『ロムルス』だが、1作目を観たファンだけが楽しめる要素も含まれていたりと、ファンサービスもある作品となっているため、時間のある方はぜひ前後の作品と一緒に楽しんでいただきたい。
新たな主人公と歴代作品へのリスペクトを感じる作風、そしてもちろん大画面に映える恐怖演出も大量の『エイリアン:ロムルス』は正に“究極のサバイバル・スリラー”としてこの夏を締めくくるにふさわしいスリリングな1作だ。
『エイリアン:ロムルス』は2024年9月6日(金)より全国劇場にて公開。
作品情報
<STORY>
物語の舞台となるのは、地球から遠く離れた宇宙──人生の行き場を失った6人の若者たちが、生きる希望を求めて足を踏み入れた宇宙ステーション“ロムルス”。だが、そこで彼らを待っていたのは、恐怖と言う名の絶望──寄生した人間の胸を突き破り、異常な速さで進化する“エイリアン”だった。しかも、その血液はすべての物質を溶かすほどの酸性のため、攻撃は不可能。宇宙最強にして最恐の生命体“エイリアン”から、彼らは逃げ切れるのか?
タイトル:『エイリアン:ロムルス』
原題:Alien Romulus
日本公開:2024年9月6日(金)
全米公開:2024年8月16日
監督:フェデ・アルバレス
製作:リドリー・スコット
出演:ケイリー・スピーニー(『パシフィック・リム:アップライジング』『プリシラ』)、デヴィッド・ジョンソン(『ライ・レーン』)、アーチー・ルノー(「暗黒と神秘の骨」)、イザベラ・メルセード(『マダム・ウェブ』)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。