実話をもとにした韓国映画『ランサム 非公式作戦』が9月6日(金)から公開となった。
【予告編】『ランサム 非公式作戦』
『ランサム 非公式作戦』あらすじ
レバノン内戦下のベイルートで韓国人外交官が忽然と姿を消した。やがてそれが忘れ去られた頃、現任の外交官ミンジュン(ハ・ジョンウ)は、消えた外交官が人質として生きていることを告げる暗号をキャッチする。彼を救うため、身代金を手にレバノンに向かったミンジュンだが、現地に降り立つや否や大金を狙った武装組織に襲われピンチに陥ったところを、タクシー運転手として働く韓国人のパンス(チュ・ジフン)に救われる。
金のためなら何でもするパンスを、韓国政府からの見返りをチラつかせて同行させることにしたミンジュン。奇妙な協力関係で結ばれた二人は、時にぶつかり、互いを認め合いながら戦火が吹き荒れるベイルートの街を突き進んでいくのだが…。果たして二人は捕らわれた外交官を無事に救うことができるのか?
レビュー本文
実話をもとにした勇敢で恐ろしい物語
この恐ろしくて勇敢な物語に、もとになった実話があるという事実にまずは驚かされるが、我々の知らない世界の裏側では、このような出来事は多く起きているのだろうと想像もさせられる。
国境をまたげば、慣れ親しんだ常識では測れない世界が広がる。宗教・価値観も言語も異なれば危険度も異なり、「話せばわかる」が通じないことも増える。
常に命の危険と隣り合わせにある作戦のスリルには手に汗握らされる。
主演コンビがアクションスリラーに軽快さを与える
基本的にはうだつの上がらない雰囲気の外交官ミンジュンだが、その信念ある行いは非常にヒロイックであり、臨機応変な判断もこなす。物語に心地の良いメリハリを与えたのは、ミンジュンを演じたハ・ジョンウ(『お嬢さん』『チェイサー』)による、情けなさとかっこよさの演じ分けだと感じる。
また、キレイ事ばかりでない人の性(さが)を見せることで作品にリアリティを与えながら、その人懐っこくてどこか憎めないキャラで魅了するパンスの存在により、ただのアクションスリラー映画でなく、コミカルな会話や油断ならない駆け引きを楽しめるバディコメディ、人と人との関係の変化を描くヒューマンドラマという側面も増強されている。
パンスを演じたチュ・ジフンは『神と共に』シリーズ以来のハ・ジョンウとの共演。改めて実感させられるふたりの好相性も見応えがある。
正しい行動は簡単ではない
終盤はバディの関係につい涙腺が緩み、人々のために動ける人間の偉大さに震える今作は、真摯(しんし)な姿勢で正義を描きあげた。
良い行い、正しい行い、かっこいい行いを想像し、口で語るのは簡単だが、いざそれを行動に移し、他人のために動くという選択を取ることは非常に困難だ。
その正しい行動を実行し、感動させる物語に、余計な小細工は要らない。まっすぐ描かれたその偉業に、まっすぐ感動することができた。
『ランサム 非公式作戦』は9月6日(金)より上映中。
『ランサム 非公式作戦』作品情報
邦題:『ランサム 非公式作戦』
監督:キム・ソンフン『最後まで行く』
出演:ハ・ジョンウ(『白頭山大噴火』『チェイサー』)、チュ・ジフン(『工作 黒金星と呼ばれた男』『アシュラ』)
2023 年|韓国|カラー|シネスコ|5.1ch|133 分|韓国語ほか|原題:비공식 작전(英題:RANSOMED)
配給:クロックワークス
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フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。