マイリー・サイラスが楽曲の著作権をめぐって訴訟を起こされたとの報道がされている。
原告はマイリーの「Flowers」がブルーノ・マーズの楽曲の盗作だと主張
ローリング・ストーン誌の報道によると、マイリー・サイラスのグラミー賞受賞楽曲「Flowers」(フラワーズ)について、マイリーおよび共同作曲者であるグレゴリー・ハイン、マイケル・ポラックが、ブルーノ・マーズの楽曲の一部を模倣したとの訴訟が起こされたという。
訴訟は9月16日(月)にロサンゼルスで、テンポ・ミュージック・インベストメンツ社によって起こされた。同社が「Flowers」に模倣されたと主張している楽曲は、2013年のブルーノ・マーズのヒット曲「When I Was Your Man」だ。同社は「Flowers」はこの楽曲のいくつかの要素を無断で「流用」していると主張しており、訴訟の被告としてはほかに、ソニー・ミュージック・パブリッシング社、アップル社、ターゲット社、ウォルマート社、そのほか「Flowers」を配給しているとされる企業も指名されている。訴訟では、「裁判で決定される額」または1件あたり最大15万ドルの損害賠償が求められているそうだ。
原告のテンポ社は、ブルーノ・マーズの楽曲の米国著作権の一部を共同作曲者のフィリップ・ローレンスから取得している。ブルーノ本人や同楽曲の共同作曲者であるアリ・レヴィン、アンドリュー・ワイアットは原告として訴訟に参加していないことが特筆されているようだ。
訴訟は2曲の類似性を厳しく指摘
訴訟ではさらに、共同作曲者のひとりであるマイケル・ポラックが2023年3月にビルボード誌とのインタビューでこの二曲の類似性について「コメントを拒否した」ことにも触れられている。
訴訟は「ブルーノ・マーズの『When I Was Your Man』のファンなら誰でも、マイリー・サイラスの『Flowers』が独自にその成功を手にしたわけではないと知っている。『Flowers』は、『When I Was Your Man』のメロディ、ハーモニー、歌詞の要素を多数コピーしている。特に、メロディのピッチデザインとAメロ部分、つなぎのベースライン、サビの一部の小節、劇的な音楽要素、歌詞の要素、特定のコード進行などが挙げられる」と説明し、特に「Flowers」のサビ冒頭のボーカルラインが「When I Was Your Man」と「著しく類似している」と主張している。
さらに「2つの録音物の間の類似点の数と組み合わせに基づけば、『When I Was Your Man』なしに『Flowers』が存在し得なかったことは否定できないはずだ。『Flowers』において、サイラス、ハイン、ポラックは、無許可で『When I Was Your Man』の派生作品を作り上げたのだ」と厳しく糾弾している。
2曲を比較してみると…
ブルーノの「When I Was Your Man」はガールフレンドと破局後の男性が、“もっと相手のことを考えればよかった”と悔やむ歌詞が中心となっているのに対し、マイリーの「Flowers」はボーイフレンドと破局後の女性が“あなたが何かしてくれなくても一人で生きられる”と強く進んでいくような歌詞が中心となっている。
たしかに対になるような2曲ではあるが、“失恋後の後悔を歌う曲”と“失恋後に強く歩き出す曲”だけであればまだ、ありふれたテーマではあるといえよう。しかし、もっともわかりやすいのは2曲の歌詞の類似性。これは以前からソーシャルメディアなどでも指摘されていたことではある。
ブルーノの楽曲のサビは「That I should’ve bought you flowers and held your hand Should’ve gave you all my hours」(君に花を買えばよかった、手を握ればよかった、僕の時間を君に割くべきだった(と気づいたんだ))と始まる。
マイリーの楽曲のサビは「I can buy myself flowers」(花なんて自分で買える)とはじまり、少し順番は異なるものの、その後に「I can hold my own hand」(手も自分で握れるし)「Talk to myself for hours」(ひとりで何時間でも話していられる)といった歌詞が並んでいる。
花のプレゼント、手をつなぐ行為、時間の共有といった要素も恋愛ソングであればよく登場するが、この2曲について“楽曲の雰囲気や展開、歌詞が似ている”ということを全面否定する意見は少ないだろう。これらの“似ている要素”がどこまで「著作権の侵害」として認められるのかは、今後の訴訟の展開を見守るしかなさそうだ。
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。