『トランスフォーマー』シリーズの前日譚にして最新作『トランスフォーマー/ONE』が9月20日(金)に日本公開となる。
【予告編】『トランスフォーマー/ONE』
『トランスフォーマー/ONE』あらすじ
固い友情で結ばれたオプティマスプライム(オライオンパックス)とメガトロン(D-16)は、いつかヒーローになることを夢見て暮らしていた。謎のSOS通信を発見した二人は、侵入が禁止されている地上世界に足を踏み出し、惑星全体を揺るがす恐ろしい陰謀と、強大な敵の存在を知るのだった。
トランスフォーマー史上最大の激戦・サイバトロン星の戦いの始まりが迫る中、二人の友情がいま試される。
レビュー本文
シリーズを見直したくなる理想的な前日譚
『トランスフォーマー』シリーズの前日譚という位置付けの今作だが、あまりに理想的な前日譚だ。
これまでになかなか全貌がわからなかった「サイバトロン星」の風景や生活が鮮やかに映し出され、世界観の補完としても強く好奇心を刺激するだけでなく、未来のオプティマス・プライムとメガトロンであるオライオン・パックスとD-16が、親友から宿敵へと変わっていくその過程が非常に丁寧かつドラマチックに描かれ、今作を鑑賞後、すぐに映画『トランスフォーマー』第1作を見直したくなった。
性格は異なるが強い絆と互いへの信頼を感じさせるオライオン・パックスとD-16の関係は非常に微笑ましく、ゆえに宿敵になるということがにわかには信じがたいのだが、今作で起きる事件・争いをとおしたふたりの変化は巧みな展開と心情描写によって納得いくものとなっており、“遠い架空の星のロボットたちの争い”として俯瞰的に見るのではなく、確実に感情移入させられた上で、楽しさも怒りも悲しみも、彼らとともに味わうことができた。
リアルを追求したCGによる“映像体験”
なんといっても今作の魅力はそのあまりにリアルな映像。今作にはこれまでのシリーズと異なり実写の人間が登場せず、完全にCGのキャラクターたちがCGの世界で冒険し、CGの世界で戦う映画だ。
にもかかわらず、今作はいつものシリーズの延長線上にあるとたしかに感じさせられた。現実には存在し得ない世界が描かれるものの、その質感や陰影はあまりにリアルで、“本当にどこかに存在するサイバトロン星”で撮影した映画かのようにすら見えてくる。
近年は『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズや『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』、日本では『プロメア』など、アニメーションによる表現を極限まで突き詰めた結果生まれる独自の世界観を魅力とする映画が多くトレンドになっていたように思うが、今作の改めて真っ向からリアルを追求した映像は、見事な直球でサイバトロン星での“映像体験”を我々に与えてくれた。
豪華キャスト陣の安定した声の演技
声優陣も非常に心強い。オライオン・パックス役にはクリス・ヘムズワース(『マイティ・ソー』シリーズ)、D-16役にはブライアン・タイリー・ヘンリー(『エターナルズ』)、スカーレット・ヨハンソン(『ブラック・ウィドウ』)、バンブルビー役にはキーガン=マイケル・キー(『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』)、ほかにもジョン・ハムやローレンス・フィッシュバーン、スティーヴ・ブシェミと、豪華ハリウッドスターが集結した。
クリス・ヘムズワースは『マイティ・ソー』を思わせる茶目っ気にあふれる豪快な正義漢であるオライオン・パックスに適任。ブライアン・タイリー・ヘンリーはで助演男優賞にノミネートされたA24映画『その道の向こうに』でも、献身的に他人を包み込む優しさを見せており、パックスに呆れながらも支える、包容力のある親友D-16役が非常にしっくり来ていた。
スカーレット・ヨハンソンが声だけで観客を惹きつけられるのは『her』や『SING/シリーズ』でも実証済。今回のエリータ役にも、明らかに彼女の力強い魂が宿っていた。そして『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のキノピオ役でコミカルな声の演技をこなしたキーガン=マイケル・キーは今回も非常に軽やかに、おしゃべりで愉快なバンブルビー(B-127)役を演じきった。
善の心で立ち上がり、悪を討ち滅ぼさんとする王道なバトルアクション映画であるのみならず、極めてハイクオリティな映像に彩られた非常にドラマチックで理想的な前日譚として完成された最新作『トランスフォーマー/ONE』は9月20日(金)公開。
『トランスフォーマー/ONE』作品情報
監督:ジョシュ・クーリー(『トイ・ストーリー4』)
キャスト(声):クリス・ヘムズワース、ブライアン・タイリー・ヘンリー、スカーレット・ヨハンソン、キーガン・マイケル・キー、ジョン・ハム、ローレンス・フィッシュバーン
日本語吹替キャスト(声):中村悠一、木村昴、吉岡里帆、木村良平、玄田哲章
原題:Transformers One
配給:東和ピクチャーズ
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公式サイト:https://transformers-animation.jp/
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。