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【韓国ライブレポート】リンキン・パーク(Linkin Park)新章開幕-短期間で進化し続けるエミリーの覚悟と、“Kintsugi”に込められた思い【9.28】

Photo Credit:1ssul EVENTS/LIVE
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リンキン・パークの韓国公演が行われた。

2024年9月28日(土)、新始動した人気バンド、リンキン・パーク(Linkin Park)の公演が、韓国のインスパイア・アリーナで行われた。「LINKIN PARK : From Zero World Tour」の一環として行われた韓国公演は、新始動後初となる彼らのアジア公演だ。(セットリスト(セトリ)は最下部へ)

2017年に世界中のファンに衝撃を与えたボーカルであったチェスターの急逝。活動を休止していたリンキン・パークは今年(2024年)再始動。従来のマイク・シノダ(ボーカル/MC/ギター/キーボード)、ブラッド・デルソン(ギター)、フェニックス(ベース)、ジョー・ハーン(DJ)というメンバーに加え、新たにボーカルのひとりとしてエミリー・アームストロングを、ドラマーとしてコリン・ブリテンを新メンバーに迎え、新生リンキン・パークの物語が幕を開けた。

リンキン・パーク(Photo Credit: James-Minchin)

リンキン・パーク(Photo Credit: James-Minchin)

公演前から大きな盛り上がりを見せ、「Linkin Park! Linkin Park!」とのコールや歓声がたびたび起こっていた会場に、ついにリンキン・パークが姿を現した。

短期間での飛躍を見せる<始まり>

今回のツアー公演は<Inception>(始まり)と名づけられたシークエンスで幕を開け、その後にたびたび入る映像・音声パートにも章立てするように名前がついていることがセットリストから明らかになっている。天から光が降り注ぎメンバーが入場した<Inception>パートで披露されたのは以下6曲だ。

1曲目「Somewhere I Belong」から会場は大合唱。「Crawling」でも合唱は止まらない。「Lying From You」ではマイクが歩き回りながらラップで会場を盛り上げ、エミリーの迫力あるシャウトが響き渡った。

エミリー・アームストロング(Photo Credit:1ssul)

エミリー・アームストロング(Photo Credit:1ssul)

マイクはジョーのDJ台で少し楽しむと、ステージを歩きながら「みんな、本当にありがとう。最高の気分だよ」と笑顔。エミリーも「今夜はみんなHOTだね!」と満足げだ。

Points of Authority」が始まると、マイクとエミリーは横並びで会場に向かい、観客に手を左右に振るよう煽った。エミリーが原曲の1オクターヴ上で美しく歌ってみせたり、ジョーの小刻みなDJプレイが光ったりとこの楽曲ならではの魅力たっぷりだ。

マイク・シノダ(Photo Credit:1ssul)

マイク・シノダ(Photo Credit:1ssul)

マイクが「カムサハムニダ」と韓国語で挨拶すると、「New Divide」では照明がエミリーとマイクのふたりを際立たせる。エミリーはロングトーンでも声量を見事に響かせ、この短期間だけでさらなる進化を経たことを実感させてくれた。

そしてお披露目するのはエミリーとコリン擁する新体制で初めてリリースされた新曲「The Emptiness Machine」。いくつかの公演を経て慣れと自信とともに成長したのだろうか、エミリーは初めて配信された際のライブよりも、原曲よりもいっそう強烈なパワフルさを見せ、今後の変化も楽しみになる。

<創造>ー振り返る彼らの楽曲の幅

公演2つ目のパートは<Creation>(創造)。再び頭上からの光が降り、それが枝分かれしていく。

荘厳に「The Catalyst」を披露すると、ヒット曲「Burn It Down」へ。イントロから会場は大歓声を上げ、サビではエミリーの向けたマイクに向かって会場中が歌声をひとつにした。

Waiting for the End」では軽快なリズムにマイクとエミリーだけでなくメンバーの声も重なり、心地良いハーモニーが響く。会場はスマートフォンのライトを掲げ、美しいムードを彩った。

西部劇チックな雰囲気も覚える「Castle of Glass」で淡々としたメロディーに熱をこめると、続いてはジョー・ハーンのDJソロへ。軽快なディスクさばきによるスピーディーなスクラッチが、新メンバーであるコリンのドラムスに乗った。

ジョー・ハーン(Photo Credit:1ssul)

ジョー・ハーン(Photo Credit:1ssul)

ジョーに続いて、今度はマイクのソロパートへ。ラップが際立つリンキン・パークの楽曲「When They Come for Me」と、マイクを中心とするヒップホッププロジェクト“フォート・マイナー”の代表曲「Remember the Name」をマッシュアップしてパフォーマンスするマイク。それを支えたのまた、新メンバーのコリンだった。音楽プロデューサーでもあるコリンはこのソロパートでギターも披露し、途中からドラムスへ移行。会場の空気をラップで変えるマイクの裏で、コリンも幅広い才能を見せた

コリン・ブリテン(Photo Credit:1ssul)

コリン・ブリテン(Photo Credit:1ssul)

韓国をルーツのひとつとして持つジョーが「ヨブセヨ(もしもし)」「カムサハムニダ」など韓国語を口にし会場を盛り上げると、続いて「A Place for My Head」を披露。

さらに、コリンが会場の手拍子を煽って始まったのはアップテンポな「Given Up」。電子音を使用しない間、DJであるジョーはカメラを手にステージ中を歩き回り、会場の大画面にはそのダイナミックなカメラワークが展開した。

One Step Closer」では真っ赤染まったステージの上で会場とともに叫び声を上げるエミリー。シャウトの迫力も始動時から大きく強化されているのは明らかだ。

<崩壊>を経た彼らの強く美しいメロディー

「One Step Closer」の最後の“Break”(壊れる)に呼応するように始まる3番目のパートは、<Collapse>(崩壊)と呼ばれる。映像には大きなヒビが入り、ステージはブラックアウトした。

前ボーカル、チェスターを失い、今年まで7年間楽曲をリリースしなかったリンキン・パーク。これまでの彼らには二度と戻れない状態は、メンバーにもファンにも深い悲しみをもたらした。悲しみと停滞を表すように、ヒビ割れが映った画面と悲壮的な音はしばらく続いた。

その後に披露したのは、「Lost」。原曲とは異なり、エミリーとピアノを弾くマイクとエミリーによるピアノ・デュエットバージョンだ。会場をしっとりと浸らせたピアノのメロディは「Breaking the Habit」のイントロに繋がった。楽器隊のサウンドが比較的静かなこの曲ではエミリーの声の圧力が非常に際立った。

さらに「What I’ve Done」でもエミリーが力強いボーカルを響かせ、“崩壊”後のバンドを支える要となる彼女の実力と決意がひしひしと伝わった。

フェニックス(Photo Credit:1ssul)

フェニックス(Photo Credit:1ssul)

<金継ぎ>-“戻る”のではない、彼らの新たな始まり

アンコール前最後のパートは<Kintsugi>(金継ぎ)と呼ばれる。映像でも、“崩壊”のヒビを癒すように光が動いていく。

“金継ぎ”はマイクのルーツのひとつでもある日本の伝統工芸。欠けたり割れたりした食器などを漆と金粉によって修復することで、金色の継ぎ目が模様のように入った“この世にひとつしかない新たな食器”が生まれるのだ。

唯一無二のチェスターの逝去によって欠けてしまったリンキン・パークにどんなメンバー、サポートメンバーが入ろうと、元のリンキン・パークに戻ることは絶対にできない。

しかし、残されたメンバーはエミリーとコリンという新メンバーを得て、金色の継ぎ目のついた食器のように新たな“唯一無二のバンドの形を取り戻し、力強く立ち上がった。メンバーがそう感じていることが“Kintsugi”の1単語だけでわかる、非常に感動的な演出だ。

マイクが優しい声で歌い出したのは「Leave Out All the Rest」。再び会場は揺れるスマホのライトで包まれる。会場を見つめる満足げなマイクの微笑み。これだけで“Linkin Park”が再始動して本当によかったと深く感じさせられる。

コリンがアコースティック・ギターに持ち帰ると、エミリーが「My December」をしっとりと歌い出す。マイク、コリンらのコーラスも加わり、会場を美しいハーモニーが満たした。曲が終わるまで静かに見守った観客は、拍手とともき「エミリー!エミリー!」と声を合わせる。

大きなプレッシャーとともにリンキン・パークデビューしたであろうエミリーは、その“エミリーコール”両手を広げて感激。「ありがとう…本当にありがとう」とこぼしながら彼女はそのままステージに降り注ぐ淡い光の雨に包まれ、ベストアルバムに収録された「Friendly Fire」の重厚なパフォーマンスが行われた。

Photo Credit:1ssul

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本編終盤は特に人気の楽曲が連続。「Numb」で大盛り上がりする会場はさらに「In the End」で大歓声を上げる。1,2番で歌を観客に譲ったらエミリーは客席の方まで歩いて行くと、会場の大合唱を楽しそうに浴びていた。

本編のラストを飾ったのは「Faint」。イントロから大勢のジャンプと声援で会場の床も空気も揺れるこの曲で、全員はすべてを出し切るような圧巻のパフォーマンス。長く続くアウトロの間も声援と拍手は鳴り止まなかった。

止まらず進み始めた彼らの<決意>ー最後の爆発力

そしてアンコール・パートの呼称は<Resolution>(決意)。再始動した彼らのこの先を期待させる全力のパフォーマンスでコンサートを締めた。

アンコール1曲目は「Papercut」。圧巻の盛り上がりに、終わりを惜しむような「Linkin Park!」コールが鳴り響く。

こちらもパフォーマンスするごとにパワフルになっていることがわかる最新曲「Heavy Is the Crown」を終えて、エミリーが「みんな最高だったよ」、マイクが「またすぐ会えたらいいね、最後の曲に行くよ」と語ると、ラストは「Bleed It Out」 へ。歌と演奏と観客の声援・合唱が一つの音の塊になったような大爆発が鼓膜を揺らす中、彼らの韓国公演は終了を迎えた。

金継ぎ食器のように“新たなリンキン・パーク”として再始動した彼ら。再始動した時の彼らと今の彼らはすでに大きく違う。短期間でも飛躍的な変化を見せる新生リンキン・パークの今後に大きな期待が高まる一夜だった。

セットリスト Linkin Park 韓国公演 2024年9月28日

<Inception>(始まり)
01. Somewhere I Belong
02. Crawling
03. Lying From You
04. Points of Authority
05. New Divide
06. The Emptiness Machine

<Creation>(創造)
07. The Catalyst
08. Burn It Down
09. Waiting for the End
10. Castle of Glass
11. Joe Hahn DJ Solo
12. When They Come for Me / Remember the Name (Mike Shinoda Solo)
13. A Place for My Head
14. Given Up
15. One Step Closer

<Break / Collapse>(崩壊)
16. Lost (piano&duet ver.)
17. Breaking the Habit
18. What I’ve Done

<Kintsugi>(金継ぎ)
19. Leave Out All the Rest
20. My December (acoustic ver.)
21. Friendly Fire
22. Numb
23. In the End
24. Faint

<Resolution>(決意/アンコール)
25. Papercut
26. Heavy Is the Crown
27. Bleed It Out

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