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【映画レビュー『悪魔と夜ふかし』】映像の質感による“番組のリアル”と懐かしい演出による“70〜80年代のリアル”が共存する、不気味ながらも心地よいレトロホラー

©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED FILMS/TV SERIES
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リアルな記録映像として流れる放送事故動画によって、超常現象の脅威と恐怖に対峙させられる、デヴィッド・ダストマルチャン主演の最新ホラー映画『悪魔と夜ふかし』 が10月4日(金)より日本公開

『悪魔と夜ふかし』予告編

『悪魔と夜ふかし』あらすじ

1977年、ハロウィンの夜。テレビ番組「ナイト・オウルズ」の司会者ジャック・デルロイは生放送でのオカルト・ライブショーで人気低迷を挽回しようとしていた。
霊聴、ポルターガイスト、悪魔祓い…怪しげな超常現象が次々とスタジオで披露され、視聴率は過去最高を記録。しかし番組がクライマックスを迎えたとき、思いもよらぬ惨劇が巻き起こる…。

レビュー本文

“ホンモノ”の質感と、ほどよいB級感

今作は「ファウンド・フッテージ・ホラー」のひとつ。アメリカなら『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)、韓国なら『コンジアム』(2018年)、日本でも今年「イシナガキクエを探しています」が話題に上がるなど、フィクションではあるものの“本物”の記録動画かのように映し出される映像に没入して楽しめるファウンド・フッテージ・ホラーにはコアなファンも多い。

今作も70年代後半の深夜に実際に放送された“放送事故”の記録として、超常現象に人々が戦慄する様子に没入することができる作品だ。本物の記録映像のようなビデオ画角と、解像度の低いザラザラした映像のレトロな質感は実際に数十年前のビデオテープを再生している気分にさせ、スタジオにいるバンドの生演奏や効果音、大きくリアクションを取る観客や“客いじり”など、アメリカのトークショーらしい演出は「本当に当時こんな番組があったのではないか」という気分にさせてくれる。

©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

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その上で、演出には“ほどよいB級感”が漂っており、若干粗いCGや特殊メイクは“番組としてのリアルさ”というより“70〜80年代の映画の手触りとしてのリアルさ”が感じられる。超常現象の演出を見せるまでに“番組としてのリアルさ”は散々追求して没入させているため、超常現象以降は大ぶりな演出で揺さぶる方向にシフトチェンジしても作風がブレないというところも今作の巧みさだろう。

ホラー映画や70〜80年代映画への愛

そんな70〜80年代の映画の手触り-時代を感じさせる映像・特殊メイク表現というところに関しては、監督が出演者に映画『キャリー』(76年)を見せたことも判明している。

今作からは『キャリー』に代表されるブライアン・デ・パルマ監督作品(『ファントム・オブ・パラダイス』『殺しのドレス』など)や、名作ホラー『エクソシスト』(73年)のエッセンスや、さらに深夜トーク番組の世界観にはマーティン・スコセッシ監督の『キング・オブ・コメディ』(83年)といった影響も感じられ、当時の映画への愛とリスペクトが込もった世界観には観ていてノスタルジックな気分にさせられた。

『悪魔と夜ふかし』©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

『悪魔と夜ふかし』©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

デヴィッド・ダストマルチャンの存在感

そんな今作の世界観を“番組ホスト”として作り上げた中心が、主演のデヴィッド・ダストマルチャンだ。彼は『ダークナイト』(08年)でジョーカーに利用された精神病患者役で印象的な長編映画デビューを飾って以降、『アントマン』シリーズや『DUNE/デューン 砂の惑星』、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』や『ブギーマン』など数々の話題作でその特徴的なビジュアルを活かした役柄をこなしてきた。

彼の存在感は今作でもふんだんに発揮されている。“深夜のトーク番組の人気者”という“陰の主役”であり、視聴率と暗い過去に取り憑かれ混乱している狂気的な側面も持つキャラクターに、彼の風貌と演技はピタリとハマった印象だ。ダストマルチャンはNetflix版「ONE PIECE」シーズン2においてMr.3役での出演も決まっており、さらなる飛躍が期待される注目株。今作も彼の魅力を存分に味わえる1作として記憶に刻まれた。

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印象的な主人公を演じたデヴィッド・ダストマルチャンと、“番組としてのリアルさ”“70〜80年代らしさ”にこだわられた注目のファウンド・フッテージ・ホラー『悪魔と夜ふかし』 は10月4日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国順次公開。米映画レビューサイト「ロッテントマト」でも批評家支持率97%(10月3日現在)を記録する注目作品を、ぜひ目撃していただきたい。

『悪魔と夜ふかし』作品情報

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タイトル:『悪魔と夜ふかし』
原題:LATE NIGHT WITH THE DEVIL
監督・脚本・編集:コリン・ケアンズ、キャメロン・ケアンズ
出演:デヴィッド・ダストマルチャン、ローラ・ゴードン、フェイザル・バジ、イアン・ブリス、イングリット・トレリ、リース・アウテーリ
オーストラリア|カラー|ビスタ|5.1ch|93 分|字幕翻訳:佐藤恵子|PG-12
©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
配給:ギャガ

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