チェコ発、新進気鋭の注目シンガーMIKOLASに独占インタビューを行った。
MIKOLAS(ミコラス・ジョセフ)が、大ヒット楽曲「Lalalalalalalalalala」を日本の人気ラッパーSKY-HI(スカイ・ハイ)とともに新たにレコーディングした「Lalalalalalalalalala (Tokyo Version)」が10月25日(金)にリリースされたことを記念し、MIKOLASが来日。
昨年の12月に引き続きMIKOLASへのインタビューの機会を得たtvgrooveは、今回のコラボレーションの経緯や楽曲へのこだわり、日本でできた思い出などについて話を聞いた。
今回の楽曲はInstagramでもトレンド9位にランクインするなど、国境を超えたコラボレーションに注目が集まっている。
【動画】MIKOLAS、SKY-HI「Lalalalalalalalalala (Tokyo Version)」ミュージック・ビデオ
MIKOLAS 独占インタビュー
日本に来てくださってありがとうございます!SKY-HIさんがダンス&ボーカルグループのメンバーとして脚光を浴び始めた頃から、当時中学生だった私は彼のラップを聴いていたので、国境を越えたこのコラボレーションには胸が躍りました。
MIKOLAS:AAAのことだよね!彼のリスナーに喜んでもらえて嬉しいよ!
昨年12月にオンラインで取材させていただいた際はまだ日本に来たことがないとのことでしたが、今回が初来日でしょうか。
MIKOLAS:7月にSKY-HIとのレコーディングで来たから、3日しかいられなかったけどそれが1回目だったんだ。日本は今回で2回目だね。
日本に来て印象に残る思い出は何かありますか。
MIKOLAS:もちろんあるよ!覚えているのは日本に向かってのフライトを終えた時のこと。ヨーロッパを嵐が襲った影響もあって、日本に着くまでに38時間もかかったし、僕は荷物も失くしちゃったんだ。結果、日本の方との初めての交流は、紛失した荷物の届出になった(苦笑)
その時まず空港で、荷物が流れてくるはずのベルトコンベアを見ていたんだけど、荷物を扱う女性スタッフが、荷物にダメージを与えないように気をつけながら丁寧に流していることに気づいたんだ。そんな光景初めてだったよ。「僕が知っている人々とは違うぞ」って感じた。
そして僕が佇んでいると、女性が「もしかしてお荷物を失くされましたか」と声をかけてくれた。「申し訳ございません、私がサポートさせていただきます」って、彼女の過失じゃないのにそう言ってくれたんだ。びっくりしたよ。信じられなかった。これまで世界のどこでも、こんなにすばらしい対応は経験したことがない。ディテールまでプロ意識が行き渡っているんだ。これが初の日本人との交流だったから、強く印象に残っているよ。
その後、荷物は無事にスタジオ作業の最後の日に届けてもらえた。SKY-HIへのお土産も入っていたから助かったよ。
見つかって何よりです。SKY-HIさんには何を贈ったのですか。
MIKOLAS:SKY-HIはチョコレートが好きだって聞いてたから、ファンシーなチョコレートをいくつかあげたよ。あと、彼はラッパーだよね。僕の地元ではラッパーにはお酒を贈る傾向にあるから、おしゃれなボトルのお酒もあげたんだ。喜んでくれたよ。
3日前から日本にいらっしゃっていますね。今日までに何か記憶に残る食事や場所はありましたか。
MIKOLAS:日本での食事にガッカリしたことは一度もないね!お気に入りは鉄板焼きかな。でも一番のお気に入りは、うどん!あと、寿司は日本のものと外国に広まっているものとは全然違うんだって知ったよ。僕がこれまで食べていたのは本来の寿司じゃなかったんだね(笑)
それから、日本ではみんな「ハイボール」を飲むんだね。ウイスキーをソーダで割るなんて初めて見たんだ。日本で食べるものはなんでも、野菜だって別格だよ。ひとつひとつをすごく丁寧に扱っているからだろうね。ミシュランで星を獲得しているお店が日本に多いのにも納得したよ。
前回のインタビューで、コロナ禍にリリースした「Lalalalalalalalalala」が突然日本でバズり出したのはMIKOLASさんにとっても予想外の出来事だったと語っていましたが、ついに日本に来てくださりましたね!28日にはファンミーティングも企画しているというSNS投稿を見ました。日本ファンとの対面を控えて、今のご心境はいかがですか。
MIKOLAS:空港に来てくれたファンもいたし、日本のみんながとても温かく歓迎してくれていて嬉しいよ。もっとひとりひとりとお話できたらな、と思ってる。ミーティングについても、想定以上にたくさんの希望者が連絡してくれているんだ!なるべく多くのファンに会いたいから、少し人数を増やせるかどうか調整中だよ。
今年4月にSKY-HIさんのラジオ番組「DIVE TO THE NEW WORLD」にゲスト出演されていますよね。その後、どのような経緯で今回のコラボが決まったのでしょうか。
MIKOLAS:うん、最初の交流はSKY-HIからのインタビューだったね。でも、あれはただ“インタビュー”と言われて想像するような会話じゃなかった。アーティスト同士の交流だったからだと思うけど、僕も彼に質問しちゃったし、友達同士の会話みたいに感じたよ。会話の中で僕らの間には多くの共通点があると思えたんだ。
彼は音楽業界で自分のキャリアを築こうとタフな経験をしてきた人だし、他の仕事もしている。演奏するだけじゃなく、自らがクリエイターだ。同時に、スタジオにいると歌においてもプロフェッショナルなのがわかるし、歌を愛しているよね。彼の歌への愛が僕らふたりを繋げてくれたんだと思うよ。
SKY-HIさんとの楽曲製作はいかがでしたか。
MIKOLAS:いつも楽曲制作の作業中は、「ほんとに実現するのかな、うまくいくかな」という不安も感じる。でもSKY-HIとだと気が楽だったよ。ミュージシャンは時に他の人が書いた曲を演奏したり、誰かにプロデュースしてもらうこともあるけど、彼の場合はひとりでプロデューサー、作詞家、ボーカリスト、パフォーマーをこなす。僕も自分で作詞作曲することが多いから、ふたりでの作業はすごくスムーズだったんだ。
彼はすごい速さで曲を作るんだよ。今回だって僕の既存の楽曲をリメイクして、意味も響きも似た日本語を当ててくれたけど、それってすごく難しい仕事のはずなんだ。それをあんなに速く正確に成し遂げるなんて、僕にはマネできないと思う。とても感銘を受けたよ。
今回のバージョンでは原曲よりも少しキーを下げていますよね。それはどうしてでしょうか。
MIKOLAS:よく気づいてくれたね、嬉しいよ!オリジナルバージョンを録ったのは4年前。世界的に見て音楽のサウンドも変わっているように感じるんだ。 オリジナル版は少しドライだったし、今改めて聴くとちょっと時代遅れな気がした。今回のはまさに2024年バージョン。僕の声もディープになったと感じるし、低いキーが似合うと思ったんだ。
キーを下げるだけでなく、スピードを少し上げたり、ドラムパートをよりパーカッション風にしたりと、よりヘヴィーでクラブミュージック的な、広がりのある雰囲気を目指したよ。
おふたりの声のすばらしい化学反応が起きていたように思います。コーラスやボイスエフェクトといったサウンド面ではどのような部分にこだわりましたか。
MIKOLAS:2024年の今、ラップとポップ・ミュージックの距離はすごく近づいた気がするんだ。それを曲調にも反映させた。普段の僕はオートチューンやボコーダーを使って世界観を強化する演出をすることもあるんだけど、今回はライブ感も大切にしたいとSKY-HIに伝えたんだ。
「Yeah!」「Woo!」みたいな僕らの声が入っているよね。笑い合いながらの収録だったよ。それで最後、録音が終わった時に僕は「Skrrt」(※)とふざけたんだ。その声が曲の最後に残っているよね。僕は消そうかと思ったけどSKY-HIがすごく気に入ったらしくて残したんだ(笑)
※「Skrrt」(スクー)は、ヒップホップでしばしば使われる擬音語。車のアクセル音が元になっており、勢いがついている状態を表すことが多い。
もうひとつこだわったのは、SKY-HIも僕も低いパート、高いパートを歌い分けて声を重ねたってこと。時に僕は日本語パートで彼に声を重ねたし、逆に彼も英語パートで僕に声を重ねている。 オリジナル版を一緒に歌うだけではなく、自分のパートを交互に歌うだけでもなく、 同じ部屋に一緒にいる“ジョイント感”を大切にした。それによって「ふたりのアーティストの共演」であることを強調したんだ。
特に大きく変わったのはブリッジ部分だと思います。SKY-HIのラップに合わせた大胆なアレンジが行われましたが、ブリッジについてはどのような印象でしょうか。
MIKOLAS:詳細に聴き比べてくれてありがとう、そこは制作者としてぜひ話しておきたかったところなんだ!ブリッジは唯一オリジナル版と完全に異なるパートになっているよね。
SKY-HIが2コーラスまでの参加箇所で、響きも意味も原曲に寄せた日本語ラップを作り上げてくれたことには「そんなことできるのか!」と驚いた。そこで僕はブリッジでの工夫を考えたんだ。僕はラップするよりもメロディーを歌うことが多いけど、SKY-HIは当然ラッパーだから歌うよりラップすることが多いよね。僕の曲に参加した彼が僕の曲に寄せてくれただけではなく、僕の曲が彼の世界に飛び込む感覚も得たいと思った。そこで、ブリッジに関してはSKY-HIらしさに近づけることにしたんだ。
だからこそ、ブリッジパートはこの曲で僕がすごく大切にした場所。質問してくれて嬉しいよ。
ラッパーとしてだけでなく会社経営者にしてプロデューサーという複数の顔を持つSKY-HIさんとは楽曲制作以外のことも話しましたか。何か印象に残っている思い出はありますか。
MIKOLAS:もちろんもちろん!色々なことについて話したよ。僕が初めて来日した時、彼はBE:FIRSTのコンサートに連れて行ってくれた。スタジオでは彼のアーティストとしての姿しか見たことなかったけど、そのコンサートでは経営者の姿に切り替わっていた。感銘を受けたよ。
K-POPのプロデューサーやインタースコープ社のジミー・アイオヴィンみたいに、音楽プロデューサーでありながらアーティストという人は多いけど、SKY-HIもそのひとり。音楽業界において彼の価値は大きいよ。彼はアーティストたちを効果的に活躍させるだけじゃないんだ。アーティストたちにフレンドリーに接し、彼が学んできたすべての教訓を新たな世代に惜しみなく分け与え、育てている。短期間ですごいことを成し遂げていると思うし、尊敬しているよ。
SKY-HIのラジオに出演した際は、新たなフェーズに向けて楽曲製作が始まっていると発言もしていましたが、2枚目のアルバムも予定されているのでしょうか。
MIKOLAS:アルバムリリースについては現在進行形で話しているよ!1曲作ったら次の曲、1枚アルバムを出したら次のアルバムを作り始めるのがミュージシャンの仕事だからね(笑)すでに明確で強力なビジョンをもって、2枚目のアルバムに向けて進んでいるよ!
2024年が終わりに近づいていますが、今年1年を振り返ってみてどのような年でしたか。
MIKOLAS:そうだね、今年は忙しくなって、ホリデーもなかったし余暇もほとんどなかったよ(笑)。でもおかげさまで日本にもまた来られた。ありがたいことに1stアルバムだけで1億800万回以上も再生してもらえている。みんなのサポートのおかげでヨーロッパ公演も成功させられた。さらに活動の幅を広げて、こうしてSKY-HIとコラボレーションしたりもできている。そのすべてが一気に押し寄せて、さらに今僕たちは2ndアルバムのリリースに向けて動いている。すごいハイテンポに感じるよ。喜んで続けていくけどね!
前回のインタビューからそろそろ1年が経ちますが、その後MIKOLASさんは1stアルバム『ONE』と、さらに10月にニュー・シングル「DIAMONDS」をリリースしましたね。この1年でご自身の音楽性に変化は感じますか。
MIKOLAS:いい質問だね!結構変わったと思う。1stアルバム『ONE』のリリースまでには長い時間がかかったね。『ONE』はボーカリスト、ソングライターとしての僕の過去約6年間の総決算だった。だから6年前の曲も入っているよ。でも1枚アルバムが出せた今、僕は「過去の精算は終わったぞ」って感覚なんだ。
そして今、僕のサウンドは変わってきている。僕はひとつのスタイルに固執する必要もないと思っているし、進化するのが好きなんだ。すばらしい音楽こそがアーティストを進化させてくれる。2ndアルバムは今の僕を反映したものにするつもりだよ。ダークながら、ラップとポップスの親密なコンビネーションも明確に意識している。
さらにダンスミュージックの影響も反映させているよ。僕の音楽は生まれ育ったヨーロッパの音楽にも強い影響を受けているからね。ユーロビート、ユーロダンスといったジャンルの音楽は、日本の音楽にも影響を与えているよね。それらの要素を新曲でどう自分の音楽に落とし込めるか、実験的な挑戦もしているんだ。
前回のインタビューでは、日本でチーズウォーターを探したいと仰っていましたが、見つかりましたか?
MIKOLAS:(爆笑)
MIKOLAS:まだ見つかってないんだよ!今回のToDoリストには入ってるんだ。なんとか見つけて飲みたいな(笑)。でも日本を探検していると、どんどん新しいものが見つかるね。たとえばドン・キホーテはお気に入りの場所になったよ。時差ボケで眠れない夜、ドン・キホーテに行ってみたんだ。あんなところ見たことないよ!「刀が売ってるぞ!向こうには薬、食べ物もある。ブランド品もあればセクシーなオモチャのコーナーまであるぞ!これ全部が同じ店にあるなんてことある!?」ってみんなで楽しんだ。いい思い出になったよ。
日本のファンはもちろん、今後MIKOLASさんのパフォーマンスを日本で見られることにも期待していると思います!現時点で日本公演を行う計画はありますか。
MIKOLAS:もちろん僕らも日本公演については話してるよ!SKY-HIともラジオで話したんだ。ちなみに彼には僕のチェコ公演に参加してほしいって話もしたよ。
いつどのように日本公演を行うべきかはまだベストなやり方を探っている段階だけど、今回の来日で想像以上に日本のファンがたくさんいてくれることに驚いたことだし、ぜひ日本でもライブをしたいよ。
(インタビュー時から数えて)あと5日間は日本に滞在される予定ですね。これから訪れたい場所や、食べたい物は決まりましたか。
MIKOLAS:行きたいところはたくさんあるよ!「TOKYO DRIFT」体験もしてみたいね。1日フリーな日があるから、チームのみんなと一緒に新幹線で京都に行って観光したいんだ。行くべき場所はいくらでもあるよね。十分な時間があればなあ。
日本のクラブで音楽を聴く経験もまだしたことがないからプランに入れたいな。あとラーメンばかり食べすぎてるから、他のものも食べたいね(笑)。一昨日食べたしゃぶしゃぶもすごく美味しかったな…。
SNSをチェックしておきますね。
MIKOLAS:うん、そうしてそうして(笑)Xでも日本でお気に入りの食べ物を報告するかもしれない。
では、最後に日本のファンに一言メッセージをお願いします!
MIKOLAS:僕の音楽を聴いてくれる皆さん、ありがとうございます!SKY-HIと一緒に作り上げた「Lalalalalalalalalala(Tokyo Version)」も気に入ってくれると嬉しいな。温かい歓迎をありがとう。インタビューでも語ったとおり、日本ではとてもいい時間を過ごせているよ。いつか日本公演を実現させて、みんなと会える日を楽しみにしているね!
(インタビュー以上/取材:ヨダセア)
MIKOLAS、SKY-HI「Lalalalalalalalalala (Tokyo Version)」楽曲リンク:https://avex.lnk.to/lalala_tokyoversion
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。