2024年11月9日(土)に開始となった「スタジオツアー東京」の期間限定イベント「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」の魅力と、制作の裏側をお届け。
“ハリポタツアー”こと「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(以下「スタジオツアー東京」)にて、冬の期間限定イベント「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」が始まった。開催期間は2024年11月9日(土)から2025年1月5日(日)で、この期間は「大広間」が映画第1作『ハリーポッターと賢者の石』のクリスマスのシーンの完全再現仕様になり、ツアー終盤の「ホグワーツ城の模型」が雪に包まれた特別装飾になるほか、屋外エクステリアや館内ロビーにはスペシャルなクリスマス・ライトアップが施される。
イベント開催に伴い、tvgrooveはそのデコレーション制作最終日および完成披露日に「スタジオツアー東京」を取材。そのデコレーション内容をいち早く目撃すると同時に、デコレーションを手がけたふたりの重要人物、セット・デコレーターであるロージー・グッドウィン氏と、小道具製作担当のピエール・ボハナ氏に取材することができた。ピエール・ボハナ氏の取材は1月に「ダンブルドアの校長室」を案内してもらって以来だ。
「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」が日本に初上陸
ロンドンのスタジオツアーで開催実績のある人気イベント「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」を日本初上陸させるプロジェクトは、昨年2023年末にスタートしたという。『ハリー・ポッターと賢者の石』のクリスマスシーンの忠実な再現のため、ピエールら映画制作に携わった美術スタッフたちが集結。撮影当時の資料をベースにプロトタイプを作成・組み立てるなど、約3か月の制作期間をかけられたクリスマスアイテムの数々が、イギリスから日本のスタジオツアー東京へと運ばれた。
ピエールは「日本でこのイベントを開催できて、最高の気分です。ここに来ると毎回、以前携わった作品に戻って来られるような気分になれますね」とイベントの日本上陸を喜び、ロージーも「すべてがあるべき姿で再現できたことが嬉しいです。楽しそうに入ってくる皆さんの反応を見て、本当によかったと思っています」と笑顔を見せた。
「日本が大好きで8〜9回は来ています」と語るロージーが初めて『ハリー・ポッター』シリーズとかかわったのは、4作目である『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』。劇中のクリスマス・ダンス・パーティー「ユールボール(Yule Ball)」のシーンで、ロージーはセットに使用する食べ物を担当したそうだ。
映画『ハリー・ポッター』シリーズが終了した翌年(2012年)から「スタジオツアー ロンドン」の美術に携わるようになったロージーは、「映画では1シーンで終わりだったりするけど、スタジオツアーでは“ホグワーツにおけるクリスマス”というコンセプト全体を来場者に見せることができます。ハムから甘そうなプディングまで、倉庫に眠っていた小道具たちを引っ張り出してまた皆さんにお披露目できて嬉しいです」と、小道具やセットをじっくり楽しめるスタジオツアー(ロンドン/東京)ならではの魅力を説明してくれた。
劇中のクリスマスシーンの再現
クリスマスリースがセットされた大きな扉が開くと、目の前に広がる「大広間」。すぐにクリスマス仕様の空間に目を奪われる。何度かスタジオツアーを訪れているファンも、改めて感動させられること間違いなしの光景だ。
左右には高さ5mのクリスマスツリーが4本ずつ並び、正面では6mの大きなツリーが来場者を迎える。ツリーには手作業で作られた1000個以上のオーナメントがデコレーションされ、金色の星が輝くツリーの最上部には、箒に乗った魔女がくるくると回っている。
ピエールはオーナメントの“ヤマウズラ”について「作り方や材料は多少違うものの、完璧に忠実なものを再現しました。オリジナルのものをデジタルスキャンし、それをリメイクしたんです。以前はプラスチックで作っていたけど、今回は堅牢性を考えてレジンで作っています」とのこだわりを明かしている。「それぞれのヤマウズラは羽のカラーが異なり、4つの寮を示しているのがわかるはずです」との説明どおり、各寮のオーナメントによってカラーリングも異なっている。
3つのクリスマスリースも作られ、大広間の暖炉を飾った最大のリースは直径2.4m、重さ69kgだという。(残りの2つは大広間の巨大な扉にセットされ、来場者を出迎えた)
ダイニングテーブルはご馳走だらけ
さらにダイニングテーブルには七面鳥やチェリーがちりばめられたハム、山盛りのグリーンピース、クリスマスプディング(※)といったクリスマスのご馳走が並び、その合間を縫うように小さなギフトボックスや4つの寮(グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリン)ごとに色分けされたクリスマスクラッカーも置かれた。
中でもピエールが特に来場者に注目してほしいのは、ケーキの上のスノーマンたちだという。2体ずつ置かれたスノーマンたちはそれぞれ異なるポーズを取るようこだわられたため、ぜひそれぞれを比べて楽しんでほしいそうだ。
セット・デコレーターの役割について「すべてがどうあるべきかを決める役割です。どんな大きさのどんな食べ物がどこに置かれるかというところから、壁の装飾にいたるまですべてです。すべての個数などを考えて計算し、映画で作り込まれたものを、一定の水準を保って忠実に再現しなければならないのです」と説明したロージーが来場者に注目してほしいのは、“七面鳥の焼き加減”だそう。
「ピエールのチームには、七面鳥を美味しそうに焼き込んだ色、オーブンに入っていたのを取り出したような色にしてほしいとお願いしました」と彼女が説明するとおり、七面鳥は非常に“美味しそう”な仕上がりだ。
さらに「グリーンピースがひとつの大きな塊ではなく、ひとつひとつのグリーンピースが集まっているのだとわかるようにするのに苦労しました」とのこだわりも語ったピエールは、「日本には食品サンプルを作る文化もあるので、同じくらいのレベルで作らねばと改善を重ねました」と、ハイクオリティな食品サンプルに見慣れた日本人に対しても説得力のある装飾を目指してくれたようだ。
※英国の伝統的なクリスマスのデザート。ドライフルーツやナッツ、香辛料、ラム酒やブランデーなど、家庭ごとにレシピが異なるとされる。
「全体も詳細も楽しんで」
ピエールは「まずここに足を踏み入れた瞬間、楽しい気分になっていただけると思います!その後、それぞれの装飾に近づいて、肉眼でディテールを観察してみてください。またさらに楽しんでもらえるはずです」と全体の世界観・手の込んだ装飾の詳細の両方を来場者に楽しんでほしいことを強調。
ロージーも「小道具に近づいてしっかり見ていただくと、ひとつひとつに少しずつ違いがあることがわかると思います。それぞれが異なる形や質感を持っていて独自性があるので、装飾ひとつひとつが独自のキャラクターのように見えてくるはずですよ」と手がけた小道具たちへのこだわりを示した。
ホグワーツ城の模型が“冬仕様”に!
ツアー終盤にある「ホグワーツ城の模型」も、端から端まで雪を被った冬仕様に変身。
「ライトを当てたときに、本物の雪が輝くような質感や、雪の積もり方まで細部にこだわって再現しました」との説明どおり、ディテールにこだわられた雪の積もり方が特徴だ。
もちろん、丁寧に細部まで振りかけられた雪を、イベントが終わってから取り除くのも一苦労。「吸引機のようなもので元のセットに注意しながら雪だけ取り除く予定」だそうだ。
雪だるまを探そう – アクティビティ・パスポート
ちなみにこのイベントでは、「アクティビティ・パスポート」というおしゃれな冊子が配布されており、そこにはイラストやクイズのほか、「雪だるまを探そう!」という企画が掲載されている。
スタジオツアーの各所に合計6匹の雪だるまが隠れているそうで、ホグワーツの模型にもとても小さな雪だるまがいることが確認できた。この拡大写真がどこにあたるのかは、ぜひご自身の目で確かめていただきたい。
フードやグッズも限定品だらけ
さらに、ショップで購入できるオフィシャルグッズや、カフェでの飲食メニューにもクリスマスは到来。
オーナメントやデザートで彩られた「クリスマスアフタヌーンティー」や雪のように真っ白な「スノーミルクシェイク」、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』に登場したケーキをイメージした「隠れ穴のクリスマスケーキ」、蛙チョコレートや百味ビーンズをイメージした「ハニーデュークスアソートボックス」など、キュートでカラフルなメニューがこの冬を彩ってくれる。
注目していただきたいのはクリスマスツリーの形をした「クリスマスサプライズコーン」。こちらはコーンの中からさらに大量のお菓子が出てくるという楽しいメニューだ。
取材では「スモアデザートピザ」を試食。モチモチと噛みごたえのある生地に、とろけたマシュマロやスイートなクリームが盛り付けられた上にバナナとアーモンドもまぶされるという、甘い材料がふんだんに盛り付けられた幸福感の高まるスイーツメニューだった。
ショップでもヘドウィグがデザインされたクリスマス セーターや、蛙チョコレートなどハニーデュークス関連のアイテムが描かれたマグカップなど、クリスマスにぴったりのグッズが並んでおり、グッズを眺めているだけでも楽しいクリスマス気分になれた。
制作者全員のこだわりが込められたイベント
制作最終日、現場を見守るロージー・グッドウィンは、「現地(日本)のクルーの仕事ぶりをリスペクトしています。フィルムメーカーである我々と同じように、彼らからも作業をひとつひとつ丁寧にこなすこだわりと、情熱を感じるので、非常に感銘を受けます」とも語っていた。
このイベントの細部から、『ハリー・ポッター』製作陣のこだわりと情熱、その魅力を忠実に再現したピエールやロージーのこだわりと情熱、そしてそれに応えた日英のスタッフのこだわりと情熱が、確実に伝わってくるはずだ。
「スタジオツアー東京」の期間限定イベント「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」は2024年11月9日(土)から2025年1月5日(日)まで開催。現地でしか味わえない魅力だらけのこのイベントを、ぜひ機会を逃さず楽しんでいただきたい。
「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」開催情報
実施期間:2024年11月9日(土)~2025年1月5日(日)
実施内容:「大広間」、「ホグワーツ城の模型」の特別装飾その他、クリスマス・ライトアップ(屋外エクステリア、館内ロビーなど)
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。