マザー・マザー初の日本公演のライブレポートが到着!
カナダのロックバンド マザー・マザー(Mother Mother)が初めての来日を実現させ、渋谷のWWW Xにて初の日本公演を行った。今回は本公演の様子をライブレポートでお届けする。(取材・文:ヨダセア)
マザー・マザー 2024年11月27日 公演ライブレポート
最初から畳みかけるマザー・マザー
重厚なサウンドとともに登場したマザー・マザー。彼らがまず披露するのは、最新アルバムでも1曲目である「Nobody Escapes」。続く「Arms Tonite」ではさっそく観客との合唱になったり、ジャスミンがソロでしっとり歌い上げて歓声を浴びたりと早くも盛り上がっていく。
来日インタビューでモリー、ジャスミン、マイクの3人がお気に入りの楽曲に挙げた「Hayloft II」は始まった瞬間に会場から歓声が。トリプルボーカルという編成も活かした大量の音が飛び込んでくるこの曲では、アリのドラムソロにも歓声が上がった。
3曲終えて会場に向かって“指ハート”を見せたライアンは、「(日本語で)こんにちは、みなさん!」という挨拶でファンを盛り上げると、最新アルバムの「The Matrix」へと移った。歪んだサウンドのベースで和音(コード)を弾いたり、後半はベースではなくキーボードの低音で楽曲を彩ったりとマイクの多彩ぶりも映える。
「東京は一番お気に入りの街」
ライアンが東京を「すばらしい街」と褒め、日本のファンと音楽をシェアできることを喜ぶと、「ここに集まった皆それぞれが自由に、しっかり楽しんでいってね!」と呼びかける。音が重なっていき始まった「Problems」では、サビを会場中が熱唱、一体感が生まれた。
「アーリガトーーウ…」と低い声でゆっくり発したライアンは、「この街がすばらしい皆さんと僕らを繋げてくれた。長いキャリアを振り返っても、東京は一番のお気に入りの街だ!僕たちを迎え入れてくれてありがとう」と笑顔。嬉しい言葉に会場からは全力の歓声が上がった。
勢いそのままに「爆発しそうだ!爆発してもいいかな?」と呼びかけたライアン。もちろん最新アルバムのMV曲「Explode!」(=爆発!)の披露だ。さらに「まだまだいくぞ!」と「Back to Life」へ移行。スリリングなパートとしっとり聞かせるパートの緩急が特徴的なこの楽曲では、ライアンとマイクが戦うように向き合ってギターとベースをかき鳴らし合った。
カバー楽曲で幅を見せつける
続いてジャスミンをメインボーカルに据えて披露したのは、ラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)のカバーとなる「Video Games」。観客はジャスミンの声にぴったりのカバーに聞き入る。
「クレイジーな夜だね」と満足気ながら、さらなる盛り上がりを求めるライアンは「自然そのまま感覚を思い出そうよ。動物の本能そのままの動物の姿になろうよ」と語りかけ、「Bit By Bit」、さらに「Body」まで勢いよく駆け抜けた。「Body」ではライアンが客席に大きく乗り出す場面も。まさに全身で表現を行う姿を見せてくれた。
優しい言葉と、姉弟の絆
「(日本語で)ありがとう、みんな最高!」と再び会場を喜ばせたライアン。
「一緒に歌ってくれてありがとう。それぞれ外見も人生も違う僕たちだけど、僕らの歌が君たちの真実の姿に、君たちの人生に力を与えられていたら嬉しいな。君だけの物語を描き、ありのままの君でいてね」と語った。
「姉妹と一緒に来ている人?」と呼びかけ、手を挙げたファンに「いいね」と笑ったライアンは、自身の姉であるモリーを指して「モリーのような姉がいて幸せだよ」と愛情たっぷりに語り、「彼女の美しい声のために書いた曲」として「Sleep Awake」を披露した。優しい歌声で会場を癒しながら、神々しい光に照らされるモリー。最後はファンの歓声が彼女を包み込んだ。
ファンとたっぷりおしゃべり
「忙しい人生のなかで、僕らに時間を使ってくれてありがとう」と再び感謝を述べたライアンは、挙手制で観客がどこから来ているのかを確認。東京はもちろん東京以外からも、中にはイギリスやカザフスタン、そしてマザー・マザーの母国であるカナダ(バンクーバー)から来ているファンもいて、メンバーはファンの熱意に嬉しそうな顔を見せた。
さらに「何か聞きたいことや言いたいことは?」とファンに自由な発言を促したライアン。「東京は今回が初めて?」との質問には「うん、初めて。そしてこれが最後にはしないよ」と粋な回答で盛り上げ、「14歳の誕生日で来ている」というファンには「モリー、14歳の時期どうだった?あんまりよくない?そうか…君は最高の誕生日だね!素敵な日に僕らのところに来てくれてありがとう、おめでとう!」と祝福。
ファンと親身に接する姿勢をしっかり見せてくれた彼らは、「アコースティック・メドレー」として、心地の良いサウンドで「Dirty Town」「Neighbour」「Wisdom」「Ghosting」「It’s Alright」を立て続けに披露した。
活動20年目の言葉の重み
「君たちは最高の観客だよ。しっとり聴いてほしい曲は静かに聞き入ってくれるけど、盛り上がる曲では激しく騒いでくれる。ベストな観客だ」とメリハリのある日本のファンに感動した様子を見せたライアンは、裏方のスタッフにも丁寧に感謝の意を示し、「Oh Ana」を披露した。インタビューの際にマイクがお気に入りだと言っていた、“最初から盛り上がるギターフレーズ”も健在だ。
これまでの活動期間を振り返るライアンは「僕らがバンドを始めたのは2005年、14歳の君が生まれる前だよ」と“客いじり”も忘れずに挟みながら、「こんな機会が来ると想像してなかったよ。今何かやりたいことのためにがんばっている皆、時間がかかってもやり続けるんだ。忍耐と信じる心が大切だよ。いつか何かが起こる。みんなの旅路に幸あれ!次は君たちへ曲だよ」と、キャリア20年目ながらの説得力が沁みるMCに続いて「Wrecking Ball」を披露した。
そこからノンストップで「Verbatim」「Hayloft」というマザー・マザーらしい世界観MAXの2曲を投下すると、ライブ本編は終了となった。
リクエスト祭りのアンコール
本編が終わってすぐに始まったアンコールの呼び声に応え、ライアン、モリー、ジャスミンが登場。ライアンは“W指ハート”で歓声を浴びると、観客にアンコール楽曲のリクエストを募った。
2012年の「Infinitesimal」と「Business Man」(うろ覚えながら完走し「悪くなかったでしょ?」と笑顔)、そして最新アルバムから「End of Me」(アルバム収録前のアレンジを特別に披露)というファンのリクエストを叶え、喝采を浴びた。
ライアンは最後にまたファンに何度も感謝を伝え、リクエストの叫びも多く上がっていた人気曲「Burning Pile」を披露。大合唱の中にマザー・マザー初の日本公演は幕を下ろした。
最後は挨拶の後にライアンがステージを降り、前列のファンに端から端までハグして回るなど、文字通り退場直前までファンサービス満点のステージとなった。
電子音も使いこなすリズム隊のマイク&アリ、そしてそれぞれがリードで歌うことができるトリプルボーカルという盤石な体制と、なんでも取り込んで自分たちの色で昇華してしまう自由な音楽スタイル。そして丁寧で愛情たっぷりのファンサービス。そんなマザー・マザーの魅力がふんだんに味わえる一夜であった。
(ライブレポート以上/取材・文:ヨダセア)
フォトギャラリー
セットリスト (Mother Mother 2024年11月27日(水)@渋谷 WWW X)
0. Intro
1. Nobody Escapes
2. Arms Tonite
3. Hayloft II
4. The Matrix
5. Problems
6. Explode!
7. Back to Life
8. Video Games (Lana Del Rey cover)
9. Bit By Bit
10. Body
11. Sleep Awake
12. ACOUSTIC MEDLEY(Dirty Town/Neighbour/Wisdom/Ghosting/It’s Alright)
13. Oh Ana
14. Wrecking Ball
15. Verbatim
16. Hayloft
<Encore>
17. Request Songs(Infinitesimal/Business Man/End of Me)
18. Burning Pile
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。