第96回アカデミー賞国際長編映画賞デンマーク代表作品『愛を耕すひと』から、主人公の心情の変化を捉えた新場面写真が公開され、マッツ・ミケルセンの繊細な演技に注目が集まっている。
荒野に芽吹く愛の物語
マッツ・ミケルセンが母国の英雄を演じる『愛を耕すひと』が、2025年2月14日(金)より全国公開される。本作は、第62回ベルリン国際映画祭で2つの銀熊賞に輝いた『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12年)以来となる、ニコライ・アーセル監督とミケルセンのタッグ作品である。
気鋭のクリエイターが紡ぐ歴史絵巻
物語の原点は、イダ・ジェッセンによる史実に基づく歴史小説「The Captain and Ann Barbara(英題)」にある。発売前の原稿に感銘を受けたアーセル監督がミケルセンに声をかけ、さらに『悪党に粛清を』(14年)、『ライダーズ・オブ・ジャスティス』(20年)などのミケルセン作品で知られるアナス・トマス・イェンセンが脚本として加わることで、壮大な叙事詩として結実。その評価は高く、第80回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門への出品を果たしている。
演技哲学が導く、新たな境地
『007/カジノ・ロワイヤル』や「ハンニバル」シリーズで狂気とエレガンスを併せ持つヴィラン役を演じ、現在公開中の『ライオン・キング:ムファサ』でも冷酷な敵役キロスを演じるミケルセン。しかし本作では、異なる魅力を引き出している。
ミケルセンは役作りについて、「『タクシードライバー』は僕が人生で最も愛する映画のひとつです。好感が持てなかった主人公に共感したり、また嫌だと感じたり…その複雑さにこそリアルな人間性があると感じました」と語る。本作の主人公ケーレン大尉も、称号に執着しながら貴族を嫌うという矛盾した感情を持つ人物として描かれる。
「演じる役と自分の共通点を探すようにしています。ケーレンとの共通点は、友人たちも指摘するような頑固さですね」とミケルセンは役との距離感を語る。今回解禁された場面写真からは、荒野を覆う冷たい氷が溶けていくような、ケーレン大尉の心情の変化が繊細に表現されている。
『愛を耕すひと』は2025年2月14日(金)より全国公開。
作品情報
<STORY>
舞台は18世紀デンマーク。退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉は、貴族の称号を懸け、ひとり荒野の開拓に名乗りを上げる。しかし、それを知った有力者フレデリック・デ・シンケルが、ありとあらゆる手段でケーレンを追い払おうと躍起になる。襲い掛かる自然の脅威とデ・シンケルからの非道な仕打ちに抗いながら、彼のもとから逃げ出した使用人の女性アン・バーバラや家族に見捨てられた少女アンマイ・ムスとの出会いにより、ケーレンの頑なに閉ざした心に変化が芽生えてゆく…。
タイトル:『愛を耕すひと』
原題:Bastarden
監督:ニコライ・アーセル
脚本:アナス・トマス・イェンセン、ニコライ・アーセル
原作:イダ・ジェッセン「The Captain and Ann Barbara(英題)」
出演:マッツ・ミケルセン、アマンダ・コリン、シモン・ベンネビヤーグ
2023年|デンマーク、スウェーデン、ドイツ|127分|G|字幕翻訳:吉川美奈子
© 2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB
配給:スターキャット、ハピネットファントム・スタジオ
後援:デンマーク王国大使館
フリーライター(tvgroove編集者兼ライター)。2019年に早稲田大学法学部を卒業。都庁職員として国際業務等を経験後、ライター業に転身。各種SNS(Instagram・X)においても映画に関する発信を行いながら、YouTubeチャンネル「見て聞く映画マガジンアルテミシネマ」にて映画情報・考察・レビュー動画などを配信したり、映画関連イベントの企画・運営も行っている。