独自のAI技術を駆使し、ハリウッドの大手スタジオの品質に匹敵する映画を、わずか50万ドル(約7500万円)以下で制作することを目標とする新映画スタジオが設立された。
The Hollywood Reporterが伝えたところによると、映画『ダイバージェント』シリーズのプロデューサーであるプーヤ・シャーバジアンが、新たにAIを活用した映画、テレビ、ゲーム制作スタジオ「Staircase Studios AI」を設立した。
同スタジオは独自のAIワークフロー「ForwardMotion」を駆使し、スタジオ品質に匹敵する映画をわずか50万ドル(約7500万円)以下で制作することを目標としているという。
ハリウッドのメジャー映画は通常、制作費が1億~3億ドル(約150億~450億円)かかる。中規模映画でも3000万~1億ドル(約45億~150億円)が一般的だ。これに対し、Staircase Studios AIがもし本当に50万ドル以下で映画を制作できるのであれば、圧倒的なコストダウンとなる。
同スタジオは、今後3~4年の間に約30本の低予算映画を制作する計画を発表。最初の作品として、AI主導の映画『The Woman With Red Hair』の5分間のティーザー映像を公開した。本作は、2016年のブラックリスト(内容は優れているが未映画化の脚本リスト)に選ばれたマイケル・シャッツの脚本を基にしており、ブレット・スチュアートが監督を務めている。
Staircase Studios AIが制作した映画『The Woman With Red Hair』の冒頭5分の映像、前半に制作プロセスについての説明あり
この映画は、第二次世界大戦中のオランダで実在した戦争反対者を描いたドラマである。制作にはピクサーの元幹部で『Mr.インクレディブル』のキャラクターデザインを手掛けたテディ・ニュートンが参加。また、エミー賞受賞歴のあるアニメーター、アルフレッド・ギメノ(『カンフー・パンダ』)が美術とデザインを担当している。
Staircase Studios AIには、ハフィントン・ポストの共同創設者であり、現在はベンチャーキャピタル「Lerer Hippeau」のマネージングディレクター名誉職を務めるケネス・レラーが主要投資家として参加。シャーバジアン自身はCEOに就任し、AI映画制作の責任者にはブレット・スチュアートが就いた。
「非効率なハリウッドシステムを変える」
シャーバジアンは声明の中で、「過去15年間で150本のプロジェクトをハリウッドのスタジオシステムに売り込んできたが、その間に多くの非効率性を目の当たりにした。これ以上、従来のやり方を続けるわけにはいかない」と語る。そして「この1年間、倫理的なAIの活用と、映画化されていない素晴らしい脚本や監督たちの才能を組み合わせることに尽力してきた」と述べた。
Staircase Studios AIはすでに次回作『Every Living Creature』の制作に着手している。本作はアニメーションの冒険スリラーであり、バーニー・スー(『Artificial』)が監督を務め、J.R.アレラーノ(『Flicka 2』)の脚本をもとに制作される。
同スタジオの挑戦は、映画業界におけるAIの可能性を示すとともに、低予算でも高度な創造性と豊かな表現を追求できる新たな時代の幕開けを告げるものとなるかもしれない。

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