クリント・イーストウッド監督の10年振りの主演作『運び屋』より、2019年元旦を迎えた日本のファンに向けて、クリント・イーストウッドからスペシャル・メッセージが到着した。
月に100キロ以上の麻薬を運び、“伝説”の運び屋と呼ばれた男アール・ストーンを演じる。家族とも不仲で孤独な老人が、自宅を差し押さえられた時、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられる。だが、その仕事とは麻薬カルテルの「運び屋」だった…。
イーストウッドは、アメリカ犯罪史上最高齢、前代未聞の運び屋に扮し、映画人生を謳歌するかのような名演を披露、俳優として集大成となる傑作を生み出した。全米では、12月14日に公開され、現在も大ヒットを続けている。
映画化の出発点は、「脚本が先だった。『グラン・トリノ』の脚本家ニック・シェンクから送られてきた脚本を読んで、面白いと思った。物語の中のエピソードを、広げることもできる」と感じたイーストウッドは、2014年6月に“ニューヨーク・タイムズ”に掲載された「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」という記事の映画化権を取得し、その記事からアイデアをもらい、脚本を作り上げていった。
【動画】映画『運び屋』特報
イーストウッドを惹きつけたのは“前代未聞の実話”だ。「一度だけ法を犯した時に、成功してしまったらどうなるのか。彼は高齢の男性だから、車を運転しても疑われない。停車して人助けをしたり、お金を与えたりする、どこか慈善家でもある。でも続けていくと、多額の金が舞い込むようになる。最初は彼自身も何をやっているかあまり理解していない」と、犯罪意識すらなくブツの運び屋を続けた男を語る。
イーストウッド自身、88歳になった今も車を運転する。アールのモデルとなったレオ・シャープは、逮捕時は87歳、その後90歳で亡くなっている。映画化に際して本人と会えなかったが、「この映画のような彼を想像できた。彼が実際にそうしたのか、その時間があったのかはわからない。彼はひとりで運転して旅するのが好きだった。私も一人旅が好きだから、そこが共通点だ」と微笑む。
麻薬を運ぶことで多額の報酬を手にするアールだが、孫の結婚パーティや退役軍人クラブを助けるなど、人のために金を使った。犯罪行為は「年配も含め誰もが真似すべきじゃないが、ただ物語は面白い。高齢の恩恵か、誰もが彼を信じてしまう。彼は年寄りで、目立たないし、トラックを運転しているだけだから、誰も気に留めない。それがブツの運び屋として他人に勝る利点だった。彼はいずれにしても車で旅に出るつもりだったから、大金を稼げれば一石二鳥だった」
映画監督、そして俳優としての想像力を信じるイーストウッドにとってレオ・シャープの行動を 「リサーチする必要はまったくなかった。想像力で作り上げた。多くの映画は想像力で作られる。架空の人物を考えるのと同じことだ。年配の男がトラックを運転してアメリカを縦断する。麻薬を運ぶ以外は、何を作りたいか、想像力にかかっていた。映画を監督するたび、演技をするたびに、何かを学ぶものだ。ストーリーを語り、それを演じ、冒険をし、問題を解決することによって…。そういうことすべてを通して、自分自身について何かの感覚、あるいは感情を抱き、実際の人生で自分がどうするかを考える。だからこそ、この仕事はとても魅力的なんだ」と『運び屋』には、時間という誰にも共通するテーマがある。人は、永遠には走れない。
「アールは、自分の家族を幸せにできていないことを知っていて、もう一生、許してもらえないかもしれないと気づいている。それは猛烈な一撃だ。私たちはいつも、まだ時間があると考える。だが、ないのかもしれない。あるのかもしれない。アールにさえ、あるのかもしれない」と結んでいる。
公開情報
『運び屋』
2019年3月8日(金)全国ロードショー
©2018 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
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