ホラー作家の“頂点”スティーヴン・キングの傑作小説が原作で、全世界で社会現象を巻き起こした『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』。あの恐怖から約2年、『IT/イット』が遂に完結する。『IT/イットTHE END “それ”が見えたら、終わり。』の11月1日(金)公開に先駆け、監督を務めたアンディ・ムスキエティとプロデューサーのバルバラ・ムスキエティが来日。20年間、映画やドラマでさまざまなコラボレーションをしてきた姉弟にインタビューし、ITの恐怖をどう作り上げたかなど話を伺ってきた。
――本作は、とてつもない恐怖はもちろん、笑えるシーンや感動出来るシーンなど、アドベンチャー大作のようでした。新しい分野を開拓しようとしたのでしょうか。
アンディ・ムスキエティ監督(以下、アンディ):そうだね、本作はハイブリッドに仕上がっているよ。最近のホラーを考え直さなくてはいけないなって思ったんだ。ホラーって「呪われた家」とか「ゾンビ」とか、一つの固まったアイデアみたい。だから本作は、ホラーでありつつもドラマであることを意識した。アドベンチャーも入っているし、ユーモアだってある。僕は80年代の映画を観て育ったから、あのときの感覚に戻った気がしたし、そこからインスピレーションも受けていると思う。
バルバラ・ムスキエティプロデューサー(以下、バルバラ):スティーブン・キングの小説の内容もちゃんと忠実に再現しているから、そういう意味でもハイブリッドであるかもしれないわ。
アンディ:映画ではアドベンチャー部分が強くなっているかもしれない。ちょっとアクション的要素も入れ込んだ。小説の場合はペースがゆっくりだし、それに、原作にはマイクが日記を見せるストーリーや、調査するシーン、フラッシュバックのシーンなどいろいろなストーリーがメインのストーリーを遮断していく。映画化するときには、観客に映画体験をしてもらいたいって思ったんだ。だからリアルタイムで表現するように作り上げていった。物事が鎖でつながっているような、継続的に続くようなカタチにね。映画はストーリーをなるべくわかりやすくして、物事がだんだんエスカレートしてくように心がけた。
――ペニーワイズはもちろんのこと、“イット”が登場するたび、心臓が飛び出そうになったのですが、“イット”が登場シーンで一番工夫したシーンはありますか。
アンディ:“イット”が登場するたびに、実はその裏に、ものすごくいろんな作業が隠れているんだ。ストーリー的にも、ビジュアル的にも、毎回“イット”が怖くなるように工夫をしている。演技だけじゃなくて、照明も立ち位置も、いろんな要素が加わってね。ものすごく正確に物事を決めていくんだ。ペニーワイズを演じたピル(・スカルスガルド)の顔は何度も撮っているから、どの角度でどんな画が撮れるか把握していた。
例えば、ペニーワイズがビクトリアと話をしているシーンは、ペニーワイズの眼球の下あたりに照明が当たるようにした。もう一度映画を観てもらうとわかると思うんだけど、薄気味悪さが目から出ているんだ。撮影時はビルの立ち位置も、顔の角度も重要だった。もしビルが少しでもアゴを上げてしまったら、照明がずれてしまう。演技をするビルのポジションと照明の位置はかなり重要だったね。ビルは自分の顔が見えないから、撮影時はずっと「アゴ下げて」「アゴ下げて」って何度も言ったよ(笑)。
あのシーンは光がホタルから来てると思うんだけど、ペニーワイズの髪型が見えるように後ろからも照明を当ててるんだ。このようなこだわりが、どのシーンでにもある。正面から普通にペニーワイズを見たって怖くないんだ。ビルのイケメンさがバレてしまうくらいにね(笑)。
――怖いシーンのアイデアはいつ、どのようにして生まれるのでしょうか。
アンディ:別に何か決まった方式みたいなのがあるワケではなくて、例えば “イット”のカタチはいくつかあると思うけど、一作目のフルートを吹いてる女の人は、モディリアーニの絵画から来てる。あれは僕が個人的に恐怖を感じていた絵なんだ。エディを怖がらせる“イット”は原作にあったし、いろんなところから生まれている。
自分自身を見つめて、一体何が一番怖いかを考えて探すこともする。本作のフォーチュンクッキーのシーンで登場する赤ん坊の顔をした虫のように、自分が怖いと感じるものを生み出したんだ。ときにはスケッチをして、周りの人に見せてどんなものを作るか決めていった。
アンディ監督のスケッチ
https://www.instagram.com/p/BbpoZh8lQud/
――予告動画でも印象的だったあのおばあさんも、かなり怖かったです。
【おばあさんのシーン】
アンディ:あのキャラクターは、可愛らしいおばあさんという面と、一方で変なことをする気味の悪い面のバランスをうまく出したかったんだ。そうすると緊張感が増すからね。その緊張感が最高潮になったとき、モンスターになる。このキャラクターは、自分がスケッチしたのが基になってるんだ。ハビエル・ボテットに演じてもらいたかったんだけどね。他のアーティストにスケッチを見せて、彼らが完成させたんだ。
前編に出演したハビエル・ボテットさん
アンディ監督の『MAMA』にも出演していた(一番がハビエルさん)
――本作は子どもがトラウマを乗り越えていくストーリーも含まれています。現代の子どもたちにトラウマを乗り越えるヒントを与えるとしたら、どんなものですか。
アンディ:ニュースを見ないことだね(笑)。
バルバラ:子どもが覚えなくてはいけない一番大切なことは、「自分は決して一人ではない」ということね。だれしも人類っていう名のコミュニティーの一員なの。みんなが一緒になって戦えば、怖いものなんてないってことを覚えておいてほしい。私たちの今いる現代のプレッシャーやテクノロジーは、人を孤立させやすいしね。
アンディ:そうだね。不安になりやすいと思う。一作目でルーザーズ・クラブはイジメにあっていたけど、80年代は事実を声に出さなかったんだ。自分がイジメられていることは、親にさえ言うべきではなかった。それは非常に問題だしトラウマ的だ。現代は、もうちょっとイジメについて考える人もいて、監視することもできるけど、一方で、ネット上のイジメが生まれている。そういうのも新しく生まれた不安だ。僕はアドバイスできる立場ではないけど、親は子供となるべくコミュニケーションを保って、友人にも相談することが大切。
バルバラ:いつも誰かがいる。同じような経験している人だっている。一緒にいればどんなピエロも殺せるはずよ。
アンディ:モンスターもね。
(インタビュー終わり)
『 I T/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』
11月1日(金)全国ロードショー
公式サイト:http://itthemovie.jp
公式Twitter:https://twitter.com/IT_OWARI ハッシュタグ:#イット見えたら終わり
©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
監督:アンディ・ムスキエティ 原作:スティーヴン・キング 脚本:ゲイリー・ドーベルマン
出演:ビル・スカルスガルド、ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャスティン、ビル・ヘイダー、イザイア・ムスタファ、
ジェイ・ライアン、ジェームズ・ランソン、アンディ・ビーンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画