「大統領選に出馬する」と発表し世界に衝撃を与えたラッパーのカニエ・ウェスト。彼の選挙活動が本格的に始まり、彼にとって初となる選挙演説が行われた。
選挙スピーチをしたカニエ・ウェスト
カニエ・ウェストは今年11月に行われる米大統領選挙に出馬。選挙活動ツアーを、サウスカロライナ州のチャールストンから開始した。
カニエはステージに防弾ベストを着て登場。髪には「2020」の形に剃られていた。騒々しい観客が数百人集まった中、マイク無しで演説を開始した。
彼はアディダスとの取引き、神への信仰心、アメリカにおける人種差別などについて繰り返し言及。奴隷解放運動家であったハリエット・タブマン(1913年没)に関し「ハリエット・タブマンは決して奴隷を解放なんてしていない。彼女は奴隷を奴隷のまま、他の白人と仕事に行かせるようにしただけだ」と、19世紀のアメリカ史で最も重要な人物の一人であるタブマンの活動を批判した。
この演説で緊張感が最も高まったのは、カニエが自身と妻キム・カーダシアンの間にできた第一子のノース・ウェストを「中絶しようと熟考した」と告白した時だ。
キムの妊娠が分かり、中絶も考えていたというカニエは「俺はラッパー的人生を送っていた。ノートPCでクリエイティブ作業をしていたんだけど、急にPCの画面が白と黒になり、神が画面に現れた。神は『お前が私のビジョンを邪魔するなら、私はお前のビジョンを台無しにしてやる』って言ったんだ」と、神からのメッセージを受け取ったという。
「だから妻に電話をしたら、彼女が『この赤ちゃんを産む。私は産む』って言ったんだ。俺が望んでいなかったにもかかわらず、彼女はノース(第一子)をこの世に誕生させた。彼女は命のために立ち上がり、子供の命を守った」
こう話したカニエはその場で泣き出し、「自分の父も、母が俺を妊娠している時に中絶を望んだ」「母が俺の命を救ってくれた」と涙ながらに語った。
さらに感情的になったカニエは「俺は娘を殺しかけた!娘を殺しかけたんだ!」と叫ぶ場面も見られた。
カニエは中絶については反対だが「いつも合法であるべきだと考えている。でも別のオプションとして、可能な限りの対処法もあるべきだと思っている。それは、出産をしたら全員が100万ドル(約1億1千万円)を受け取れるというものだ」と、独自の考えを語った。この約1億円という資金はどこから出るのかなど詳細は話していない。
カニエの演説や行動は感情的であると捉える人も多く、彼のメンタルヘルスを心配する声も出ている。またメディアの中には「カオスな演説」などと表現する媒体もある。今後彼の選挙活動はどうなっていくのだろうか。